2008-02-01から1ヶ月間の記事一覧

新国立劇場演劇研修所研修生の高いレベル

昨日紹介した井上ひさしの「リトル・ボーイ、ビッグ・タイフーン」に出演したのが新国立劇場演劇研修所第2期研修生14名、かれらは初めての国立の俳優養成所の研修生たちなのだ。 この芝居を演出した栗山民也「演出家の仕事」(岩波新書)には次のように紹介…

井上ひさしの朗読劇「リトル・ボーイ、ビッグ・タイフーン」

井上ひさしの朗読劇「リトル・ボーイ、ビッグ・タイフーン」を見た。日本ペンクラブ主宰の「災害と文化。」というフォーラムがあり、その一環として新宿の全労済ホール/スペースゼロで2月22日と24日の2回だけ上演された。演出が栗山民也、出演が新国立劇…

村松友視「アブサン物語」を読む、その他早坂暁の名文

村松友視「アブサン物語」を読む。村松友視がまだ中央公論社の編集者だった頃、上司が日比谷公園で拾ってきた子猫をもらい、その後21年間飼ってその死を見届けた猫に関する評判の良いエッセイ。 それなのに、これが作家の文章かと思うほど文体がゆるい。どう…

ユダヤ人の条件

サリンジャーの伝記を読んでいると、彼が母親の旧姓を聞かれていらつくシーンがある。サリンジャーは父親がユダヤ人だが、母親はユダヤ人ではなかった。それは姓を聞けばすぐわかる。ユダヤ人の条件は母親がユダヤ人であることだ。父親の人種は問われない。…

山本弘の作品解説(12)「愛子」

山本弘「愛子」油彩、F10号(53cmx45.5cm) 1973年制作。いつの個展で発表されたのか不明。山本弘が妻の愛子をモデルに描いたもののうち2番目に美しいもの。1番美しい作品は失われてしまった。画家自身によって破壊されて。 私が初めて山本弘に会ったとき…

小林雅子の展示

今は中央区京橋にあるギャラリイKがまだ銀座1丁目にあったころ、そこでやった小林雅子という作家のインスタレーションが印象に残っている。彼女はふだんは油紙で犬の形を作り、それをギャラリーに並べるというインスタレーションを行っている。 ある時の展…

東京オペラシティアートギャラリーで池田満寿夫展を見る

新宿の初台にある東京オペラシティアートギャラリーで池田満寿夫展「池田満寿夫、知られざる全貌」が開かれている。池田は版画家として高い評価を受けた。特に1966年のヴェネツイア・ビエンナーレ展の国際版画大賞を受賞し、その評価を確立した。ほかに小説…

沼野充義の翻訳論に対するコメント

まいじょさん(http://myjo-movie.jugem.jp/)がコメントをくださった。2月10日の「沼野充義の翻訳論、または亀山郁夫批判、そして日夏耿之介小論」(id:mmpolo:20080210)に対して。 こちらでの紹介がきっかけで沼野氏のエッセイを知ることができました。…

佐藤美術館の諏訪敦展

新宿の佐藤美術館で諏訪敦展が開かれている(2月24日まで)。諏訪は極めて写実的な人物像を描く画家。主に裸婦が多いが舞踏家の大野一雄も描いている。これが絵なのかと驚くばかりのスーパーリアリズムだ。若い日本人の裸婦とか、傷口を持った裸婦、本当に…

元田久治展、東京が廃墟になる日

銀座5丁目の養清堂画廊で元田久治展を見た(2月23日まで)。東京の街が廃墟になっている絵や版画を描いている。写真はちょっと古い作品で今回は展示されていないが、雰囲気はみな同じだ。この絵は銀座の中央通りを京橋から見ている。首都高速は破壊され右…

今日は獺祭(だっさい)

今日2月20日は暦によると「獺祭」だ。獺はカワウソのこと。カワウソは自分の捕った魚を並べる習性がある。それを人が物を供えて先祖を祭るのに似ているところからこう呼んだという。山口県にこの名前をつけた日本酒もある。 日本に生息するカワウソはユーラ…

リービ英雄と水村美苗の語る日本の階級構造

先日紹介したリービ英雄「越境の声」(岩波書店)で、リービは水村美苗との対談で日本社会の階級構造に触れている。「階級と日本文学」という小見出しがつけられた章は、 水村美苗 それに加えて、やはり小説の市場が大衆化されたというのもあるでしょう。み…

山本弘の作品解説(11)「沼」

山本弘「沼」油彩、F10号(53.0cmx45.5cm) 1978年10月の飯田市中央公民館での個展で発表された。山本弘は終焉の地「上郷町黒田つつみ下」の地名の元となった堤=沼を何度も描いているが、これが最も美しい。色彩の見事さは比べるものがないと言い切りたいほ…

山本弘の書と絵

うら盆の父の死近し昼下り 何でもないよ お化けひまわりの魂消る

春風亭昇太師匠が「はみだしYOUとPIA」の選者をしていた頃の私の金昇・銀昇・銅昇作品

春風亭昇太師匠が雑誌「Weeklyぴあ」の投稿欄「はみだしYOUとPIA」の選者をしていた期間がある。1997年頃からの数年間だ。私はそれまで長い間その欄に投稿を続けていたのに採用率が低かった。それが師匠が選者になってから高い確率で掲載されるようになった…

リービ英雄「越境の声」が面白い

hainekoさん(id:haineko2003)に紹介されてリービ英雄の対談集「越境の声」(岩波書店)を読んだが、これが滅法面白かった。特に水村美苗との対談「日本〈語〉文学の可能性」が秀逸。 編集部 お二人は、そういう特殊な言語としての日本語にどうして魅かれた…

東京都現代美術館で川俣正展と「MOTアニュアル2008ー解きほぐすとき」、それに常設展を見る

東京都現代美術館へ行く。入口にベニヤ板の壁がずーっとできている。これは何の工事ですか? 川俣正展の展示です。作品なのです。そうだ川俣正の作品に間違いない。どうして分からなかったのか。いま都現美で川俣正展と「MOTアニュアル2008ー解きほぐすとき…

東京国立近代美術館の「わたしいまめまいしたわ」と常設展

東京国立近代美術館へ行って来た。「わたしいまめまいしたわ」という回文のタイトルの「現代美術にみる自己と他者」(副題)という収蔵品展。 はじめに画家たちの自画像が並んでいる。澤田知子の何百枚という証明書用写真、ついで河原温の日付絵画や電報、高…

「すばる」2007年10月号は当たりだった、井上ひさしの「ロマンス」と「追悼 小田実」

「すばる」2007年10月号に掲載されている井上ひさしの戯曲「ロマンス」を読んだ。チェホフの一生を描いたもの。一生を短い戯曲のなかに再現し成功している。これが面白いのだ。芝居は栗山民也で昨年上演された。見たかった。芝居は高いのだ。半年近く前の雑…

山本弘の書(1)

Emmausさん(id:Emmaus)のリクエストで山本弘の書を紹介します。今回はその第一弾。 これから本当に茫漠と描けそう 生涯のナマケモノ悔ゆるなし可々 怒号の死か沈黙か無表空風の舞ふ

沼野充義の翻訳論、または亀山郁夫批判、そして日夏耿之介小論

沼野充義が東京大学出版会のPR誌「UP」2月号に「薄餅とクレープはどちらが美味しいか? ーー翻訳について」というエッセイを寄せている。まず最初の小見出しが「『カラマーゾフの兄弟』がこんなに読みやすくていいの?」として、亀山郁夫の新訳が読みやすい…

鳶職は堅気ではなかったのか

若い頃テキ屋の親分の襲名披露に出席したことがある。なに、使役させられただけだ。当然全国のテキ屋の親分衆、博徒の親分衆が集まった。そして驚いたことに鳶の頭たちも参加したのだった。テキ屋も博徒もヤクザと一括りにされる堅気ではない人たちだ。鳶も…

四方田犬彦「大島渚と日本」の連載が始まった

四方田犬彦「大島渚と日本」の連載が筑摩書房のPR誌「ちくま」2月号から始まった。これは著者によれば「貴種と流転 中上健次」「白土三平論」と並んで、日本論三部作を構成するという。 題名の由来に、大島渚の作品名に「日本」を冠したものが少なくないと…

宮下誠「ゲルニカ」を読む

宮下誠「ゲルニカ ーピカソが描いた不安と予感」(光文社新書)を読む。先月発行されたばかりだが、宮下誠の美術書とあっては読まないわけにはいかない。前に読んだ宮下誠「20世紀絵画 ーモダニズム美術史を問い直す」(光文社新書)は刺激的でとてもおもし…

日本語の消滅がせまっている!

言語学者の田中克彦が岩波書店のPR誌「図書」2月号に「『ことば喰い』の世紀のエスペラント」というエッセイを寄せている。 現在地球上で使われている約7,000の言語のうち、半数が今世紀中に姿を消すという。人々が自分の言葉を捨てて大言語に乗り換えてい…

小島信夫「寓話」という小説

作家の保坂和志が小島信夫の長編小説「寓話」を絶賛している。1987年に福武書店から発行されて、それきりすでに絶版となっている。保坂はそれを惜しんで個人で復刊・発行したという。そんなに良い作品なら読んでみたいと図書館にあったので借りてきた。564ペ…

ポツダム伍長とは何か

小島信夫の奇妙な小説「寓話」(福武書店)を読んでいると、「ポツダム伍長」という言葉が唐突に出てくる。 「小島さん、それにぼくは、昭和十九年に召集で入団して、内地にいたものですから。ポツダム水兵長です。小島さんは?」 「ぼくは、ポツダム伍長で…

下島迷犬の時事川柳

下島迷犬君は高校の同級生だ。当時から辛辣な皮肉屋で通っていた。だから川柳は彼にとって最も得意なメディアなのだろう。浅草仲見世商店街のホームページに「なかつう時事川柳」を毎週掲載している。 http://www.nakamise-tu.com/senryu.html 先週の最新作…

異文化との合体

外資系の会社に勤めている女性から聞いた。彼女の勤めているB社がA社を買収して合併した。しかし日本支社はA社の方がB社よりはるかに大きいので、買収したB社がA社の事務所に移った。 雑巾の乾し方一つ違うんです。出張旅費の精算方法とかいろいろ異なるだろ…

趣味はオートバイだった

34歳のときにオートバイの中型免許を取った。はじめ友人からヤマハSR400を借りて乗っていた。これは古いデザインのバイクで単気筒だった。乗りにくいが低速トルクが強く面白い乗り心地だ。でも自分のバイクを買いたいとカミさんに言うと、50ccの(中古)バイ…