『ぼくらの近代建築デラックス!』を読む

 万城目学・門井慶喜『ぼくらの近代建築デラックス!』(文春文庫)を読む。二人の作家が大阪、京都、神戸、横浜、東京、そして台湾の近代建築を訪ねて語っている本。文藝春秋社の雑誌に連載したものを単行本化し、文庫化にあたって東京編の追加と台湾を付け加えた。
 単行本を上梓するにあたり、万城目がひとつだけ要望したのは「なるべく写真は小さめに」というものだった。それは写真を鑑賞して満足してしまうのではなく、ぜひ自分の足で現場に行って実物を確かめてほしいという願いがあったからだという。単行本は見ていないが、その要望は文庫でも踏襲されて、ときに2ページ見開き1点という写真はあるものの、概ね写真はとにかく小さい。
 一つの建物の紹介にあてられるページは約3ページほど。これは写真も含んでいる。二人の会話は短いなかに凝縮しているし、門井の薀蓄は半端なものではないので読んでいて楽しい。建物の選択は二人が交互に選んでいて、どれも興味深く語られている。実際に見に行きたいと思わせるものばかりだ。
 しかし、ページ数が少ない。建物に関する情報が少なすぎる。写真を見て満足するのではなく、ぜひ現場に行って確かめてほしい、と言ったって、そんなことのできる読者は1%未満にも足りないだろう。もっと写真を大きくたくさん掲載してほしかった。
 私たちはすでに藤森照信の「建築探偵シリーズ」を知っているし、藤森と山口晃の『日本建築集中講義』(淡交社)も読んでいる。それらに比べるとどうしても点が辛くなってしまうのは仕方ないだろう。
 いや、本書が有意義なのは疑うべくもない。こんな風に近代建築について紹介してくれる本はとても貴重だと思う。二人の語り口も洒脱でさすが作家同士の対談だ。とくに雑誌連載のあとで、特集版として台湾を訪ねて語っている章が充実している。雑誌連載時のページ数の縛りが取れたようで二人が存分に語っていて読み応えがあった。全編がこんな風だったらどんなにかよかったのに。


『日本建築集中講義』がすごく面白い!(2013年12月17日)