2006-05-01から1ヶ月間の記事一覧

吉行淳之介と倉橋由美子

吉行淳之介が好きだった。彼の過剰な自意識がなせる屈折した姿勢が好きだったのだ。(祝福を受けた主賓に似た姿勢で佇んでいる自分に気付くと彼は激しく舌打ちし、)。対して倉橋由美子は文体が好きだったのに彼女の姿勢は嫌いだった。自己陶酔に平気で溺れ…

東京の昔の風俗

吉行淳之介の「闇のなかの祝祭」を読んでいたら、夏女子社員の黒い脇毛が見えたと書かれていて、そのことに特別驚いていない。すると、1960年代に日本では、普通脇毛を処理しなかったのだろう。 1970年代はヒッピー文化の影響が強く、当時20代のカミさんも彼…

三岸節子と野見山暁治

三岸節子と野見山暁治が別々の著書で偶然同じことを言っていた。 二人ともフランスから日本に帰ってきたとき、こんなに湿っぽく色のないところでどんな絵を描いたらよいのだろうと途方にくれたという。 しかし実際には二人ともしっとりした色彩の優れた画家…

サム・フランシス

昔、サム・フランシスは輝いて見えた。 水墨画の影響を受けたという白い大きな色面が美しかった。 最近東京都現代美術館の常設展でサム・フランシスの壁面一杯の大きな作品4点を見た。 1室が彼の作品に囲まれているのだ。 それは驚くべき体験だった。 サム・…

ギュスターヴ・モロー

戦前、野見山暁治が芸大で学んだ頃、教授の言うとおりに描かなかった学生はその場で退学させられたという。 ギュスターヴ・モローはマチスとルオーを教えた。 この師と弟子には全く共通点がないように見える。 モローは神話の世界を美しく妖しく、ある種写実…