新国立美術館のピエール・ボナール展を見る


 東京六本木の新国立美術館ピエール・ボナール展が開かれている(12月17日まで)。ボナールは色彩が美しいナビ派の画家だ。図版では見ているもののまとめてみるのは初めてだった。1867年に生まれ、1947年に80歳で亡くなっている。
 後期になるほど色彩の美しさが眼だってくる。風景画に見られる明るく豊かな豪奢な色彩がボナールの真骨頂だ。カラリストボナール、すばらしい色彩だ。と同時に形は色彩に追いつかない。大きなボナール展がいままで少なかったのも納得できた。
 現実に存在する世界をしっかり認識する直前の、色が氾濫しそこに形が溶け込んでいる状態を絵画に定着しているような作品という印象を持った。
 会田誠が『藤田嗣治の少女』(集英社)の中で、次のように言っている。

エコール・ド・パリというのは、僕が美術家としてデビューした1980年代から90年代の現代美術における、マルチ・カルチュラリズムとどこか似たような要素があると思っています。強い西洋中心主義の流れがあって、その袋小路の果てに反動的に起こった、様々な文化に目を向けてみよう、という態度。僕もマルチ・カルチュラリズムによって活動を始めたタイプなので、特に初期は漫画や日本画を参照した作品が多いです。でもエコール・ド・パリもマルチ・カルチュラリズムも少し趣味性に流れるような弱点があるように思います。モディリアーニマリー・ローランサンも大芸術家というふうには残っていない気がします。

 モディリアーニマリー・ローランサン藤田嗣治も趣味性に流れて大芸術家というふうには残っていないというなら、ボナールはさらにそうだろう。これらの画家たちが近代美術を豊かなものにしているが、決して主流の画家たちではなかった。いや傍流があってこそその世界が豊かだと言えるのだが・・・。
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ピエール・ボナール
2018年9月26日(水)−12月17日(月)
10:00−18:00(金・土は20:00まで)火曜日休館
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新国立美術館
東京都港区六本木7−22−2
電話03−5777−8600(ハローダイヤル)
http://www.nact.jp


藤田嗣治の少女

藤田嗣治の少女