2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ギャラリー砂翁の葛生裕子展がとても良い

東京三越前のギャラリー砂翁で葛生裕子展が開かれている(8月8日まで)。これがとても良い。葛生は1965年東京生まれ、1988年に多摩美術大学絵画科を卒業している。1986年にかねこあーとギャラリーで初個展をし、その後西瓜糖、コバヤシ画廊、藍画廊、ルナ…

佐藤正午『きみは誤解している』を読む

佐藤正午『きみは誤解している』(岩波書店)を読む。先日、森巣博『賭けるゆえに我あり』というギャンブラーのノンフィクションを読み、ギャンブラーに興味を持ったことから本書を読んだ。これは競輪ファンの物語だ。選手ではなく車券を買う方の、ギャンブ…

ニエト・アルベルトの木版画がすばらしい

東京銀座の養清堂画廊で川村紗耶佳×Alberto NIETO展が開かれている(8月8日まで)。そのAlberto NIETO(ニエト アルベルト)の木版画がすばらしい。ニエトは1985年、ペルーのリマ市生まれ。父がペルー人で母が日本人。小学校3年のとき日本に来て、以来日…

井伏鱒二『文士の風貌』を読む

井伏鱒二『文士の風貌』(福武文庫)を読む。太宰治、小林秀雄、志賀直哉、尾崎一雄、永井龍雄、大岡昇平、三島由紀夫など56人の文士の横顔をスケッチしている。一人平均5ページ強と短い。前半は昭和初期に発行された『明治大正文學全集』(途中で『明治大正…

『ある都市のれきし 横浜:330年』を読む

先日紹介した万城目学・門井慶喜『ぼくらの近代建築デラックス!』(文春文庫)に、門井が横浜の街なみの歴史ではこの本が良いと薦めていた。 横浜の街なみの歴史に関しては『ある都市のれきし――横浜・330年』(北沢猛作、内山正画、福音館書店)がすばらし…

『超明解! 国語辞典』を読んで

今野真二『超明解! 国語辞典』(文春新書)を読む。読売新聞の書評欄で出口治明が推薦していた(6月7日)。 本書は、7つの小型国語辞典を辞書探偵(著者)がとことん調査したものである。一見無味乾燥とも思われる辞書の比較が、これほど楽しく面白い読み物…

『ぼくらの近代建築デラックス!』を読む

万城目学・門井慶喜『ぼくらの近代建築デラックス!』(文春文庫)を読む。二人の作家が大阪、京都、神戸、横浜、東京、そして台湾の近代建築を訪ねて語っている本。文藝春秋社の雑誌に連載したものを単行本化し、文庫化にあたって東京編の追加と台湾を付け…

校條剛『作家という病』がおもしろい

校條剛『作家という病』(講談社現代新書)を読む。これがとてもおもしろかった。校條は「めんじょう」と読む。新潮社の月刊雑誌『小説新潮』の編集部に29年間在籍し、うち9年間は編集長を務めた。 本書は21人の作家について、その人となりを表すようなエピ…

ギャルリー東京ユマニテbisの今実佐子展を見る

東京京橋のギャルリー東京ユマニテbisで今実佐子展が開かれている(7月25日まで)。今は1991年東京都生まれ、2014年に筑波大学芸術専門群総合造形領域を卒業し、現在同大学大学院に在籍している。 都内での個展は今回が初めて。今実佐子の特徴は紙に絵具の…

ギャラリイKの福井拓洋展を見る

東京京橋のギャラリイKで福井拓洋展が開かれている(8月1日まで)。これは毎年恒例の「画廊からの発言 新世代への視点2015」の一環として開かれているものだ。 福井は1986年静岡県生まれ、2010年に多摩美術大学彫刻学科を卒業し、2012年に同大学大学院美術…

成田龍一『戦後史入門』を読む

成田龍一『戦後史入門』(河出文庫)を読む。とてもやさしく書かれている歴史書という印象。そのはずで、末尾に次のように書かれている。 本書は2013年8月に刊行された 『戦後史の考え方・学び方――歴史って何だろう?』 (「14歳の世渡り術」シリーズ)を増…

「画廊からの発言−新世代への視点2015」

今日から始まる「画廊からの発言−新世代への視点2015」は、恒例の12軒の画廊が推薦する40歳以下の若手作家12人の個展だ。現代美術の代表的な貸画廊が選んだ作家たちだから見逃せない重要な企画で、7月20日から2週間開かれる(8月1日まで)。 12の画廊と…

ギャラリーJIKKAの多田圭佑展を見る

東京千代田区外神田のギャラリーJIKKAで多田圭佑展が開かれている(7月30日まで)。多田は1986年名古屋市生まれ、2010年に愛知県立芸術大学油画専攻を卒業し、2012年に同大学美術研究科博士前期課程を修了している。2007年名古屋造形大学で初個展、その後名…

ギャラリー・マルヒの高嶋英男個展「空壺の人」がおもしろい

東京文京区辺津のギャラリー・マルヒで高嶋英男個展「空壺の人」が開かれている(7月20日まで)。これがとてもおもしろい。高嶋は1981年東京生まれ、2010年に多摩美術大学工芸学科を卒業し、2012年に同大学大学院工芸専攻を修了、2014年に東京芸術大学大学…

山田宏一『美女と犯罪』を読む

山田宏一『美女と犯罪』(ハヤカワ文庫)を読む。正確なタイトルは『映画的なあまりに映画的な 美女と犯罪』という。映画をテーマにして女優たちを語っている。欧米の美人女優たちを一人一人彼女たちの主演した映画を絡めてていねいに紹介している。膨大な映…

柳家小三治『ま・く・ら』を読む

柳家小三治『ま・く・ら』(講談社文庫)を読む。小三治の落語の枕を集めたもの。枕って落語のイントロの部分でふつうそんなに長くはない。不思議に思ったら、独演会などの小三治の枕は長くて何十分も喋っていることが多いらしい。その音源を集めて活字に起…

桜切るバカ梅切らぬバカ

「桜切るバカ梅切らぬバカ」と言う。桜は剪定に弱く切り口から腐って枯れていく。だから切ってはいけない。例外的に富士桜は比較的剪定に強いので盆栽などに使われている。 さて、梅を切らないとどうなるか。写真は収穫放棄された梅の木。長いこと剪定など手…

原稿料の推測

朝日新聞に益田ミリが「オトナになった女子たちへ」というコラムを連載している。月に2回ほど掲載されるのだろうか。縦4段組み、左右が12センチくらいで自筆のイラストが入っている。先に読んだ中野翠の映画に関するエッセイ同様ゆるい文章だが。益田のこ…

森巣博『賭けるゆえに我あり』を読む

森巣博『賭けるゆえに我あり』(徳間書店)を読む。これが無茶苦茶おもしろかった。著者はプロの賭博士で海外のカシノで巨額の現金を賭け、その上がりで生活している。もう何十年もそんな生活をしているという。きわめて特殊な体験を積んでいて、その豊富で…

ギャラリー1/fの高橋理和展を見る

東京お茶の水のギャラリー1/fで高橋理和展を見る(7月18日まで)。高橋は1953年京都府舞鶴市生まれ、1972〜73年にスペインマドリッドプラド美術館において模写の勉強をしている。1977年東京造形大学美術学部油絵科卒業。個展は銀座のギャラリー手、ギャラ…

金井美恵子『映画、柔らかい肌。映画にさわる』を読む

金井美恵子エッセイ・コレクション『映画、柔らかい肌。映画にさわる』(平凡社)を読み終わった。4章が「映画と批評のことば」、5章が「映画から小説へ 1」として、山田宏一による金井美恵子へのインタヴュー、6章が同じく「映画から小説へ 2」として…

金井美恵子『映画、柔らかい肌。映画にさわる』から

金井美恵子『映画、柔らかい肌。映画にさわる』(平凡社)を読んでいる。金井美恵子エッセイ・コレクションの4巻。そのIII章「女優=男優」から。 いつもの長い構文が成功していて、きわめて長い文章なのに混乱することなく素直に読むことができ、官能的です…

酒井忠康『鞄に入れた本の話』を読む

酒井忠康『鞄に入れた本の話』(みすず書房)を読む。世田谷美術館長の酒井が通勤の折りなどに読んだ本を紹介するという趣向のエッセイ集。静岡新聞に連載したものをまとめている。副題が「私の美術書探索」とあり、とくに美術書に絞って書いている。 読む前…

『父 岸田劉生』を読む

岸田麗子『父 岸田劉生』(中公文庫)を読む。岸田劉生の絵「麗子像」のモデルだった長女の岸田麗子が亡くなる前に父のことを書いている。岸田劉生は麗子が15歳のとき旅先で38歳で亡くなった。麗子は48歳になって父のことを書き、しかし出版される直前にくも…

おそざわ歯科とは? そしてニホンカワウソについて

普段通らない道に「おそざわ歯科」と書かれた看板があった。初めて聞く名前だが平仮名だ。どんな字を当てるんだろう。もしかしたら「獺沢」かもしれないと思ったのは日本酒の獺祭を連想したからだ。 最近日本酒の獺祭(だっさい)という銘柄が売れているとい…

文京アートの「吉仲太造 没後30年展」を見る

東京八丁堀にある文京アートで「吉仲太造 没後30年展」が開かれた(7月3日まで)。吉仲太造は1928年京都市生まれ、小学校を卒業後京都市立美術工芸学校の受験に失敗する。1946年京都人文学園絵画部(のちの行動美術京都研究所)が設立され、研究生として学ぶ…

中野翠『映画の友人』を読む

中野翠『映画の友人』(ちくま文庫)を読む。映画評論家でコラムニストの中野の半生記を綴ったもの。浦和市に生まれて小中学生時代を過ごし、女子高から早稲田大学に進んだ。1946年=昭和21年生まれの団塊世代の初っ端で、学生運動の華やかだったころを経験…

なびす画廊の橋本倫展がすばらしい

東京銀座のなびす画廊で橋本倫展が開かれている(7月11日まで)。橋本は、1963年神奈川県横浜市生まれ、1986年に多摩美術大学美術学部油画先行を卒業し、1988年に同大学大学院美術研究科を修了している。同年村松画廊で初個展、ここなびす画廊では1994年以…

荒木経惟『天才と死』を読んで

荒木経惟『天才と死』(イースト新書)を読む。タイトルからは分からないが、これはアラーキーの対談集だった。北野武、赤塚不二夫、綾小路きみまろ、森山大道、末井昭ら5人と対談している。 しかしアラーキーは誰ともまともな会話をしないように見える。真…

いりや画廊の姫野亜也個展を見る

東京台東区の入谷駅近く、いりや画廊で姫野亜也個展が開かれている(7月4日まで)。姫野は1990年大分県生まれ、2012年に武蔵野美術大学彫刻科を卒業し、2014年に同大学大学院美術専攻を修了し、その年から同大学彫刻研究室に勤務している。 画廊のホームペ…