横尾忠則『創造&老年』(SBクリエイティブ)を読む。80歳前後の横尾忠則が、80歳以上の作家、画家、建築家、写真家、映画監督、作曲家らと老年と創造について対談した記録。具体的には、瀬戸内寂聴、磯崎新、野見山暁治、細江英公、金子兜太、李禹煥、佐藤愛子、山田洋次、一柳慧の9人。
私は興味深い順に、野見山暁治、李禹煥、一柳慧と読んでいったが、これが少しも面白くなかった。野見山が面白くないなんて初めてだ。
磯崎新との対談で横尾が群馬県の霊泉を紹介している。群馬県釈迦の霊泉(https://www.shakanoreisen.com)を43年間1日も欠かさずずっととって飲んでいるのだと。
俳人の金子兜太が戦時中トラック島にいて大尉だったとは知らなかった。トラック島の秋島で派遣隊長だったという。島のカナカ族と対等に付き合ったので、終戦後、他の部隊の隊長などがカナカ族に襲われたけれど、無事帰国することができた、と。私の小学校の担任宮嶋光男先生もトラック島に赴任していた。どこかで交差していただろうか。
横尾忠則 ……ゴッホを見たときに、僕はあのねっとりした絵の具をみてしまう。で、「なんだ、絵の具じゃないか」と。だからその目がね、その裏にまで行かないんですよ。その画面止まりになっちゃうんですよ。
それはもしかしたら、職人で終わっているのかもわかんないですね。
李禹煥 かもしれないし。確かに筆さばきは面白いし、それは独特なゴッホのスタイルでもあるし悪くないんだけれども、奥ゆかしさというか、深いところの……、使いたくないけど魂というか。そういうところには全然行ってない。
いや、ここらあたり疑義を挟みたいけど。
佐藤愛子との対談は、終始あの世のことばかりで、二人とも来世を信じていて違和感があった。そのことに二人とも全く疑念を抱いていないのだ。ばっかじゃなかろかと思ってしまう。
一柳慧が、「もう同世代のね、かつての友達がほとんどいないんですよね」と言っている。みな死んでしまったのだ。野見山暁治も別のところで同世代の友達は皆死んでしまったと言っていた。長生きすると友達がいなくなるんだ。だから長生きなんて碌な事はないだろう。
しかしながら、つまらない対談集だった。