建築
筑摩書房のPR誌『ちくま』に「優れた建築家は優れた人間観察者」というタイトルのエッセイで、藤山和久が自著の『建築家は住まいの何を設計しているのか』(筑摩書房)を紹介している。 電力会社各社は膨大な広告費を投じて、オール電化住宅の普及キャンペー…
東京神楽坂の少し本通を外れたところに繁茂した植物に覆われた廃屋のような建物があった。近づいて見ると植物はキヅタで、入り口の木のドアが閉まっていてそのドアいっぱいに落書きのような文字が書き込まれていた。それを拾ってみた。どうやらここは「ムギ…
横尾忠則『創造&老年』(SBクリエイティブ)を読む。80歳前後の横尾忠則が、80歳以上の作家、画家、建築家、写真家、映画監督、作曲家らと老年と創造について対談した記録。具体的には、瀬戸内寂聴、磯崎新、野見山暁治、細江英公、金子兜太、李禹煥、佐藤…
小川格『日本の近代建築ベスト50』(新潮新書)を読む。これがとても良かった。小川は法政大学建築学科を卒業後、『新建築』の編集を経て、設計事務所に勤務、相模書房で建築書の出版に携わった後、建築専門の編集事務所を設立して2010年まで代表を務めたと…
藤森照信著『藤森照信 建築が人にはたらきかけること』(平凡社)を読む。平凡社の「のこす言葉」というシリーズの1冊。藤森が自分の歴史を語っているとても分かりやすい自伝。 藤森は現茅野市の山間の小さな村に昭和21年に生まれた。そこは小さな扇状地にあ…
今日の朝日新聞の夕刊に「後世へ伝える集合住宅の星」という記事が載っていた(7月25日)。小見出しが「赤羽台団地のスターハウス(東京都北区)」とあり、大きな写真も載っている。 記事によると、 都市部の勤労世帯に向け、旧・日本住宅公団(現在の都市再…
祝田秀全『近代建築で読み解く日本』(祥伝社新書)を読む。近代日本建築史のつもりで読み始めたら違っていた。タイトルを見れば、そう考えた私が間違っていた。建築を歴史の視点から見るという本だった。それはそれでなかなか興味深く読めた。 明治維新後、…
墨田区の一角に廃屋がある。片側1車線の道路に面した駐車場の扉が半ば開いていて庭が見える。いまはほとんど木が茂っているが以前は車庫だったのだろう。 Google mapで空から見ると、中央の空き地の北(上)がその廃屋だ。間口10m、奥行20mの200平米、およ…
藤森照信+大和ハウス工業総合技術研究所『近代建築そもそも講義』(新潮新書)を読む。明治以後の日本近代建築の歴史を上下水道から始めて具体的に詳しく語ってくれる。 東京の防火計画で暗くなった室内に明かりを取り入れるために窓を作りたいが硝子は高価…
『磯崎新と藤森照信の「にわ」建築談義』(六耀社)を読む。二人の建築家が毎年対談を行っていて、『〜の茶室建築談義』『〜のモダニズム建築談義』に続く3冊目。藤森は建築史が専門なので、前2冊については、藤森が歴史を語ることが多かったが、本書では磯…
五十嵐太郎『日本建築入門』(ちくま新書)を読む。副題が「近代と伝統」、全体を10の章に分け、「オリンピック」「万博」「屋根」「メタボリズム」「民衆」「岡本太郎」「原爆」「戦争」「皇居・宮殿」「国会議事堂」と、不思議な見出しでくくっている。 「…
加藤耕一『時がつくる建築』(東京大学出版会)を読む。副題が「リノベーションの西洋建築史」とある。本書について、松原隆一郎が毎日新聞の書評欄で紹介している(6月18日)。それを要約しつつ簡単に紹介する。 著者は西洋建築史を古代までさかのぼり、再…
五十嵐太郎『日本の建築家はなぜ世界で愛されるのか』(PHP新書)を読む。タイトルのやや胡散臭いのに反してとても面白かった。 まず「アメリカで学んだモダニズム」として、槙文彦と谷口吉生を紹介し、「メタボリズムを世界に売り出した」黒川紀章、「建築…
光嶋裕介『建築という対話』(ちくまプリマ―新書)を読む。副題が「僕はこうして家をつくる」とあり、今年37歳の若い建築家の自叙伝だ。父の転勤に伴って、アメリカで生まれて育ち、いったん日本に帰り、また父の転勤で中学からカナダへ行く。高校は早稲田大…
松村秀一『ひらかれる建築』(ちくま新書)を読む。建築評論家の五十嵐太郎が書評で取り上げていたから(朝日新聞、2016年11月27日)。 本書はケンチクやタテモノからの卒業をうたう。ケンチクとは建築家の先生が設計する芸術的な作品。一方、タテモノとは経…
『磯崎新と藤森照信の茶席建築談義』(六曜耀社)を読み終えた。2人はこの後 『磯崎新と藤森照信のモダニズム建築談義』を出版しており、先日そちらを先に読んだが、このモダニズム建築についての対談の方がおもしろかった。とは言え、茶席をめぐって縄文時…
『磯崎新と藤森照信の茶席建築談義』(六耀社)を読んでいる。そこに以前訪れたことのあったチョコレートハウスが紹介されていた。そのくだりを、 藤森照信 磯崎さんんい来ていただいたチョコレートハウスの茶室を設計しているときに、これは煎茶室をつくっ…
『磯崎新と藤森照信のモダニズム建築談義』(六耀社)を読む。磯崎と藤森の対談だが、これがとても面白かった。磯崎は丹下健三の弟子で、つくばセンタービルをはじめ国際的に活躍している建築家。藤森ははじめ近代建築史を研究していたが、神長官守矢資料館…
地下鉄副都心線北参道駅の上あたりにあるビルの外壁に排管パイプだろうか、おもしろい造形のパイプが設置されていた。 秋山画廊へ行ったがあまりおもしろくなかったし、タカイシイギャラリーは展示替え中だった。小山登美夫ギャラリーはもう天王洲アイルへ転…
以前ここで二笑亭という不思議な建築を紹介した。渡辺金蔵が建てたきわめて奇妙な住宅だった。それはすでに取り壊されて当時の写真と最近(といっても20数年前)作られた模型しか残ってないが。ただ詳しいことは式場隆三郎『二笑亭奇譚』(求龍堂、のちにち…
万城目学・門井慶喜『ぼくらの近代建築デラックス!』(文春文庫)を読む。二人の作家が大阪、京都、神戸、横浜、東京、そして台湾の近代建築を訪ねて語っている本。文藝春秋社の雑誌に連載したものを単行本化し、文庫化にあたって東京編の追加と台湾を付け…
椹木野衣『アウトサイダー・アート入門』(幻冬舎新書)に二笑亭という奇妙な建物が紹介されていた。これを作った渡辺金蔵がアウトサイダー・アーチストに分類されている。それで興味を持って、そこに紹介されている式場隆三郎ほか著の『定本 二笑亭綺譚』(…
埼玉県のある地方に瀟洒な二階建ての建売住宅が建っている。土地代がさほど高くない地域なので、建売とはいえ、ゆったりと建っている。よく見たいと思って近づいたら、大きな問題を抱えていることに気がついた。 玄関前のスラブが地面から浮き上がっていた。…
東京国分寺にギャラリー丘の上APTがオープンし、オープン記念展として「児島善三郎 国分寺時代の田園風景 1936-1951」が開かれている(7月20日まで)。画家児島善三郎は昭和11年からこの地に住んでいて、現在は孫の兒島俊郎氏が住んでいる。兒島氏は最近ま…
東京の板橋区立美術館の男子トイレにちょっと変わったトイレ(小便器)がある。縦型のトイレのまん中に旧式のトイレが設置されている。そのトイレの上にプレートがあり、何やら説明が書かれている。 "使用する現代美術の作品" この牛波(niu-bo)氏の作品は…
藤森照信×山口晃『日本建築集中講義』(淡交社)がすごく面白い。近代建築史が専門で建築家でもある藤森照信を先生に、画家山口晃が日本の名建築について講義を受けるという本。取り上げられたのは古くは法隆寺から新しいものでは昭和初期に作られた大山崎の…
池袋と目白の間にあるギャラリーを訪ねていったとき、白壁の長屋門があった。よく見ると「豊島区立目白庭園」とあって、入場無料とある。早速入ってみた。門の内側に受付があり、案内パンフが置かれている。それによると、開設が平成2年と新しい。敷地面積…
重森千青『日本の10大庭園』(祥伝社新書)を読む。著者は名庭師と言われる重森三玲の孫にあたる。本人も庭園設計研究室代表であり、作庭家で庭園研究家である。副題が「何を見ればいいのか」とあり、まさに日本庭園の見方、名庭園の所以を教えてくれる。 取…
東京京橋のLIXILギャラリーで開かれている「集落が育てる設計図」という展覧会が興味深い(4月13日まで)。副題が「アフリカ・インドネシアの住まい展」というもの。集落の正確な図面と、これまた正確な模型が展示されていて、とても魅力的なのだ。それに併…