2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

国立新美術館の五美大展を見る(その1:多摩美と武蔵美)

東京六本木の国立新美術館で五美大展が開かれている(3月3日まで)。印象に残った作品を紹介したい。今回はその1として、多摩美術大学と武蔵野美術大学を取り上げる。【多摩美術大学】 町田帆実 山縣俊介 倪 力(Li NI) 井上瑞貴 小堺百笑 吉田沙織:カッ…

東京都美術館の「KUAD ANNUAL 2019 宇宙船地球号」を見る

東京都美術館で「KUAD ANNUAL 2019 宇宙船地球号」が開かれた(2月26日まで)。これは京都造形芸術大学卒業・修了生による企画展だ。 会場の最初にヤノベケンジ教授の大きなドームが置かれている。その他印象に残った作品を紹介する。 桑原ひな乃 丹羽優太 …

東京都美術館の東北芸術工科大学 卒業・修了展(東京展)を見る

東京都美術館で東北芸術工科大学 卒業・修了展(東京展)が開かれている(2月27日まで)。3つのフロアーを使って日本画、洋画、工芸、彫刻作品が展示されていた。その中で印象に残ったものを紹介する。 木村たまえ 福井杏樹 菅野耕平 渋谷七奈 杉山ひかる …

シベリアのトイレ

朝日新聞の投書欄に「忘れられないトイレ」という投稿が載った(2019年2月18日付)。静岡県の岩崎弥之助という95歳の人だ。 45年前、旧満州から西シベリア(現ロシア)のバルナウルという街に送られ、貨車の修理工場の雑役をさせられた。犠牲者の多かった伐…

「バイトテロ」について

この頃アルバイトの若者がふざけた動画をSNSに投稿して炎上しちょっとした社会問題になっている。それをバイトテロなどとマスコミが名づけているが、ちょっとお粗末で本当のテロリストに申し訳ない。 なぜこんなことが流行っているのだろうか。私はYou Tube…

服部真里子『遠くの敵や硝子を』を読む

服部真里子『遠くの敵や硝子を』(書肆侃侃房)を読む。著者2冊目の歌集。読み始めて岡井隆とか塚本邦雄あたりのエピゴーネンかと思ったが、途中まできてお父さんの死の前後を詠んだあたりから、私が服部の語法に慣れたのか、いいじゃないかと思い始める。 …

片山杜秀『音楽放浪記 世界之巻』の参考音盤ガイドが興味深い

片山杜秀『音楽放浪記 世界之巻』(ちくま文庫)の巻末の参考音盤ガイドがとても濃い~内容で興味深い。その一部を紹介する。 6.さようなら、クライスラー「オール・アメリカン・ショーケース」 マントヴァーニ・オーケストラ〔輸・Vocalion〕 クライスラ…

新宿高島屋10階美術画廊の「TUAD ART-LINKS 2019」を見る

東北芸術工科大学が都内の9会場で、作家活動を続ける卒業生たちの個展やグループ展を「TUAD ART-LINKS 2019」と名づけて開いている。このうち、新宿高島屋で開いているグループ展を見た(2月25日まで)。ここでは5人の作家を展示しているが、私には多田さや…

片山杜秀『音楽放浪記 世界之巻』を読む

片山杜秀『音楽放浪記 世界之巻』(ちくま文庫)を読む。本書の元は月刊誌『レコード芸術』2000年から2008年にかけて連載した「傑作!? 問題作!?」で、それをアルテスパブリッシングという出版社が『音盤考現学』と『音盤博物誌』という2冊の本に単行本化した…

クロスビューアーツの濱田富貴展「天空と氷のかたち」を見る

東京京橋のクロスビューアーツで濱田富貴展「天空と氷のかたち」が開かれている(3月2日まで)。濱田は1972年福岡県生まれ、2000年に武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻版画コースを修了している。その後、カナダのアルバータ大学やアメリカのユタ州立…

ギャラリー58の山下耕平展を見る

東京銀座のギャラリー58で山下耕平展が開かれている(2月23日まで)。山下は1984年兵庫県生まれ、2007年に佐賀大学文化教育学部デザイン専攻を卒業している。東京では、2011年から毎年このギャラリー58で個展を続けていて今年がもう8回目になる。 今回はフ…

SPCギャラリーの勝田徳朗×本多真理子展「あり余る 余りある」を見る

東京日本橋兜町のSPCギャラリーで勝田徳朗×本多真理子展「あり余る 余りある」が開かれている(2月23日まで)。 本多は壁面に設置した立体と天井から吊り下げた作品を展示している。壁面のものは刺繍用の枠に砂を詰めている。天井からは柔らかい布に砂を入れ…

Kanzanギャラリーの黒田大祐「ハイパーゴースト・スカルプチャー」を見る

東京東神田のKanzanギャラリーで黒田大祐「ハイパーゴースト・スカルプチャー」が開かれている(2月17日まで)。黒田は1982年京都府生まれ、2013年に広島市立大学大学院研究科総合造形芸術専攻(彫刻領域)を修了している。近年は「不在の彫刻史」と題した、…

須藤斎『海と陸をつなぐ進化論』を読む

須藤斎『海と陸をつなぐ進化論』(ブルーバックス)を読む。題名の進化論に惹かれて読んだのだが、海の植物プランクトンの話だった。まったく知らない世界でそれはそれとして面白かったが、植物プランクトンの一種珪藻類の歴史が延々とつづられる。たいてい…

ギャラリーOUT of PLACEの関智生展「青花」を見る

東京外神田3331アーツ千代田のギャラリーOUT of PLACEで関智生展「青花」が開かれている(3月10日まで)。関は1965年奈良県生まれ、1998年から2003年まで英国で学んだ。現在、愛知県を拠点に制作を続けている。 関が書いている文章をHPから引く。 現代美術に…

ギャルリ・プスの「核心(CORE)」展を見る

東京銀座のギャルリ・プスで「核心(CORE)」展が開かれている(2月20日まで)。いずれも立体作品で、参加作家は、木下宏、建畠朔弥、吉本義人、大坪美穂の4名だ。初日に伺ったが、小さな画廊がお客さんで一杯だった。その中で撮影してきた作品を紹介する。…

中和ギャラリーの柴田和「青味泥の空間 いろいろ展」を見る

東京銀座の中和ギャラリーで柴田和「青味泥の空間 いろいろ展」が開かれている(2月16日まで)。DM葉書にはほかに「平面と函絵の2パターン。特に平面は、縦、横、斜め、すべてを直線のみで仕上げてみた。」とある。柴田は1934年生まれ、帝国美術学校(武蔵…

うしお画廊の酒匂譲展「没後3年 画集出版記念」を見る

東京銀座のうしお画廊で酒匂譲展「没後3年 画集出版記念」が開かれている(2月16日まで)。酒匂は1930年鹿児島県に生まれ、1954年に東京藝術大学油絵科を卒業し、1955年に同大学専攻科を修了している。1976年から2016年までみゆき画廊で毎年個展を開いていた…

草薙奈津子『日本画の歴史 近代篇』を読む

草薙奈津子『日本画の歴史 近代篇』(中公新書)を読む。先に読んだ「現代篇」同様、いやそれ以上に満足した。副題が「狩野派の崩壊から院展・官展の隆盛まで」というもの。近代日本画の歴史がよく分かった。文章も簡潔で明快、分かりやすい。 「明治・大正…

NAU21世紀美術連立展を見る

六本木の国立新美術館でNAU21世紀美術連立展を見る(2月17日まで)。NAUというのは、New Artist Unit Exhibitionの略。知人が大勢参加している。知人たちの作品を紹介する。 原大介:展示場所が高く見づらかったし、撮影しても歪んでしまった。椿近代画廊で…

『BRUTUS』の会田誠が選んだ「日本の絵100」が良い

『BRUTUS』の会田誠が選んだ「死ぬまでにこの目で見たい日本の絵100」がとても良い。その選択はともかく、選んだ絵に添えた会田の解説が興味深い。 黒田清輝「智・情・意」鹿児島の人には悪いけど、僕は黒田は褒めません。薩摩藩士の子だから法律学びにフラ…

辻原登・永田和宏・長谷川櫂『歌仙はすごい』を読む

辻原登・永田和宏・長谷川櫂『歌仙はすごい』(中公新書)を読む。これがとてもおもしろかった。小説家と歌人と俳人の3人が2011年から2018年までの8年間に8回の歌仙を巻いている。 歌仙は複数の参加者が集り、最初の人が5・7・5の句を読み、次の人が7・…

「山本弘展示場にて」と書かれた古い写真

『清水監遺作画集』に男3人が写った白黒写真が載っていて、写真説明に「山本鉄男、仲村進氏と(山本弘展示場にて)」と書かれている。男たちは左から山本弘の友人で豊橋の画家山本鉄男、画集の主人公清水監、山種美術館賞を受賞した画家仲村進の3人だ。仲村…

ギャラリー椿の富田有紀子展を見る

東京京橋のギャラリー椿で富田有紀子展が開かれている(2月16日まで)。富田は1958年東京生まれ。1980年女子美術大学芸術学部絵画科洋画専攻を卒業している。2013年には練馬区立美術館で個展が行われた。 富田はきわめて美しい色彩を持っている。透明度が高…

車谷長吉『文士の生魑魅』を読む

車谷長吉『文士の生魑魅』(新潮社)を読む。これはその後『文士の魂・文士の生魑魅』として新潮文庫に収められた。新潮文庫を読んでこのブログに紹介したが、今度単行本をもらったので再読した。やはり優れた読書案内だと思う。(生魑魅=いきすだま) 「エ…

ギャラリーαMの中村一美展を見る

東京東神田のギャラリーαMで中村一美展が開かれている(3月23日まで)。中村は1956年千葉市生まれ、1984年東京藝術大学大学院美術研究科油画を修了している。2014年に国立新美術館で大きな個展が開かれたことが印象に残る。 ギャラリーが配布している「中村…

「21ST DOMANI・明日展」を見た

東京六本木の国立新美術館で「21ST DOMANI・明日展」が開かれている(3月3日まで)。文化庁が派遣して世界各地で研修した10人の作家たちが取り上げられている。面白かった作家を紹介するが、一番良かったのがゲスト作家として参加している三瀬夏之助だった。…