歴史

筒井清忠編『昭和史講義【戦後文化篇】(下)』を読む

筒井清忠編『昭和史講義【戦後文化篇】(下)』(ちくま新書)を読む。本書戦後文化篇下巻は、映画などを主体に音楽やマンガやテレビなどを扱っている。いままで映画は監督を中心に見ていくという視点が多かったが、本書は映画会社から映画史を見ていくとい…

筒井清忠 編『昭和史講義 戦後文化篇(上)』を読む

筒井清忠 編『昭和史講義 戦後文化篇(上)』(ちくま新書)を読む。19のテーマについて各専門家がそれぞれ20ページほどを当てて解説している。この上巻は思想や文学などを取り上げ、下巻は主に映画を取り上げている。コンパクトにまとめられて大項目主義の…

奥泉光・加藤陽子『この国の戦争』を読む

奥泉光・加藤陽子『この国の戦争』(河出新書)を読む。副題が「太平洋戦争をどう読むか」とあり、作家の奥泉と日本近現代史が専門の加藤が対談している。これがとても有意義な読書だった。対談形式なので読みやすい。 奥泉光 アジア・太平洋戦争を考える準…

児玉博『堤清二 罪と業』を読む

児玉博『堤清二 罪と業』(文春文庫)を読む。副題が「最後の告白」。セゾングループの総帥堤清二は2013年に亡くなった。児玉博はその前年2012年に堤に7回に渡ってインタビューを行った。その結果が本書だが、単行本は堤が亡くなった3年後に発行された。 …

山田風太郎『同日同刻』を読む

山田風太郎『同日同刻』(ちくま文庫)を読む。副題が「太平洋戦争開戦の一日と終戦の十五日」というもの。解説に高井有一が書いている。 『同日同刻』は、太平洋戦争の最初の一日と、最後の十五日間に、日本、アメリカ、ヨーロッパの各地で起つた出来事を、…

高階秀爾『芸術のパトロンたち』を読む

高階秀爾『芸術のパトロンたち』(岩波新書)を読む。先日読んだ矢代幸雄『藝術のパトロン』が日本の美術コレクターを取り上げていたのに対し、本書はヨーロッパの美術パトロンたちを取り上げている。 ルネッサンス頃のイタリアフィレンツェの同業者組合が彫…

身内の語る西郷孤月のこと

西郷孤月は橋本雅邦の弟子、大観、春草、観山とともに四天王と呼ばれた。私の岳父の妻は西郷孤月と親戚で、その生家は西郷と言った。松本市の城山に西郷家の墓があり、そこは松本の武士の墓地だったという。西郷家を中心に松本市に西郷孤月を研究し顕彰する…

門田秀雄「美術史から消えた『労働者』」

2月に亡くなった門田秀雄さんの古いエッセイを再録する。これは13年前の2009年11月19日に掲載された(日本経済新聞朝刊)。忘れられた前衛美術家でプロレタリア美術家の岡本唐貴と入江比呂を紹介している。その「美術史から消えた『労働者』」全文を下に引く…

曹良奎とチャン・デュク・タオ、そしてマチス

曹良奎「密閉せる倉庫」 曹良奎という画家がいた。在日の画家だった。優れた絵を描いていたが、差別に苦しんだようで、北朝鮮への帰国運動のとき、北へ行ってしまった。曹自身は現在の韓国の済州島出身だったが。作品はほとんどを持って行って、洲之内徹や針…

北川央『大坂城』を読む

北川央『大坂城』(新潮新書)を読む。北川は大阪城天守閣館長、大坂城や城づくりなどに関する著書多数とある。大坂城に関するエピソードを50篇まとめたもので、豊富な知識から面白いネタを繰り出してくれる。 秀吉は大徳寺の総見院に信長の墓を作った。しか…

クレオパトラ一族の複雑な家族関係

昨日紹介したポーランドのノーベル文学賞受賞詩人ヴィスワヴァ・シンボルスカは、30年にわたり数百冊の本の書評を書いてきた。その一部が、『シンボルスカ詩集』(土曜美術社出版販売)に抄録されている。そこに取り上げられているアンナ・シヴィデルクヴナ…

司馬遼太郎『この国のかたち 六』を読む

司馬遼太郎『この国のかたち 六』(文春文庫)を読む。司馬が『文藝春秋』の巻頭言として連載していたものだが、「歴史のなかの海軍」を書いていて、その5回目を書いたところで亡くなってしまう。この優れた論考は未完で中断してしまった。 「歴史のなかの海…

片山杜秀『尊皇攘夷』を読む

片山杜秀『尊皇攘夷』(新潮選書)を読む。副題が「水戸学の四百年」、480頁近い大著だ。ページ数が多いのは、明治維新を用意した尊王攘夷について、水戸光圀から始めて丁寧に描いていることと、雑誌『新潮45』および『新潮』に連載したためで、『新潮45』の…

天下大将軍 地下女将軍

西武池袋線高麗駅前に赤い2本の柱が立っていて、大きく「天下大将軍 地下女将軍」と書かれている。これは何だろう。この地が朝鮮半島ゆかりの地であることは知っている。有名な高麗神社があるし、近くには九万八千社という不思議な名前の神社もある。九万も…

吾嬬神社へ初詣

初詣は墨田区の吾嬬神社へ行った。小さな神社で参拝客はきわめて少ない。御祭神は弟橘姫(オトタチバナヒメ)、日本武命(ヤマトタケル)の奥さんで、江戸湾を横断するとき荒れた海を鎮めるために身を犠牲にして海に飛び込んで日本武命を無事対岸へ送り届け…

高橋純 編訳『高田博厚=ロマン・ロラン往復書簡』を読む

高橋純 編訳『高田博厚=ロマン・ロラン往復書簡』(吉夏社)を読む。副題が「回想録『分水嶺』補遺」とあり、高田博厚の回想録『分水嶺』を補完する内容。 彫刻家高田博厚は戦前の1931年(昭和6年)に渡仏し、以来1957年(昭和32年)に帰国するまで26年間…

池上彰・佐藤優『真説 日本左翼史』を読む

池上彰・佐藤優『真説 日本左翼史』(講談社現代新書)を読む。副題が「戦後左派の源流 1945-1960」というもの。池上と佐藤が対談して、戦後から60年安保までの日本の左翼の動きを概括している。これがとてもよく整理されていて、教えられることが多々ある…

司馬遼太郎『この国のかたち 五』を読む

司馬遼太郎『この国のかたち 五』(文春文庫)を読む。雑誌『文藝春秋』の1994年から1995年の巻頭言として連載されたもの。本書では特に神道について7回も書き継いでいる。 ここで言っておかなければならないが、古神道には、神から現世の利をねだるという現…

渡辺信一郎『中華の成立』を読む

渡辺信一郎『中華の成立』(岩波新書)を読む。シリーズ「中国の歴史」の1巻目。この巻は「東アジアの文明が黎明を迎え、多元性が顕在化する過程を書」いている(シリーズ 中国の歴史のねらいより)。 今までの中国史の書き方と異なり、王朝区分で叙述するこ…

司馬遼太郎『この国のかたち 四』を読む

司馬遼太郎『この国のかたち 四』(文春文庫)を読む。1992年から1993年の2年間『文藝春秋』に連載した巻頭言をまとめたもの。単行本は26年前に出たものだが内容は古びていない。 この巻頭言は時事的なものではなく、日本の歴史、文化を毎回原稿用紙10枚ほど…

広中一成『後期日中戦争』を読む

広中一成『後期日中戦争』(角川新書)について、保坂正康が朝日新聞に書評を書いていた(6月12日付)。 日中戦争の8年余の期間は前半と後半に分かれる。太平洋戦争開始後の後半は、著者の指摘通り、太平洋戦争の陰に隠れ、精緻に検証されているとは言い難…

溝口睦子『アマテラスの誕生』を読む

溝口睦子『アマテラスの誕生』(岩波新書)を読む。副題が「古代王権の源流を探る」というもので、とても収穫の多い読書だった。 本書の惹句から、 戦前の日本で、有史以来の「国家神」「皇祖神」として報じられた女神「アマテラス」。しかしヤマト王権の時…

中沢新一『アースダイバー 神社編』を読む

中沢新一『アースダイバー 神社編』(講談社)を読む。これがめっぽう面白かった。中沢は全国の古い神社の歴史を探り、そこから日本の古層へとダイビングしていく。縄文から弥生~古墳時代の、歴史に書かれていない古い姿を掘り出していく。取り上げられてい…

日本一焼き肉店が多いまち

朝日新聞が長野県飯田市を「日本一焼き肉店が多いまち」と報じている(5月24日夕刊)。「飯田市 マトンもジビエも馬の腸も」と。 人口1万人あたりの焼き肉店数「日本一」――。全国の焼き肉店数ランキングが4月下旬に好評され、長野県飯田市が1位の座を守っ…

過疎の村、大平集落

新潮社の「とんぼの本」シリーズに『信州かくれ里 伊那谷を行く』という本があり、そこに「大平峠」という項目がある。大平峠は長野県の飯田市と木曽を結ぶ大平街道の途中にあり、そこに大平集落があった。それについて、 なまこ壁のある大きな土蔵、太さ40…

半藤一利『日本のいちばん長い日 決定版』を読む

半藤一利『日本のいちばん長い日 決定版』(文春文庫)を読む。昭和20年8月15日の前日8月14日の正午から15日の正午の玉音放送までの24時間を1時間刻みで描いている。およそ300人にもの当事者たちにインタビューを重ねて、大臣たちや軍人たちが終戦を巡って…

司馬遼太郎『この国のかたち 三』を読む

司馬遼太郎『この国のかたち 三』(文春文庫)を読む。司馬のエッセイは優れていて好きだ。司馬の小説はほとんど読んでこなかったけれど、『街道をゆく』は全43巻を2回通読したくらい好きなのだ。 『この国のかたち』は雑誌『文藝春秋』の巻頭言として連載し…

半藤一利『「昭和天皇実録」にみる開戦と終戦』を読む

半藤一利『「昭和天皇実録」にみる開戦と終戦』(岩波ブックレット)を読む。「昭和天皇実録」を読み込んで、開戦と終戦に関する昭和天皇の関与を分析している。実は1年半前にも読んでブログに紹介していたのに忘れていた。だが何度読んでも良い本だ。 いよ…

若井敏明『謎の九州王権』を読む

若井敏明『謎の九州王権』(祥伝社新書)を読む。大和王権の前に九州王権があったという主張。そういわれればすぐ古田武彦の九州王朝を連想する。若井も古田のこと十分は意識していて、「はじめに」で古田との違いを述べている。 ……古田武彦氏の九州王朝説と…

釈徹宗『天才 富永仲基』を読む

釈徹宗『天才 富永仲基』(新潮新書)を読む。副題が「独創の町人学者」とある。富永仲基は、江戸時代17世紀に大阪に醤油醸造業の息子として生まれ、懐徳堂に学んだが、病気のため31歳で亡くなっている。 何冊かの著書があるが、現在まで伝わるのは『出定後…