今は中央区京橋にあるギャラリイKがまだ銀座1丁目にあったころ、そこでやった小林雅子という作家のインスタレーションが印象に残っている。彼女はふだんは油紙で犬の形を作り、それをギャラリーに並べるというインスタレーションを行っている。
ある時の展示がそれらと全く異なっていた。ミニチュアの女の子の洋服をたくさん作り、それを箱に入れて画廊の壁面一杯に展示していたのだ。これは何かとたずねると、作家曰く、自分が子供の頃着せられていた洋服を思い出して作ったものです。
母親が子供ー彼女のために選び、着せていた洋服。それを大人になった作家が思い出しながら作ったもの。洋服は母親からの子供への思いを象徴しており、それを再制作したミニチュアの洋服は、その母親の思いを追体験する作家の思いの象徴だ。
ミニチュアの洋服の上で、作家が子供だった時の母親の気持ちとそのことを追体験する作家の思いが重なっている! それに気づいた時そのインスタレーションはとても感動的だった。