歴史
深作欣二の「死は御破算、それが核となって」を読んだ。週刊朝日偏『ひと、死に出あう』(朝日選書)に収められている一篇だ。本書には67人の死に関するエッセイが収録されている。 深作欣二はわが師山本弘と同い年の1930年生まれ。終戦に関して山本弘と似た…
中沢新一『古代から来た未来人 折口信夫 増補新版』(ちくま文庫)を読む。本書は、2008年にちくまプリマ―新書として刊行されたものに、「ムスビの神による人類教」と「天竜川という宝庫」を増補して文庫化したもの。私はそのちくまプリマ―新書を読んでいる…
今年も初詣は吾嬬神社と亀戸石井神社に行ってきた。吾嬬神社は墨田区、亀戸石井神社は江東区だけど、おそらく500メートルほどしか離れていない。どちらも縄文時代にさかのぼると思われる関東有数の古い神社だ。亀戸石井神社は先の戦争の東京大空襲で焼き払わ…
中川右介『昭和20年8月15日』(NHK出版新書)を読む。副題が「文化人たちは玉音放送をどう聞いたか」というもので、135人の敗戦体験を描いている。 作家、映画人(映画会社別)、演劇人、音楽家、マンガ家等々。 菊池寛、 敗因が、いろいろ云われているが、…
堀川理万子『いま、日本は戦争をしている』(小峰書店)を読む。副題が「太平洋戦争のときの子どもたち」で、戦争当時子どもだった人たち17人から話を聞いて、それを堀川が絵に起こしている。 食糧の買い出しに行って警官に咎められたり、空襲にあって防空壕…
本郷和人『承久の乱』(文春新書)を読む。これがけた外れに面白かった。源頼朝が鎌倉幕府を開き、その継承者である頼家、実朝が次々に北条によって排除され、一方実力をつけた後鳥羽上皇が兵をあげて鎌倉を撃とうとした。それを北条義時が徹底的に鎮圧した…
「国体」とは何かとchatGPTに聞いた 昭和天皇が終戦受諾の際に強くこだわった「国体(こくたい)」とは、 **「天皇を中心とした国家秩序・統治の根本原理」**のことです。 しかし、ここで重要なのは、昭和天皇が言う「国体」は、 「軍国主義」や「神がかった…
麻田雅文『日ソ戦争』(中公新書)を読む。もう発売以来1年半以上経っているのに書店に平積みにされていて売れているらしい。そのことは読んでみてよく分かった。まず日ソ戦争のことは詳しく知らなかったし、内容がきわめて興味深い。なにしろ長崎に原爆が…
広中一成『七三一部隊の日中戦争』(PHP新書)を読む。副題が「敵も味方も苦しめた細菌戦」。袖の惹句から、 日中戦争のさなか、人体実験や細菌兵器の開発と製造に携わったとされる関東軍防疫給水部、通称七三一部隊。組織の中心にいたのは、部隊長・石井四…
吉田裕『続・日本軍兵士』(中公新書)を読む。袖の惹句から、 先の大戦で230万人の軍人・軍属を喪った日本。死者の6割は戦闘ではなく戦病死による。この大量死の背景には、無理ある軍拡、「正面装備」以外の軽視、下位兵士に犠牲を強いる構造、兵士の生活…
原武史、菅孝行、磯前順一、島薗進、大澤真幸、片山杜秀『これからの天皇制』(春秋社)を読む。本書は法華コモンズ仏教学林が主催した特別講座の内容を書籍化したもの。 原武史は大正天皇や昭和天皇、皇后を論じた著書がある政治思想史学者だ。 菅孝行は過…
奥泉光・原武史『天皇問答』(河出新書)を読む。小説家の奥泉と日本政治思想史学者の原が天皇制を巡って対談している。原には『大正天皇』や『昭和天皇』、『象徴天皇の実像』などの著書がある。 明治新政府を作った元勲たちは天皇を「玉」であると考えてい…
網野善彦・吉本隆明・川村湊『歴史としての天皇制』(作品社)を読む。最初にそのタイトルの3人の鼎談があり、ついで網野善彦と川村湊の対談「列島と半島の社会史」が収録されている。分量としては後者の対談がほぼ2/3を占める。 吉本隆明が加わった鼎談で…
北野隆一『側近が見た昭和天皇』(幻冬舎新書)を読む。副題が「天皇の証言でたどる昭和史」。北野隆一は朝日新聞記者、戦後、宮内庁の初代長官を務めた田島道治が書いていた日記、そして戦前から戦中にかけて侍従長を務めた百武三郎の日記、それらが公開さ…
梯久美子『昭和の遺書』(中公文庫)を読む。芥川龍之介から始まり、2・26事件の首謀者磯部浅一、北一輝、太宰治、山本五十六、三島由紀夫、美空ひばりなど、50人以上の遺書を集めている。 2.26事件の首謀者・磯部浅一の遺書 悪臣どもの上奏した事をそのまゝ…
山本七平『一下級将校の見た帝国陸軍』(文春文庫)を読む。山本七平はイザヤ・ベンダサンの名前で『日本人とユダヤ人』を書いた人。青山学院高等商業学部を卒業し、そのため陸軍の幹部候補生として入隊する。下級将校である。 昭和19年6月、輸送船でフィリ…
野坂昭如『新編「終戦日記」を読む』(中公文庫)を読む。野坂昭如は昭和20年6月5日に神戸の家を空襲で焼け出され、8月15日は疎開していた福井県の農村で玉音放送を聞いた。 それで毎年6月5日と8月15日、空を見上げる。そして戦後、あの時大人たちはど…
小林文乃『グッバイ、レニングラード』(文藝春秋)を読む。副題が「ソ連崩壊から25年後の再訪」とある。小林文乃は10歳の時、テレビ局のドキュメンタリー企画に応募し、ソ連時代のモスクワに長期滞在した。2週間の取材を終えて帰国した直後、モスクワでクー…
神崎宣武『旅する神々』(角川選書)を読む。神崎は民俗学者で岡山県宇佐八幡神社宮司。本書では大国主、山幸彦、吉備津彦、倭姫命、倭建命の旅を取り上げている。 神話をやさしく嚙み砕いて紹介している。しかし、いずれも面白くなかった。一般に神話は荒唐…
片山杜秀・佐藤優『生き延びるための昭和100年史』(小学館新書)を読む。これが実に面白かった。片山杜秀は日本政治思想史研究者、佐藤優は元外務省のインテリジェンス。二人が、「敗戦の断絶と反復」、「大衆の誕生と変遷」、「天皇家の昭和100年」、「日…
井波律子『「三国志」を読む』(岩波現代文庫)を読む。曹操、劉備、孫権や諸葛孔明、関羽、張飛などが活躍する陳寿が書いた『三国志』、巷ではそれを翻案した『三国志演義』が有名だ。本書は正史としての『三国志』と、裴松之の注を、漢文、読み下し文、解…
中川毅『時を刻む湖』(岩波現代文庫)を読む。これは先月読んだ同じ著者の『人類と気候の10万年史』(講談社ブルーバックス)で紹介された事例、福井県の水月湖は「世界一正確な年代が分かる堆積物」が得られる湖だという、その調査研究を詳しく綴ったもの…
東京竹橋の東京国立近代美術館で「記録をひらく 記憶をつむぐ」が開かれている(10月26日まで)。同館のコレクションを中心に100点余の先の戦争前後に関する絵が展示されている。 この展覧会について、毎日新聞の「余禄」が書いている(2025年8月9日、朝刊…
原武史『日本政治思想史』(新潮選書)を読む。本書は放送大学の教科書を加筆改訂したもの。そのためか丁寧にやさしく書かれている。でありながら、丸山眞男の『日本政治思想史研究』に対して強く批判するなど、安易な啓蒙書とは全く違う。とくに西武線沿線…
岡本隆司『二十四史』(中公新書)を読む。中国の正史は史記、漢書、三国志、後漢書から始まって、元史、明史まで24が「正史」とされている。いずれも前王朝の歴史を次の王朝が国家をあげて編纂することが多かった。 二十四史と言っても、最初の4史以外はあ…
中川毅『人類と気候の10万年史』(講談社ブルーバックス)を読む。福井県の水月湖は「世界一正確な年代が分かる堆積物」が得られる湖だという。縞になった堆積物を年縞と呼び、水月湖の年縞は45メートルの厚さを持ち、それは7万年以上もの時間をカバーして…
東京銀座のギャラリー58で「戦後80年 1945年の記憶」が開かれている。今年は戦後80年という節目の年に当たる。本展では、戦後の日本を代表する5人の美術家を選び、それぞれの視点から戦争の記憶や体験を投影した作品を紹介している。 その5人は、赤瀬川原…
関川夏央『昭和時代回想』(中公文庫)を読む。副題が「私説昭和史3」で、これが面白かった。 「平凡パンチ」創刊号は1964年4月だったと関川は書く。 5人の青年がそこにいる。5人のうち4人は立っている。残ったひとりは左ハンドルのスポーツカーに乗って…
関川夏生『砂のように眠る』(中公文庫)を読む。副題が「私説昭和史1」、変わったつくりで短篇小説と評論が交互に6章ずつ並んでいる。小説は昭和30年代と40年代が時間的な舞台、そのときどきに作者とだいたい同じ年齢だった男の子、だが作者自身ではない…
井上寿一『新書 昭和史』(講談社現代新書)を読む。昭和史が好きだからつい手あたり次第読んでしまう。細部のエピソードが数多く拾い上げられている。そんなこともあってか378ページと新書としては分厚い。 一方、節目となる事件が簡単にしか触れられていな…