映画

小林信彦『アメリカと戦いながら日本映画を観た』を読む

小林信彦『アメリカと戦いながら日本映画を観た』(朝日文庫)を読む。昭和7年生まれの著者が太平洋戦争に突入した頃から終戦のころまでどんな日本映画を観てきたかを語りながら、そのことで当時の世相を少年の眼で描いている。とても興味深い社会史になって…

大野和寿監督『歎異抄をひらく』を見る

むかし吉行淳之介の対談を読んだとき、吉行が映画館で映画が見られなくなったとこぼしていた。どうってことないシーンで泣いてしまうと。肩が震えると言ったのか、声が出てしまうと言ったのか忘れたが。 大野和寿監督のアニメ映画『歎異抄をひらく』を見る。…

ゴダールの映画『イメージの本』を見る

ゴダールの新作映画『イメージの本』をシネスイッチ銀座で見る。際立ったストーリーはなく、ほとんど全編古い映画の荒れたコピーの断片を繋いでいる。各々のシーンは短く、次々と別の映画のシーンに変わっていく。コラージュといっていいだろう。ただ古い映…

フリッツ・ラング監督『死刑執行人もまた死す』を見る

シネマヴェーラ渋谷でフリッツ・ラング監督特集が行われていた。そこで『死刑執行人もまた死す』を見た。この映画についてWikipediaでは、 舞台はナチス・ドイツ占領下のチェコスロバキアのプラハ。「死刑執行人」の異名でプラハ市民に恐れられていたベーメ…

『ジャコメッティ』を見る

映画『ジャコメッティ』を見る。スイスの世界的な彫刻家ジャコメッティを主人公にした映画で監督はスタンリー・トゥッチ。昨日の朝日新聞の夕刊に真魚八重子の映画評が掲載されていた。 彫刻家のジャコメッティは、油彩画やデッサンも多く残した。本作は彼が…

脚本家の早坂暁亡くなる

脚本家の早坂暁さんが亡くなった(12月16日=88歳)。吉永小百合主演の『夢千代日記』などの脚本を担当した。私は早坂の映画を見たことはなかったが、猫に関する印象的なエッセイを通じて関心を持っていた。それで、彼が山頭火に関する映画の企画を持ってい…

蓮實重彦『ハリウッド映画史講義』がおもしろい

蓮實重彦『ハリウッド映画史講義』(ちくま学芸文庫)を読む。副題が「翳りの歴史のために」というもので、これがなかなかおもしろかった。ひと言でいえばアメリカの「B級映画」の歴史を語っているのだ。 しかしB級というのは誤解されていて、A級とB級はある…

エドワード・ヤン監督『クー嶺街少年殺人事件』を見る

エドワード・ヤン監督『クー嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』を見る。(「クー」は牛編に古のつくりの漢字)1991年制作の台湾映画。236分、4時間弱の長編映画を1週間限定でシネスイッチ銀座で夕方6時から毎日1回だけ上映している(5月5日まで)。劇場のホ…

中条省平『フランス映画史の誘惑』を読む

中条省平『フランス映画史の誘惑』(集英社新書)を読む。とても良い本。フランス映画史なんて何冊も書かれていたような気がしていた。序章を読むとそうではないことが分かった。 ……わたしの知るかぎり、『フランス映画史』と銘うった書物は、これまで3冊あ…

菊地成孔『ユングのサウンドトラック』を読む

菊地成孔『ユングのサウンドトラック』(河出文庫)を読む。副題が「菊地成孔の映画と映画音楽の本」となっており、さらに〈ディレクターズ・カット版〉と謳っている。以前刊行された単行本を大幅に改訂したので、そう謳ったらしい。 菊地はジャズを主体とし…

世界を征服した4人の映画監督

淀川長治が世界を征服した4人の映画監督を紹介している。(『銀幕より愛をこめて』朝日新聞社)。「サイレントの時代」と題した章の中なので、サイレント映画の監督ということなのだろう。 (……)アメリカにはデビッド・ワーク・グリフィスという人と、セシ…

四方田犬彦『テロルと映画』がとても良い

四方田犬彦『テロルと映画』(中公新書)を読む。四方田は最初に、「テロリスムが人間に向かって何かを訴えるときには、つねに映像メディアを媒介とし、スペクタクルの形態をとる」という。そして、 スペクタクルとは、匿名の観客を前にして演じられる〈見世…

山田宏一『美女と犯罪』を読む

山田宏一『美女と犯罪』(ハヤカワ文庫)を読む。正確なタイトルは『映画的なあまりに映画的な 美女と犯罪』という。映画をテーマにして女優たちを語っている。欧米の美人女優たちを一人一人彼女たちの主演した映画を絡めてていねいに紹介している。膨大な映…

金井美恵子『映画、柔らかい肌。映画にさわる』を読む

金井美恵子エッセイ・コレクション『映画、柔らかい肌。映画にさわる』(平凡社)を読み終わった。4章が「映画と批評のことば」、5章が「映画から小説へ 1」として、山田宏一による金井美恵子へのインタヴュー、6章が同じく「映画から小説へ 2」として…

金井美恵子『映画、柔らかい肌。映画にさわる』から

金井美恵子『映画、柔らかい肌。映画にさわる』(平凡社)を読んでいる。金井美恵子エッセイ・コレクションの4巻。そのIII章「女優=男優」から。 いつもの長い構文が成功していて、きわめて長い文章なのに混乱することなく素直に読むことができ、官能的です…

中野翠『映画の友人』を読む

中野翠『映画の友人』(ちくま文庫)を読む。映画評論家でコラムニストの中野の半生記を綴ったもの。浦和市に生まれて小中学生時代を過ごし、女子高から早稲田大学に進んだ。1946年=昭和21年生まれの団塊世代の初っ端で、学生運動の華やかだったころを経験…

金井美恵子『映画、柔らかい肌。映画にさわる』から

金井美恵子『映画、柔らかい肌。映画にさわる』(平凡社)を読んでいる。その「II 愉しみはTVの彼方に、そして楽しみと日々」から、例によってまず金井の毒舌を。『溝口健二大映作品全集』と新藤兼人の『ある映画監督の生涯・溝口健二の記録』を見ながら、 …

金井美恵子エッセイコレクション4『映画、柔らかい肌。映画にさわる』

金井美恵子エッセイコレクション4『映画、柔らかい肌。映画にさわる』(平凡社)を読んでいる。厚い本で600ページを超えている。その第1章「映画、柔らかい肌」を読んだところだが、その2/3が「金井美恵子インタヴュー1982」となっていて、聞き手は映画…

『幕が上がる』を見る

本広克行監督の映画『幕が上がる』を見る。先に平田オリザ『演劇入門』(講談社現代新書)を読んだが、それを朝日新聞の書評欄で本広克行が推薦していた。その文章、 『演劇入門』を読んだのはアクション映画「少林少女」を撮り終えた頃。戯曲の書き方や役者…

ゴダールの『アルファビル』を見て

表参道のイメージフォーラムでゴダール監督の映画『アルファビル』を見た。ゴダールのSFで未来社会を描いている。1965年の公開というから50年前の作品だ。未来社会といいながら、「ディストピア的未来都市・アルファヴィルを描写するに当たり、セットやミニ…

原節子特集の『驟雨』を見る

ラピュタ阿佐ヶ谷で原節子特集をやっている。ここで成瀬巳喜男監督、原節子と佐野周二主演の映画『驟雨』を見る。岸田國士の戯曲が原作、脚本は水木洋子。1956年公開で、この時原は36歳、佐野は44歳だった。結婚4年後の夫婦の日常を描いている。 しかし、二…

『さらば、わが愛/覇王別姫』を見る喜び

TOHOシネマズをはじめ全国50余の映画館で「新・午前十時の映画祭」が開かれている。今年が第2回目で、年間25の映画を毎回2週間ずつ午前10時から1回だけ上映するという企画、料金は一律1,000円(学生500円)となっている。そのプログラムは往年の名画をデジ…

石橋蓮司映画祭を見て

池袋の映画館新文芸坐で先月石橋蓮司映画祭が開かれた。石橋が出演した映画20本を毎日日替わりで2本ずつ連続上映するという企画だった。私はそのうち、『わらびのこう』と『生きてみたいもう一度』を見た。どちらも恩地日出夫監督作品だ。 『わらびのこう』…

『舟を編む』を見て読む

三浦しをん『舟を編む』(光文社)を読む。3年前のベストセラーだ。これを原作にした映画をテレビで放映したのを録画しておいて見た。監督が石井裕也、日本アカデミー賞を受賞している。映画がとても良かったので、原作はどうだったのか知りたくて読んでみ…

塩田明彦『映画術』がすばらしい

塩田明彦『映画術』(イースト・プレス)を読む。副題が「その演出がなぜ心をつかむのか」といい、2012年の春から秋にかけて映画監督の塩田が映画美学校アクターズ・コース在校生に向けて行った連続講義を採録したもの。そうすると、俳優向けの講義と思われ…

淀川長治と吉行淳之介の対談

『吉行淳之介全集』(新潮社)の第11巻は「全恐怖対談」と題されていて、「恐怖対談」「恐怖・恐怖対談」「恐・恐・恐怖対談」「特別恐怖対談」の4篇が収録されている。対談相手は全部で40人。その「恐怖対談」に淀川長治が登場する。 淀川 あのね、7、8…

淀川長治から教えられた「愛」!

淀川長治『淀川長治の美学入門』(マドラ出版)からいろいろ教わった。やはりこの人はただ者じゃない。今回は「愛」について。 本当の愛というのは、10人の男、10人の女を知ったうえで、1人の男、1人の女を好きになること。なんの経験もなく、なんの失敗も…

『映画は語る』における淀川長治の語り口

淀川長治・山田宏一『映画は語る』(中央公論新社)は淀川に対する山田のインタビュー集だ。すばらしい映画談義が交わされている。淀川のクセのある語り口を紹介したい。 山田 最近の、というより、もうだいぶ前から、フランス映画には淀川さんがおっしゃら…

淀川長治・山田宏一『映画は語る』がすばらしい

淀川長治・山田宏一『映画は語る』(中央公論新社)がすばらしい。対談というよりも、山田の淀川へのインタビュー集。山田は淀川に6回のインタビューを行っている。それぞれテーマは「トリュフォー」「バスター・キートン」「(プロデューサーの)サミュエ…

山田宏一『NOUVELLE VAGUE 山田宏一写真集』を読む

山田宏一『NOUVELLE VAGUE 山田宏一写真集』(平凡社)を読む。2010年6月に山田宏一は水道橋駅近くのギャラリーメスタージャで写真展を開いた。その時のタイトルが"山田宏一写真展「NOUVELLE VAGUE(ヌーヴェル・ヴァーグ)」だった。映画評論家山田宏一が…