トキ・アートスペースの小松浩子展の過剰さがおもしろい

 東京港区のトキ・アートスペースで小松浩子写真展が開かれている(12月13日まで)。小松は神奈川県生まれ、写真は金村修に学んでいる。初個展は今はもう閉廊したギャラリー山口で6年前の2009年だった。以来、ギャラリーQ、トキ・アートスペース、The Whiteなどで個展をすでに24回も開いている。ドイツのグループ展にも招かれたと言っていた。




 画廊に足を踏み入れるとカーテンのように大きなモノクロ写真が垂れ下がっている。それをすり抜けて奥まで進むと壁一面にこれまた大きなモノクロ写真が貼り巡らせてある。床にも無数の写真が置かれている。写真の上を歩いていいですよと言われて、おそるおそる足を踏み出す。この床の写真が約400枚。写真はすべてフィルムで撮影しバライタ紙に自分で焼き付けている。壁や垂れ下がっている大きな写真はロール紙のまま焼いている。
 その量に圧倒されて個々の写真をじっくり見る余裕がない。それでも見渡すと廃墟のようであったり資材置き場であったりといった場所を撮っている。床に置かれた四角い箱状のものは積み重ねられた写真を意味しているようだ。
 それにしても何という過剰さだろう! 過剰なのは写真の分量でありそれらを撮影し現像し焼き付けた行為の過剰さだ。なにより大量のプリント作業には人生の過半を費やしているのではないかと揶揄したくなるほどだ。40年前に新宿の写真ギャラリーCAMPで毎週開かれていた北島敬三の「東京特急」シリーズを思い出す。やはり全紙のモノクロ写真が壁一面に貼り付けられていた。まだ現像液だか定着液だかが強く匂っていたが、写真の量の激しさでは今回の小松の方が徹底している。
 小松が師事した金村修は、以前感心した別の写真作家も教えを受けたと言っていた。するとおそらく金村は名伯楽に違いない。
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小松浩子展「成分家族」
2015年12月7日(月)−12月13日(日)
11:30−19:00(日曜日は17:00まで)
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トキ・アートスペース
東京都渋谷区神宮前3-42-5 サイオンビル1F
電話03-3479-0332
http://homepage2.nifty.com/tokiart/
地下鉄銀座線外苑前駅から徒歩5分ほど
ワタリウム美術館近く