SPCギャラリーの勝田徳朗×本多真理子展「あり余る 余りある」を見る

 東京日本橋兜町のSPCギャラリーで勝田徳朗×本多真理子展「あり余る 余りある」が開かれている(2月23日まで)。

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 本多は壁面に設置した立体と天井から吊り下げた作品を展示している。壁面のものは刺繍用の枠に砂を詰めている。天井からは柔らかい布に砂を入れている。それに触っていいと言われた。これは乳房ではないのか。
 以前読んだ話だが、小島ゆかりが、池永朗の『少年時代』(双葉社)を紹介していた。

「それが、伊藤さんの乳房の感覚よ」
いわれてみれば、そう感じられないこともなかった。手のひらにあたる風の塊は、女性の乳房そのものの感触といえた。達夫は小夜子の顔を凝視しながら、その感触を手のひら一杯で感じとった。
良平の友人達夫の家は、民宿の経営が破綻して夜逃げをすることになった。別れの記念に、大好きな小夜子の乳房に服の上からちょっとだけでも触りたいという達夫の夢を、みんなで叶えてやろうと相談するのだが……。
奔放で情熱家の教師美樹が、小夜子と達夫を車に乗せて走る。達夫は小夜子の横顔を見つめながら、窓から手を出して風の塊を感じるのだ。小夜子の乳房は並の大人より大きいからと、時速70キロで走る美樹の姿が実に魅力的だ。

 風圧で疑似乳房を感じるのなら、本多の作品はよりリアルな乳房ではないのか。

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 勝田は床に木彫作品を並べ、天井から金属の造形を吊り下げている。天井から吊り下がっているのは金づちの頭の部分。見れば様々な形がある。古道具屋で入手したものを磨いているという。こんな風に作品化して吊るしたのを初めて見た。金づちの頭が新鮮だった。
 それに対して床には木彫作品が並んでいる。すべて流木から作ったという。こけしのような形のものも流木から彫ったと言われて驚いた。天井にもう機能しなくなった金属の道具が吊られ、床に流木という究極の無機能なものから作られた木彫作品が、あたかも流木を舟とする船頭のように並んでいる。
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勝田徳朗×本多真理子展「あり余る 余りある」
2019ン円2月11日(月)-2月23日(土)
12:00-19:00(最終日17:00まで9日曜休廊
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SPCギャラリー
東京都中央区日本橋兜町9-7 SPCビル3F
電話03-3666-1036
http://www.spc.ne.jp
地下鉄茅場町駅10番出口より徒歩1分
地下鉄日本橋駅D2番出口より徒歩3分