2011-01-01から1年間の記事一覧

エルメスの広告を見て考えた

朝日新聞12月11日の朝刊にエルメスのカラー全面広告が4ページ掲載された。同じ日に読売新聞には2ページ、毎日新聞には何も掲載されなかった。 広告主と広告代理店はシビアなものなのだ。そこに出稿することが本当に有効かどうか計算している。少年週刊誌『…

立川談志の『談志映画噺』は優れた映画のガイドブックだ

先頃亡くなった立川談志の『談志映画噺』(朝日新書)を読む。とても優れた映画のガイドブックだ。談志が映画に対して深い愛情を抱いていたことがよく分かる。多数の映画評論家たちのガイドブックでなく、1人の主観に偏向したガイドブックという試みがここ…

速水健朗『ラーメンと愛国』を読む

速水健朗『ラーメンと愛国』(講談社現代新書)を読む。題名から想像される内容とは違ってすばらしい本だ。あとがきから、 大量生産・大量消費、総力戦体制の戦争、世界大戦後の食糧難、都市化、郊外化、マスメディア時代の到来、情報化社会、こうした20世紀…

銀座ニコンサロンの大沼英樹写真展「千年桜−−それでも咲いていた」

東京銀座7丁目の瓶座ニコンサロンで大沼英樹写真展「千年桜−−それでも咲いていた」を見る。ギャラリーのホームページから、 この作品は、誓いのもとに生まれた2011年の記憶すべき被災地の桜の記録である。 2011年3月11日午後2時46分。国内観測史上最大、マ…

アラン・ドロンへのオマージュ

毎日新聞2011年12月25日の「好きなもの」というコラムの筆者はシンガー・ソング・ライターの畠山美由紀だった。このコラムは各界の有名人が毎回好きなもの3点をあげ、その理由を書いている。畠山の好きなものは、1.脚注、2.遠野、3.アラン・ドロンだ…

世界の国別の性生活の回数

niftyニュース 2011年12月12日配信のものに「韓国人の性生活は週1回、世界で最下位=米製薬社が調査」というのがあった。 米国の製薬会社イーライリリー・アンド・カンパニーの韓国支社が11日、13カ国の34歳以上男女の性生活に関する調査で、韓国人の性生活…

トウキョウワンダーサイト本郷の会田誠展「美術であろうとなかろうと」を見る

東京文京区本郷のトウキョウワンダーサイト本郷で行われている会田誠展「美術であろうとなかろうと」を見る(12月25日まで)。会田誠は1965年新潟県生まれ、1991年東京藝術大学大学院美術研究科を修了している。本展のパンフレットから、 このたび、TWS(ト…

ソニーのブルーレイの広告にもの申す

ソニーのブルーレイの電車内の額面広告。 録画のミスは、家族のモンダイだ。 よりによって ドラマの最終回だけ どうして獲れてないの? 小学生の女の子が涙を浮かべている。録画ミスで好きなテレビドラマの最終回を見逃してしまったのだ。ソニーのブルーレイ…

ギャラリー現の佐々木博輝展「allelopathy III」に驚く

東京銀座1丁目のギャラリー現で佐々木博輝展「allelopathy III」が開かれている(12月24日まで)。これには驚いた。佐々木は1972年福島県生まれ、1994年に東京芸術大学油絵学科を卒業し、1996年に同大学院を修了している。2008年と2009年にプレラギャラリー…

脚本家倉本聡の語るTPP論

朝日新聞12月9日の朝刊に「インタビュー 北の国から TPPを考える」と題する脚本家倉本聡へのインタビューが載っている。見出しが「土から離れた議論 農業を知らない東京目線の思考」となっている。 倉本聡は1935年生まれ。まず記事のリーダーから、 北海道…

スパンアートギャラリーの桑原弘明展「Scope」の不思議

東京銀座のスパンアートギャラリーで桑原弘明展「Scope」が開かれている(12月24日まで)。主な作品は一辺が10cmくらいの四角い箱で、前面にレンズの入った小さな覗き穴がついている。箱の周囲にもレンズが入った穴が数個取り付けられている。周囲の穴の一つ…

南天子画廊のサム・フランシス展を見て考えた

去年9月に川村記念美術館へバーネット・ニューマン展を見に行った。その時常設の部屋の一角に難波田龍起の作品が展示されていた。近づいてみると難波田ではなく、サム・フランシスの1956年の作品だった。難波田とサム・フランシスの影響関係はどうなってい…

ジャクソン・ポロックについて考えたこと

NHK日曜美術館の12月11日の放送はジャクソン・ポロックだった。これは12月18日にも再放送された。ポロック展が生誕100年を記念して、現在愛知県立美術館で開かれており(2012年1月22日まで)、2月10日から5月6日まで東京国立近代美術館で開催される。 日…

荷風の見たヨウシュヤマゴボウの花

石川淳に『敗荷落日』で「おもえば、葛飾土産までの荷風散人だった。戦後はただこの一篇、さすがに風雅なお亡びず、高興もっともよろこぶべし。しかし、それ以後は……何といおう、どうもいけない。」とまで書かれた荷風だった。さて、その「葛飾土産」を開い…

夜明けの月とスカイツリー

数日前の夜明けの月とスカイツリー。立ち待ち月がスカイツリーの向こうを西に沈んでいく。この時間、空はまだ赤みがかった青色だ。

銀座の画廊るたんで永井美名展を見る

東京銀座の画廊るたんで永井美名展が開かれている(12月17日まで)。永井は1982年東京生まれ、2004年に多摩美術大学絵画学科日本画を卒業している。個展は越谷のギャラリー恵風と吉祥寺のギャラリー創に続いて3回目となる。今年豊橋トリエンナーレ星野眞吾…

福寿草の芽生えと旧中川のシラサギ

近所の小さな植物園でもう福寿草が芽生えていた。これならフキノトウと間違えて食べて中毒になるのもよく分かる。福寿草は有毒なのだ。私にこれが福寿草と分かるのは、毎年ここに福寿草が生えてくるからだ。 黄菊も満開だ。 また旧中川ではシラサギが見られ…

ギャラリー坂巻の都丸志帆美展「中心をながめる」はポップアートだ

東京京橋のギャラリー坂巻で都丸志帆美展「中心をながめる」が開かれている(12月17日まで)。都丸は1977年群馬県渋川市生まれ、2007年創形美術学校ファインアート科卒業。都丸はふだんみゆき画廊のスタッフとして勤めていて、画廊で何度も会って話をしてい…

東京国立近代美術館の「ぬぐ絵画」がおもしろい

東京国立近代美術館の「ぬぐ絵画」がおもしろい。副題が「日本のヌード 1880−1945」つまり幕末から終戦までのヌード絵画史だ。NHKの日曜美術館でも取り上げられ、朝日新聞でも11月30日の夕刊で紹介された。 黒田清輝、萬鉄五郎、中村彝、甲斐庄楠音、村山槐…

「表現する葦 吉田哲也・若林砂絵子」展の読売新聞展評

去る12月4日まで多摩美術大学美術館で開かれていた「表現する葦 吉田哲也・若林砂絵子」展の展評が読売新聞2011年11月21日の夕刊に掲載されていた。筆者は「清」とある。 吉田哲也(1964〜2005年)と若林砂絵子(1974〜2008年)。若くして死去した美術家2…

東京オペラシティアートギャラリーの「寺田コレクションの若手作家たち」が興味深い

東京オペラシティアートギャラリーの「寺田コレクションの若手作家たち」が興味深い(12月25日まで)。そのパンフレットから(執筆は同ギャラリー福士理氏) 本展は当館収蔵の寺田コレクションの中からおおむね1960年代半ばに生まれた作家たち、とりわけ2000…

ブリジストン美術館の野見山暁治展の展評

朝日新聞2011年12月7日夕刊に田中三蔵によるブリジストン美術館で開かれている野見山暁治展の展評が掲載された。題して「野見山暁治展 画風変遷の旅と 続く深化」。本展評から、 滋味あふれる長編映画を見るような満足感をもたらす美術展は、意外に少ない。…

中村とうよう氏の自殺について

7月21日に音楽評論家の中村とうよう氏が亡くなった。何かに彼の遺書が雑誌に載っていると書かれていた。それをようやく探し当てて読むことができた。「ミュージック・マガジン」2011年9月号に湯川れい子と原田尊志の追悼文とともに、連載していた「とうよ…

北杜夫の3冊

毎日新聞2011年12月4日の「今週の本棚」の「この人・この3冊」のコーナーで、養老猛が北杜夫の3冊を選んでいる。 1.『どくとるマンボウ航海記』(北杜夫著/中公文庫/新潮文庫) 2.『どくとるマンボウ昆虫記』(北杜夫著/新潮文庫) 3.『どくとる…

街路樹のイルミネーション

クリスマス商戦の時期になり、各地の街路樹にイルミネーションが設置されている。永井荷風『日和下駄』(講談社文芸文庫)を読んでいたら、こんな文章が眼についた。 当世人の趣味は大抵日比谷公園の老樹に電気燈を点じて綺麗綺麗と叫ぶ類のもので、清夜に月…

佐藤優『インテリジェンス人間論』のおもしろいエピソード

先日佐藤優『インテリジェンス人間論』(新潮文庫)の興味深いエピソードを紹介したが、まだまだおもしろいエピソードがたくさんある。 森喜朗氏は北方領土問題の解決と日露の戦略的提携をとても重視し、筆者も20回以上、ロシア情勢について説明している。(…

川本三郎『マイ・バック・ページ』を読む

川本三郎『マイ・バック・ページ』(河出文庫)を読む。副題が「ある60年代の物語」。本書を読んだのは、先頃亡くなった早川さんが、「Oさん、あの夜に私が話した本は、この河出書房新社の川本三郎著「マイ・バック・ページ」です。現在は絶版ですが、いつか…

木村俊介『物語論』を読んで

木村俊介『物語論』(講談社現代新書)を読む。簡単に言えばアーチストたちに対するインタビュー集だ。本書の「はじめに」から、 本書は、小説、漫画、美術、映画、音楽……といったさまざまな分野の方々から「ものを語ること」に関して聞かせていただいた考え…

コバヤシ画廊の佐々木健展を見る

東京銀座のコバヤシ画廊の佐々木健展を見る(12月3日まで)。タイトルを「脱出の日、イモリのあくびを眺める」としている。佐々木は1968年宮城県石巻市生まれ、1991年宮城教育大学B類美術科を卒業している。画廊のテキストより、 佐々木健の絵画は、垂直方…

なびす画廊の瀧田亜子展がすばらしい

東京銀座1丁目のなびす画廊の瀧田亜子展がすばらしい(12月3日まで)。瀧田は1972年東京都生まれ。なびす画廊での個展は今回で11回目になる。特に今年、2010年、2009年、2006年は春秋と年に2回個展を開いている。しばらく前までは画面に樹影らしき形が見…