ポルトリブレの山崎康譽展-Marks-を見る


 東京新宿のフリーアートスペース・ポルトリブレで山崎康譽展-Marks-が開かれている(12月15日まで)。山崎は1952年東京生まれ、1978年に東京学芸大学大学院を修了している。その後バングラデシュ国立芸術大学へ留学してリトグラフを学んだ。1979年にバングラデシュダッカで初個展、日本では同じ年に画廊春秋で初個展を行っている。以来、ギャラリー千代田やギャラリー白百合で個展を開いているが、1993年からギャラリー汲美で個展を続けて11回に及んでいる。汲美が閉廊したのちは、ポルトリブレや由芽で個展を重ねている。なお、名前の康譽は「やすたか」と読む。
 山崎の作品は好きで、近ごろは毎回画廊へ足を運んで見ている。とくに最近の仕事は以前に比べて伸び伸びしている感じがあって好ましく思っていた。ところが今回会場のポルトリブレへ入ったとき、何か違和感が感じられた。いつもの好感が湧いてこない。どうしたのだろう。
 画家に勧められてファイルを見た。額装されていない作品がファイルされている。そこに良い作品が何点もあった。あらためて壁に展示されている額装された作品を見直した。じっくり作品を見るととても良いのだ。今年の三鷹市のギャラリー由芽での個展を紹介したとき次のように書いた。

 タイトルのMarks、マークは作品の中に描かれている記号を表している。一見欧文の文字のように見えるものも記号であって、意味の読み取れる文字ではない。文字は画家のサインだけだ。記号とは言いながら、実際に意味のとれるものはない。正確には記号に似た形なのだ。それは田舎ではなく都市としての街を象徴的に描いているように見える。あるいは近代ではない現代社会を視覚的に抽象したものだろうか。山崎の作品は、現代という現実の社会、その形、構造、現象を、観念ではなく具体的な図像にしているのかもしれない。少なくとも純粋な造形のための造形ではなく、現実の世界から汲み取られたイメージから造形しているのだろう。作品は激しさや声高なものとは無縁で繊細かつ静謐だ。画家その人によく似て落ちついた作品群だ。

 最初見たときの違和感は何だったのだろうかと考えた。ギャラリー由芽の個展と違うのは画廊の空間だ。また由芽のときより作品が小さいのではないか。おそらく額が合わないのではないか。作品が小さければ相対的に額の存在感が大きくなる。展示されている作品点数も多いので、それらが相まって雑音が大きくなっているのではないか。
 じっくり作品を注視すれば、やはり山崎の新作はひとつの達成を示している。次回は数点だけでもよいから、大ぶりの額にゆったり納めてみてほしい。作品の見え方が変わるのではないだろうか。





       ・
山崎康貴展-Marks-
2014年12月5日(金)〜12月15日(月)
12:00〜20:00(最終日18:00まで)10日(水)休廊
       ・
free art space ポルトリブレ
東京都新宿区新宿2-12-9 広洋舎ビル3F
電話03-3341-2992
http://www2.tbb.t-com.ne.jp/portolibre/
地下鉄新宿3丁目駅C-8番出口より徒歩2分