『日本の10大庭園』を読む

 重森千青『日本の10大庭園』(祥伝社新書)を読む。著者は名庭師と言われる重森三玲の孫にあたる。本人も庭園設計研究室代表であり、作庭家で庭園研究家である。副題が「何を見ればいいのか」とあり、まさに日本庭園の見方、名庭園の所以を教えてくれる。
 取り上げられた10大庭園は、岩手の毛越寺庭園、福井の一乗谷朝倉氏遺跡庭園群、徳島の徳島城旧表御殿庭園、そして京都の西芳寺庭園、天龍寺庭園、鹿苑寺庭園、大徳寺大仙院庭園、龍安寺庭園、南禅寺金地院庭園、桂離宮庭園だ。最初にそれぞれ庭園の略図が示される。池や中島、出島、遣水、石組、そしてそれらの意味が語られる。白黒の写真図版だが豊富に使われ、庭園の見事さが十分に偲ばれる。
 大徳寺大仙院庭園の方丈から見た滝石組と石橋付近の写真、その解説。


砂紋が水の流れを表している。滝石組から来た水が、石橋の下をくぐって、右方へと流れていく。石橋の少し先にある三個の石は、水の飛沫だろう。それにしても、石橋付近に置かれた石は、単独で見どころのあるものばかりだ。

 また、とくに桂離宮庭園については「どこから見ても名景」とされ、「桂離宮の私選七景」として、それらが具体的に紹介される。
1.「桂垣」の景
2.「御幸道」の景
3.州浜から「天橋立」を通して「松琴亭」を望む景
4.対岸から「笑意軒」を望む景
5.雁行する書院の景
6.「住吉の松」から、松琴亭を望む景
7.「真の飛石」の景
 できれば、重森の案内で名庭園を巡る旅なんかが体験できたら、どんなにすばらしいことか。いや、本書を手にこれらの庭園を巡ることができれば、十分にぜいたくなことだろう。


日本の10大庭園 (祥伝社新書)

日本の10大庭園 (祥伝社新書)