映画

橋本忍『複眼の映像』を読む

橋本忍『複眼の映像』(文藝春秋)を読む。副題が「私と黒澤明」、名脚本家橋本忍が黒澤との映画作りを語っている。これがとても面白い。 橋本は伊丹万作に師事し、伊丹が亡くなったあと、黒澤を紹介される。芥川龍之介の「薮の中」を脚本化して黒澤に見せる…

淀川長治『淀川長治映画ベスト10+α』を読む

淀川長治『淀川長治映画ベスト10+α』(河出文庫)を読む。1948年度から1997年度までの主に外国映画のベスト10が並べられ、一部日本映画のベスト10が並んでいる。解説は数行の簡単なもの。 そして「私のベスト5」と題した章は、1975年から1984年までの外国映…

篠田正浩監督『乾いた花』を見る

京橋の国立映画アーカイブで篠田正浩監督『乾いた花』を見る。主演が池辺良、相手役が加賀まりこ、原作が石原慎太郎。見終わって原作を50年ぶりに読む。 映画は面白かった。さすがは篠田正浩監督だ。インテリヤクザの話、映画も原作もインテリヤクザとは言っ…

山田洋次『映画をつくる』を読む

山田洋次『映画をつくる』(国民文庫)を読む。第1刷が1978年だから42年前の出版。この時山田洋次47歳、『男はつらいよ』も17作まで撮ったところだ。もう松竹のドル箱監督になっていた。松竹では大島渚と同期、ほかに篠田正浩、吉田喜重などがいた。 最初に…

吉田喜重監督作品『炎と女』を見る

シネマヴェーラ渋谷で吉田喜重監督作品『炎と女』を見る。1967年現代映画社制作、岡田茉莉子主演。監督の吉田喜重は東大仏文科出身、卒業論文はサルトルでサルトリアンだった。ここまでは大江健三郎と同じ経歴だったが、大江が四国の森の中の土俗的な村を作…

『第三の男』を見て読む

キャロル・リード監督の映画『第三の男』を見て、グレアム・グリーンの原作を読む。映画は2回目、小説は3回目だった。いつもは原作に比べて映画化されたものは劣ると思うのに、両方比べてみてこれは映画の方が優れていると思った。 小説には序文がついていて…

高松プロダクション・吾嬬撮影所跡

墨田区曳舟駅周辺を散歩していたら十間橋通りの一角に小さなプレートが目についた。「高松プロダクション・吾嬬撮影所跡」とある。そのプレートの文章を引く。 高松プロダクション・吾嬬撮影所跡 所在 墨田区京島三丁目62番 日本映画の製作は、日活、松竹な…

トルーマン・カポーティ『ティファニーで朝食を』を見て読む

トルーマン・カポーティ『ティファニーで朝食を』を見て読む。最初にオードリー・ヘップバーンが主演した映画を見た。オードリーの映画は50年以上前に『マイフェアレディ』と『ローマの休日』を見て以来だ。原作は龍口直太郎訳の新潮文庫を35年ほど前に読ん…

大林宣彦監督『時をかける少女』を見る

4月10日に大林宣彦監督が亡くなった。私は大林監督の映画を1本も見たことがなかった。あまり興味がなかったから。しかし亡くなってマスコミに追悼記事がいくつも紹介され、巨匠と書いているのもあった。 そんな折、日本テレビが大林作品を放映した。それで初…

黒澤明の『七人の侍』を見る

TOHOシネマズ錦糸町オリナスの「午前10時の映画館」で黒澤明監督の『七人の侍』を見る。『七人の侍』は先月BSプレミアムで放映されたばかりだが、劇場でみられるならそれに越したことはない。以前見たのはもう何十年も前になる。井上ひさしは何十回も見たら…

小林信彦『アメリカと戦いながら日本映画を観た』を読む

小林信彦『アメリカと戦いながら日本映画を観た』(朝日文庫)を読む。昭和7年生まれの著者が太平洋戦争に突入した頃から終戦のころまでどんな日本映画を観てきたかを語りながら、そのことで当時の世相を少年の眼で描いている。とても興味深い社会史になって…

大野和寿監督『歎異抄をひらく』を見る

むかし吉行淳之介の対談を読んだとき、吉行が映画館で映画が見られなくなったとこぼしていた。どうってことないシーンで泣いてしまうと。肩が震えると言ったのか、声が出てしまうと言ったのか忘れたが。 大野和寿監督のアニメ映画『歎異抄をひらく』を見る。…

ゴダールの映画『イメージの本』を見る

ゴダールの新作映画『イメージの本』をシネスイッチ銀座で見る。際立ったストーリーはなく、ほとんど全編古い映画の荒れたコピーの断片を繋いでいる。各々のシーンは短く、次々と別の映画のシーンに変わっていく。コラージュといっていいだろう。ただ古い映…

フリッツ・ラング監督『死刑執行人もまた死す』を見る

シネマヴェーラ渋谷でフリッツ・ラング監督特集が行われていた。そこで『死刑執行人もまた死す』を見た。この映画についてWikipediaでは、 舞台はナチス・ドイツ占領下のチェコスロバキアのプラハ。「死刑執行人」の異名でプラハ市民に恐れられていたベーメ…

『ジャコメッティ』を見る

映画『ジャコメッティ』を見る。スイスの世界的な彫刻家ジャコメッティを主人公にした映画で監督はスタンリー・トゥッチ。昨日の朝日新聞の夕刊に真魚八重子の映画評が掲載されていた。 彫刻家のジャコメッティは、油彩画やデッサンも多く残した。本作は彼が…

脚本家の早坂暁亡くなる

脚本家の早坂暁さんが亡くなった(12月16日=88歳)。吉永小百合主演の『夢千代日記』などの脚本を担当した。私は早坂の映画を見たことはなかったが、猫に関する印象的なエッセイを通じて関心を持っていた。それで、彼が山頭火に関する映画の企画を持ってい…

蓮實重彦『ハリウッド映画史講義』がおもしろい

蓮實重彦『ハリウッド映画史講義』(ちくま学芸文庫)を読む。副題が「翳りの歴史のために」というもので、これがなかなかおもしろかった。ひと言でいえばアメリカの「B級映画」の歴史を語っているのだ。 しかしB級というのは誤解されていて、A級とB級はある…

エドワード・ヤン監督『クー嶺街少年殺人事件』を見る

エドワード・ヤン監督『クー嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』を見る。(「クー」は牛編に古のつくりの漢字)1991年制作の台湾映画。236分、4時間弱の長編映画を1週間限定でシネスイッチ銀座で夕方6時から毎日1回だけ上映している(5月5日まで)。劇場のホ…

中条省平『フランス映画史の誘惑』を読む

中条省平『フランス映画史の誘惑』(集英社新書)を読む。とても良い本。フランス映画史なんて何冊も書かれていたような気がしていた。序章を読むとそうではないことが分かった。 ……わたしの知るかぎり、『フランス映画史』と銘うった書物は、これまで3冊あ…

菊地成孔『ユングのサウンドトラック』を読む

菊地成孔『ユングのサウンドトラック』(河出文庫)を読む。副題が「菊地成孔の映画と映画音楽の本」となっており、さらに〈ディレクターズ・カット版〉と謳っている。以前刊行された単行本を大幅に改訂したので、そう謳ったらしい。 菊地はジャズを主体とし…

世界を征服した4人の映画監督

淀川長治が世界を征服した4人の映画監督を紹介している。(『銀幕より愛をこめて』朝日新聞社)。「サイレントの時代」と題した章の中なので、サイレント映画の監督ということなのだろう。 (……)アメリカにはデビッド・ワーク・グリフィスという人と、セシ…

四方田犬彦『テロルと映画』がとても良い

四方田犬彦『テロルと映画』(中公新書)を読む。四方田は最初に、「テロリスムが人間に向かって何かを訴えるときには、つねに映像メディアを媒介とし、スペクタクルの形態をとる」という。そして、 スペクタクルとは、匿名の観客を前にして演じられる〈見世…

山田宏一『美女と犯罪』を読む

山田宏一『美女と犯罪』(ハヤカワ文庫)を読む。正確なタイトルは『映画的なあまりに映画的な 美女と犯罪』という。映画をテーマにして女優たちを語っている。欧米の美人女優たちを一人一人彼女たちの主演した映画を絡めてていねいに紹介している。膨大な映…

金井美恵子『映画、柔らかい肌。映画にさわる』を読む

金井美恵子エッセイ・コレクション『映画、柔らかい肌。映画にさわる』(平凡社)を読み終わった。4章が「映画と批評のことば」、5章が「映画から小説へ 1」として、山田宏一による金井美恵子へのインタヴュー、6章が同じく「映画から小説へ 2」として…

金井美恵子『映画、柔らかい肌。映画にさわる』から

金井美恵子『映画、柔らかい肌。映画にさわる』(平凡社)を読んでいる。金井美恵子エッセイ・コレクションの4巻。そのIII章「女優=男優」から。 いつもの長い構文が成功していて、きわめて長い文章なのに混乱することなく素直に読むことができ、官能的です…

中野翠『映画の友人』を読む

中野翠『映画の友人』(ちくま文庫)を読む。映画評論家でコラムニストの中野の半生記を綴ったもの。浦和市に生まれて小中学生時代を過ごし、女子高から早稲田大学に進んだ。1946年=昭和21年生まれの団塊世代の初っ端で、学生運動の華やかだったころを経験…

金井美恵子『映画、柔らかい肌。映画にさわる』から

金井美恵子『映画、柔らかい肌。映画にさわる』(平凡社)を読んでいる。その「II 愉しみはTVの彼方に、そして楽しみと日々」から、例によってまず金井の毒舌を。『溝口健二大映作品全集』と新藤兼人の『ある映画監督の生涯・溝口健二の記録』を見ながら、 …

金井美恵子エッセイコレクション4『映画、柔らかい肌。映画にさわる』

金井美恵子エッセイコレクション4『映画、柔らかい肌。映画にさわる』(平凡社)を読んでいる。厚い本で600ページを超えている。その第1章「映画、柔らかい肌」を読んだところだが、その2/3が「金井美恵子インタヴュー1982」となっていて、聞き手は映画…

『幕が上がる』を見る

本広克行監督の映画『幕が上がる』を見る。先に平田オリザ『演劇入門』(講談社現代新書)を読んだが、それを朝日新聞の書評欄で本広克行が推薦していた。その文章、 『演劇入門』を読んだのはアクション映画「少林少女」を撮り終えた頃。戯曲の書き方や役者…

ゴダールの『アルファビル』を見て

表参道のイメージフォーラムでゴダール監督の映画『アルファビル』を見た。ゴダールのSFで未来社会を描いている。1965年の公開というから50年前の作品だ。未来社会といいながら、「ディストピア的未来都市・アルファヴィルを描写するに当たり、セットやミニ…