2015-01-01から1年間の記事一覧

里見蘭『ギャラリスト』を読む

里見蘭『ギャラリスト』(中央公論新社)を読む。著名な日本画画廊を経営する父親片瀬幸蔵から引き継いだ洋画の片瀬画廊を経営する片瀬真治が主人公。クリスティーズのオークションに父親の画廊が推している門馬岳雲の大作が13点出品されると知った。日本で…

東京の海抜(その2)

東京中心部の海抜。 東京メトロ半蔵門線・銀座線・千代田線 表参道駅:海抜33.7m 都営地下鉄大江戸線 国立競技場駅:海抜24.9m 東京メトロ千代田線 根津駅:海抜5.5m 東京メトロ日比谷線 小伝馬町駅:海抜4.7m 東京メトロ日比谷線 秋葉原駅:海抜4.6m 都営地…

菊地成孔『ユングのサウンドトラック』を読む

菊地成孔『ユングのサウンドトラック』(河出文庫)を読む。副題が「菊地成孔の映画と映画音楽の本」となっており、さらに〈ディレクターズ・カット版〉と謳っている。以前刊行された単行本を大幅に改訂したので、そう謳ったらしい。 菊地はジャズを主体とし…

吾妻ひでお『逃亡日記』を読む

吾妻ひでお『逃亡日記』(日本文芸社)を読む。文庫とは謳ってないないが判型は文庫本だ。吾妻は2005年に『失踪日記』で漫画三賞を受賞している。それは日本漫画家協会大賞、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、手塚治虫文化賞マンガ大賞の3つで、この3…

『芸術脳の科学』を読む

塚田稔『芸術脳の科学』(講談社ブルーバックス)を読む。副題が「脳の可塑性と創造性のダイナミズム」。題名から創作が生まれる脳のメカニズムが書かれていると思って読み始めた。「第1章 脳と創造」「第2章 再現的世界の役者たち――特徴抽出」「第3章 情報…

井上長三郎・井上照子展を見る

東京、板橋区立美術館で井上長三郎・井上照子展が開かれている(12月27日まで)。先月から開かれていたのに、終了間際になってやっと見てきた。やはりまとめて見られる回顧展は見るべきだ。 井上長三郎は東京都現代美術館に収蔵されている「東京裁判」は何度…

『翼ある夜 ツェランとキーファー』を読む

関口裕昭『翼ある夜 ツェランとキーファー』(みすず書房)を読む。久しぶりに重量級の本を読んだという思い。ドイツ文学者であり、ことにパウル・ツェランの研究者である著者が、ドイツ現代美術の重要な美術家アンゼルム・キーファーとツェランの関係を読み…

ポルトリブレ歳末蚤の市

東京新宿2丁目の画廊free art space ポルトリブレで「ポルトリブレ歳末蚤の市」が開かれている(12月27日まで)。ポルトリブレの画廊主平井勝正氏が作家などに呼びかけ、美術品あるいは民芸品などを展示販売している。高価な品はボナールの版画50万円、安価…

『つかこうへい正伝1968−1982』を読む

長谷川康夫『つかこうへい正伝1968−1982』(新潮社)を読む。550ページを超える分厚い伝記だ。ただ「1968−1982」となっているが、つかは1948年生まれで亡くなったのは2010年だった。長谷川はつかこうへいの芝居の出演者であり制作スタッフだった。つかより5…

2冊のエッセイ集を読む

2冊のエッセイ集を読んだ。まず阿川弘之『鮨 そのほか』(新潮文庫)を読んだ。本書の単行本は2013年に出版され、今年文庫化された。単行本は阿川の生前最後の著書らしい。文庫本裏表紙の惹句を引く。 見渡す限り桜満開の美しい情景が続く霊園――。志賀直哉の…

{美術]川越市立美術館の浅見貴子と高橋大輔を見る

埼玉県の川越市立美術館で「ペインティングの現在−−4人の平面作品から−−」が開かれている(12月23日まで)。その4人は、高橋大輔(1980〜)、荻野僚介(1970〜)、浅見貴子(1964〜)、樺山祐和(1958〜)で、いずれも埼玉県ゆかりの作家たちであるらしい…

シロバナタンポポとボケ

年末だけど、いつもの場所にシロバナタンポポのロゼッタ状態の株でも見られるかと行ってみると、寒い中痛々しいほどに小さなシロバナタンポポの花が咲き始めていた。ちょっと感激した。 付近を見まわすとボケの花も咲き始めている。どちらも午後遅く日陰の状…

井上長三郎「葬送曲」について

朝日新聞に井上長三郎の「葬送曲」が大きく紹介された(12月16日)。現在板橋区立美術館で「没後20年 井上長三郎・井上照子展」が開かれているからだろう。先週のNHK日曜美術館でもこの展覧会とこの絵が取り上げられていた。 その朝日新聞の記事から。執筆…

ギャラリー現の井上修策展「得体−漫然からの戯画−」を見る

東京銀座のギャラリー現で井上修策展「得体−漫然からの戯画−」が開かれている(12月26日まで)。画廊には6つの大きな巻紙が垂れ下がっている。そこには鉛筆で架空の動物が規則正しく描かれている。1列に5体。巻かれている端まで描かれていて、見えている…

神奈川県立近代美術館 鎌倉が来月閉館

神奈川県立近代美術館 鎌倉が来月閉館する。土地を借りている鎌倉八幡宮との契約が切れるからだという。それを特集して13日のNHK日曜美術館は「さようなら、わたしの美術館〜"カマキン"の65年〜」と題して、神奈川県立近代美術館 鎌倉の歴史や建物などを紹介…

藍画廊の葛生裕子展を見る

東京銀座の藍画廊で葛生裕子展が開かれている(12月22日まで)。葛生は1965年東京生まれ、1988年に多摩美術大学絵画科を卒業している。1986年にかねこあーとギャラリーで初個展をし、その後西瓜糖、コバヤシ画廊、藍画廊、ルナミ画廊、秋山画廊、モリスギャ…

会田綱雄の詩

小田久郎『戦後詩壇私史』(新潮社)を読んでいたら、会田綱雄について書かれていた。「26章 点鬼簿の詩人たち」の項に紹介されている。吉岡実の葬儀で小田が弔辞を読んだという。そして、「吉岡を失って現代詩の屋台骨が崩れたという喪失感をしゃべったが、…

伊達得夫『詩人たち ユリイカ抄』を読む

このところ詩人たちに関する本を読んでいる。平林敏彦『戦中戦後 詩的時代の証言 1935-1955』(思潮社)、田村隆一『若い荒地』(講談社文芸文庫)、小田久郎『戦後詩壇私史』(新潮社)と読んできた。続いて伊達得夫『詩人たち ユリイカ抄』(平凡社ライブ…

仕事の極意

私も20歳からもう半世紀近く働いてきた。その間に身につけた仕事の極意を公開したい。 まず重要なモットーを紹介する。 ・仕事に関しては「面倒」と言わない。 仕事というものは総て面倒なものなのだ。あえて面倒なことをして対価を得ている。仕事に対して面…

小田久郎『戦後詩壇私史』を読む

小田久郎『戦後詩壇私史』(新潮社)を読む。著者は『現代詩手帖』を発行している思潮社の社主。戦後からほぼ20年後までの詩壇の歴史を綴っている。優れた戦後詩の記録だ。小田は多くの詩人たちの記録、エッセイや雑誌記事などを引用し、自分の主観的記載で…

トキ・アートスペースの小松浩子展の過剰さがおもしろい

東京港区のトキ・アートスペースで小松浩子写真展が開かれている(12月13日まで)。小松は神奈川県生まれ、写真は金村修に学んでいる。初個展は今はもう閉廊したギャラリー山口で6年前の2009年だった。以来、ギャラリーQ、トキ・アートスペース、The White…

練馬区立美術館の「浜田浄の軌跡−重ねる、削る絵画ー」を見る

東京練馬区の練馬区立美術館で浜田浄展が開かれている(2016年2月7日まで)。浜田は1937年高知県生まれ。1961年に多摩美術大学油科を卒業している。1964年、東京杉並区のおぎくぼ画廊で初個展、以来数多くの個展を開いている。 作品の多くは合板に絵具を塗…

須藤靖のエッセイ「「青木まりこ」現象にみる科学の方法論」を読んで

東大出版会のPR誌『UP』12月号に須藤靖の「「青木まりこ」現象にみる科学の方法論」というエッセイが載っている。不定期連載の「注文の多い雑文」の32回目だ。なおこの「注文」は「ちゅうぶん」と読み、章末に注がたくさん列記されているのでこの題名になっ…

「わの会」展が始まった、そして前田哲明展も

神奈川県の平塚市美術館で「サラリーマンコレクターの知られざる名品 わの会」展が開かれている(2016年2月7日まで)。美術館のホームページより。 平塚市美術館では、「サラリーマンコレクターの知られざる名品 わの会」展を開催いたします。 この展覧会…

いりや画廊の小高一民彫刻展「空・母」を見る

東京台東区の地下鉄入谷駅近く、いりや画廊で小高一民彫刻展「空・母」が開かれている(12月12日まで)。小高は1967年、埼玉県加須市生まれ。1991年に東京芸術大学美術学部彫刻科を卒業し、さらに2005年に大正大学仏教学研究科真言学専攻修士課程を修了して…

『八月十五日の日記』を読む

永六輔 監修『八月十五日の日記』(講談社)を読む。正午にラジオで天皇の詔勅が放送され、ポツダム宣言を受け入れたことが発表された。その8月15日のほぼ100人の日記を集めたもの。日記の作者は大臣から軍人、政治家、作家、学者、俳優など多岐にわたってい…

道浦母都子『無援の抒情』を読む

道浦母都子『無援の抒情』(岩波同時代ライブラリー)をやっと読む。この著名な歌集をいままで読んでいなかった。道浦は1947年生まれ、私より1歳上の学生運動の闘士で歌人だ。70年安保のころで、仲間の闘士が東大闘争で逮捕されている。運動が終わったあと…

山本豊津『アートは資本主義の行方を予言する』を読む

山本豊津『アートは資本主義の行方を予言する』(PHP新書)を読む。副題が「画商が語る戦後70年の美術潮流」というもの、山本は東京画廊の2代目社長なのだ。山本豊津の父山本孝が1948年に銀座に数寄屋橋画廊を開き、1950年に東京画廊と名前を変えた。数寄…

桑沢デザイン研究所の堀由樹子を見る

東京渋谷の桑沢デザイン研究所でCSP3が開かれている(12月1日まで)。CSPとは「Creative Spiral Project」の略で、2013年から始めて今年が3回目になる。これは東京造形大学出身者で現在も活躍を続けている作家たちを取り上げたグループ展で、薄久保香、鈴…

坪内稔典『季語集』を読む

坪内稔典『季語集』(岩波新書)を読む。俳句の季語を300語取り上げ、その解説と例句を紹介している。初出は毎日新聞に連載したもの。新書にまとめるにあたって、さらに例句を2句追加している。 とても勉強になった。そういう意味では有意義な読書ではあっ…