コバヤシ画廊の佐々木健展を見る

 東京銀座のコバヤシ画廊の佐々木健展を見る(12月3日まで)。タイトルを「脱出の日、イモリのあくびを眺める」としている。佐々木は1968年宮城県石巻市生まれ、1991年宮城教育大学B類美術科を卒業している。画廊のテキストより、

佐々木健の絵画は、垂直方向、上下動ストロークのみを描画の所作としてフィックスし、その連鎖として画面のたたずまいを措定します。支持体には近年、ターポリンを採用し、そのものにあらかじめ存在している樹脂素材特有のなまめかしさと襞の布置が、ストロークの軌跡と絵具の重力移動によって現前する様を俯瞰します。今回は作者の津波体験がひとつのテーマともなっており、"むこうがわ"での出来事として湧き上がるかのごとき絵画として、見るものにフリーズされたイメージを呼び寄せます。今回の新作展では、ターポリンにアクリル絵具で描いた大作6点と小品を展示いたします。
※ターポリン(主に防水シートやテント地に使われる、繊維を軟質塩ビでコーティングされた生地)

 佐々木は3月の東日本大災害に、勤務する宮城県の高校で遭遇している。海に近かったので高校は2階まで津波が押し寄せたが、普段の訓練の賜物で全員屋上へ逃げ、1人の犠牲者も出さなかった。濁流が校舎の中まで襲ってきた。そのことを知って作品を見ると、抽象的な画面に渦巻く濁流が見えてくる。知らなければ造形的なものを追求した抽象作品に見えるのに。そのことはとても印象的だ。つまり津波の経験を直接描くのではなく、しかしその経験を抽象的な画面に反映させて描いているからだ。
 個展は今日が最終日だ。津波の体験を内蔵した抽象作品を見てほしい。

「土地に海が来る/脱出」145 × 435 cm/ターポリンにアクリル


「聴音哨」145 × 145 cm/ターポリンにアクリル
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佐々木健
2011年11月28日(月)−12月3日(土)
11:30−19:00(最終日17:00まで)
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コバヤシ画廊
東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1
電話03-3561-0515
http://www.gallerykobayashi.jp/