南天子画廊のサム・フランシス展を見て考えた

 去年9月に川村記念美術館へバーネット・ニューマン展を見に行った。その時常設の部屋の一角に難波田龍起の作品が展示されていた。近づいてみると難波田ではなく、サム・フランシスの1956年の作品だった。難波田とサム・フランシスの影響関係はどうなっているのか不思議に思った。
 3年ほど前だったか、東京都現代美術館の常設展にサム・フランシスの大きな作品が展示された。2階の入ってすぐの部屋で、四囲の壁面に1点づつ、ほとんど壁面を覆うほどの大きなものが4点展示されていた。それは彼の典型的な作品で、中央に白い大きな空間があるものだった。それらを初めて見て、昔若い頃に少し憧れていたこれらの作品がスカスカな印象だったのに驚いた。
 そのことを後日知人の個展のオープニングの席で話すと、知人の知り合いだという爺さんの画家から怒鳴られた。爺さんは少し酔っていたが、バカ野郎生意気言うな、とっとと出て行けと叫んだのだった。確かにかつてサム・フランシスは抽象絵画のヒーローだった。
 同じことをたけだ美術の武田さんにも言ったが、さすが紳士の武田さんは若い頃のサムの作品は良かったよと静かに言われた。その若い頃の作品てどんなだったんだろう。
 現在、東京京橋の南天子画廊で「サム・フランシス:カタログレゾネ刊行記念展」が開かれている(12月22日まで)。カタログレゾネとは全作品目録のこと。アメリカで発行されたそれは、320ページのハードカバーにDVDが付属している。
 画廊には1972年制作の中央に白い余白がある大きな作品(183×213.2cm)と1960年制作の版画、1954年制作の小さなガッシュ作品などが並べられている。この版画作品とガッシュがとても良かった。
 画廊主に川村記念美術館で見た作品のことを話し、難波田とサム・フランシスの影響関係はどっちが先だったのかと尋ねた。画廊主は1956年頃はまだサムは日本には知られていなかった。二人に直接の影響関係はなかったのではないだろうかと上品に控えめに言われた。そしてDVDを見せてくれたが、1950年〜1960年頃の彼の作品はとても魅力的だった。
 南天子画廊の今回の展示はサムの前期と後期の作品を実際に比べてみることができる。作品は少数ながら意義ある個展だと思う。会期の終了も迫っているが、ぜひ多くの人にみてもらいたい。

 ギャラリーの一角には安齊重男撮影のサムを囲む関係者たちの1983年の南天子画廊での写真が展示されている。28年前だ。針生一郎大岡信多木浩二磯崎新、その他顔は知っているが名前の思い出せない著名な人々のまだ若い頃の姿が並んでいる。
 サム・フランシス:カタログレゾネ南天子画廊で39,000円(税・送料別)で販売している。
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サム・フランシス:カタログレゾネ刊行記念展
2011年11月28日(月)−12月22日(木)
10:30−18:30(日曜休廊)
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南天子画廊
東京都中央区京橋3-6-5
電話03-3563-3511
http://www.nantenshi.com