2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧

橋爪大三郎『丸山眞男の憂鬱』を読む

橋爪大三郎『丸山眞男の憂鬱』(講談社選書メチエ)を読む。これが刺激的でとても面白かった。題名としては『丸山眞男と山本七平』の案も考えたという通り、山本七平の書と対比して丸山を批判している。丸山の主著『日本政治思想史研究』は戦後東京大学出版…

NHK日曜美術館で遠藤彰子特集を見る

NHK日曜美術館で「巨大な絵画にこめたもの〜画家・遠藤彰子の世界〜」を見た(10月14日)。遠藤は1947年に東京中野区に生まれた。1986年に安井賞を受賞している。番組では、日本を代表する画家だと紹介されていた。30年前から高さが3メートルを超えるような…

東京国立博物館の「マルセル・デュシャンと日本美術」を見る

東京国立博物館で「マルセル・デュシャンと日本美術」が開かれている(12月9日まで)。アメリカのフィラデルフィア美術館所蔵のデュシャンの作品と東京大学駒場博物館の《大ガラス》の複製などを中心に、日本の古美術と絡めて展示されている。 始めに絵画作…

練馬区立美術館の笠井誠一展を見る

東京中村橋の練馬区立美術館で笠井誠一展が開かれている(11月25日まで)。 展覧会のちらしより、 笠井誠一(1932〜)は、札幌市に生まれ、東京と名古屋を中心に活躍してきた油彩画家です。 17歳で上京し、練馬区内に居住。都立石神井高校、阿佐ヶ谷洋画研究…

東京都美術館の「大作公募展 風」を見る

東京都美術館で「大作公募展 風」が開かれている(10月30日まで)。主催が中島千波、中野嘉之、畠中光享たちらしい。18名の作家が選ばれている。名前の通り大作ばかりで、大きいものは左右700cm、小さくても左右340cmもある。 兼未希恵「りんごの木」 森田舞…

ジョン・ル・カレ『スパイたちの遺産』を読む

ジョン・ル・カレ『スパイたちの遺産』(早川書房)を読む。すばらしい! ジョン・ル・カレは『寒い国から帰ってきたスパイ』で圧倒的な評価を得、ついで『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』と『スクールボーイ閣下』、『スマイリーと仲間たち』の…

ギャラリー砂翁の及川伸一展「忘れたままのこと」を見る

東京日本橋本町のギャラリー砂翁で及川伸一展「忘れたままのこと」が開かれている(11月2日まで)。及川は1949年東京生まれ。1980年から1992年まで独立美術に出品していたが、1992年からは個展を主な発表の場所としている。これまでギャラリー汲美、ギャラリ…

ギャラリーeitoeikoの岡本光博展「UFO」を見る

東京神楽坂のギャラリーeitoeikoで岡本光博展「UFO。」が開かれている(11月3日まで)。岡本は1968年、京都市生まれ。1994年に滋賀大学大学院教育学科を卒業している。その後1994〜96年、ニューヨークのアート・スチューデンツ・リーグに学び、1997〜99年、C…

ギャラリーなつかの内平俊浩展を見る

東京京橋のギャラリーなつかで内平俊浩展が開かれている(10月27日まで)。内平は1960年石川県生まれ、1982年に名古屋芸術大学美術学部彫刻科を卒業している。1987年に銀座の画廊春秋で初個展、以来銀座を中心にもう22回も個展を行っている。今回は2015年に…

MUSEE Fの福田尚代展を見る

東京表参道のMUSEE Fで福田尚代展「山のあなたの雲と幽霊」が開かれている(10月27日まで)。福田は埼玉県浦和市生まれ 、東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻を修了している。主な展覧会に、2010年「アーティスト・ファイル2010ー現代の作家たち」国立新…

野見山暁治『人はどこまでいけるか』を読む

野見山暁治『人はどこまでいけるか』(平凡社)を読む。これは「のこす言葉」という平凡社の新しいシリーズの最初の1冊で、語りおろし自伝シリーズとなっている。著名人に自伝を語ってもらい、それを編集者がまとめているのだろう。同時刊行が俳人の金子兜太…

木村敏『関係としての自己』を読む

木村敏『関係としての自己』(みすず書房)を読む。木村は精神病理学者。木村の『人と人との間』(弘文堂)を読んだのはもう45年も前になる。それがとても気に入って友人にも勧めた。木村の『時間と自己』(中公新書)を刊行後しばらくして買って、読まない…

ギャラリー暁の南島隆展を見る

東京銀座のギャラリー暁で南島隆展が開かれている(10月20日まで)。南島は1957年長野県生まれ、1983年武蔵野美術大学大学院彫刻科を修了している。先年亡くなった元熊本現代美術館長で美術評論家の南島宏とは双子の兄弟で、私とも同郷に当たる。現在女子美…

コバヤシ画廊の村上早展を見る

東京銀座のコバヤシ画廊で村上早展が開かれている(10月20日まで)。村上は1992年群馬県生まれ。2014年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科版画専攻を卒業し、2017年同大学大学院博士後期課程中退。2016年ワンダーウォール都庁で初個展、ついでコバヤシ画廊、…

Oギャラリーの沓澤貴子展「Overflow」を見る

東京銀座のOギャラリーで沓澤貴子展「Overflow」が開かれている(10月21日まで)。 沓澤は1971年、静岡県生まれ、1996年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科を卒業し、1998年に同大学大学院油絵コースを修了している。2001年ガレリアラセンで初個展を開き、Oギ…

ガルリSOLの菅野美榮展「−どこかとおくに―」を見る

東京銀座のガルリSOLで菅野美榮展「−どこかとおくに―」が開かれている(10月20日まで)。菅野は群馬県出身、1968年共立女子短期大学を卒業したのち、1971年日本デザインスクールを卒業している。1990年、銀座のギャラリー・オカベで初個展。その後、ギャラリ…

『図書 臨時増刊2018 はじめての新書』を読む

岩波書店のPR誌『図書 臨時増刊2018 はじめての新書』を読む。岩波新書創刊80年記念とある。最初に著名人15人が「はじめての新書」と題して、見開き2ページのエッセイを書いている。伊東光春、國分功一郎、丹羽宇一郎、池上彰、高橋源一郎、田中優子などだが…

ラット・ホール・ギャラリーの荒木経惟展「KATA-ME」を見る

東京表参道のラット・ホール・ギャラリーで荒木経惟展「KATA-ME」が開かれている(12月16日まで)。最新の荒木経惟新刊写真集『片目』の発行に合わせて開催されている。その写真集について、ギャラリーのHPから、 ラットホールギャラリーで開催の展覧会に合…

東京都美術館で東京展を見る

東京都美術館で東京展を見て、その実行委員会が主催する笹木繁男講演会「中村正義とわたし」を聴く。今回顕彰故展として中村正義の作品が100点ほど展示されていた。中村正義は東京展の生みの親なのだ。それで生前の中村と親交があり、『ドキュメント 時代と…

アートギャラリー環の野津晋也展「ふくら芽」を見る

東京神田のアートギャラリー環で野津晋也展「ふくら芽」が開かれている(10月20日まで)。野津は1969年島根県松江市生まれ、1992年に鳥取大学農学部を卒業した。さらに2000年に東京芸術大学美術学部油画専攻を卒業し、2002年に同じく東京芸術大学大学院油画…

77ギャラリーの作陶 重野克明展を見る

東京銀座の77ギャラリーで作陶 重野克明展が開かれている(10月12日まで)。重野は1975年千葉市生まれ、2003年東京藝術大学大学院修士課程美術研究科版画専攻を修了している。2000年に東京銀座の青樺画廊で初個展、以来77ギャラリーや高島屋美術画廊Xなどで…

ギャラリーカメリアの小林聡子展「窓」を見る

東京銀座のギャラリーカメリアで小林聡子展「窓」が開かれている(10月14日まで)。小林は1991年、多摩美術大学美術学部絵画科を卒業し、1993年同大学大学院美術研究科を修了している。2005〜2006年文化庁芸術家在外研修員としてタイ(チェンマイ)に滞在。1…

難解な文章のこと

朝日新聞の書評欄に宮崎章夫が「ひもとく/1968年のナックルボール」というエッセイを寄せている(10月6日)。60年代の難解な文章について書いている。 黒テントの佐藤信による『演劇論集眼球しゃぶり』(晶文社・絶版)について、かつて「難解」だと発言し…

不思議なボケの実

不思議なボケの実を見た。ボケは普通下の写真のようにリンゴに似たピンポン玉くらいの実を短果枝に一つ着ける。ところが今回見たボケは枝の先端に数個かそれ以上の小さな実がが固まって着いている。こんなボケの生り方は初めて見た。 ↑普通のボケの実 狂い咲…

山本弘の作品解説(86)「夏雲」

山本弘「夏雲」、油彩、F3号 これは25年ほど前に撮った写真、作品そのものは購入してくれた人の遺族から骨董屋に渡ってしまい、その骨董屋の手も離れたという。カラー写真の色が少し褪せていて、元の色彩と違っているかもしれない。 制作年は晩年の頃だと思…

ドナルド・キーン『日本文学史 近世篇二』を読む

ドナルド・キーン『日本文学史 近世篇二』(中公文庫)を読む。同『〜近世篇一』を読んでから2年も経ってしまった。キーンの日本文学史シリーズは英文で書かれており、英米の読者に向けて日本文学を講義しているもの。キーンは日本の国文学の文献を渉猟し詳…

新国立美術館のピエール・ボナール展を見る

東京六本木の新国立美術館でピエール・ボナール展が開かれている(12月17日まで)。ボナールは色彩が美しいナビ派の画家だ。図版では見ているもののまとめてみるのは初めてだった。1867年に生まれ、1947年に80歳で亡くなっている。 後期になるほど色彩の美し…

花田伸さんが山本弘展をブログで取り上げてくれた

画家の花田伸さんがブログでアートギャラリー道玄坂の山本弘展を取り上げてていねいに紹介してくれた。 「河」について、 ペインティングナイフ(パレットナイフかもしれない)をぐいぐい押し当て、前の色面と新たな色面が瞬間瞬間に変化して行く。そして筆…

小谷野敦『江藤淳と大江健三郎』を読む

小谷野敦『江藤淳と大江健三郎』(ちくま文庫)を読む。江藤と大江の二人の伝記を同時に描いている。ただ小谷野はかなり癖の強いひねくれた性格の文芸評論家なので、他の伝記作家とはだいぶ異なった意見が綴られることになる。遠慮することがなく、細部に必…

幸田文『流れる』を読む

幸田文『流れる』(新潮文庫)を読む。何十年ぶりかの再読だが、すばらしさに圧倒される。昭和の樋口一葉といった印象だ。 芸者置屋へ住み込みで働いた経験を小説にしている。女中として働くが幸田文は父幸田露伴に家事等を徹底的に仕込まれている。この作品…