2017-11-01から1ヶ月間の記事一覧
古部族研究会 編『古代諏訪とミシャグジ祭政体の研究』(人間社文庫)を読む。ミシャグジ信仰について書かれた本が出たなんて嬉しい。古代諏訪の信仰については中沢新一も藤森照信も書いていたし、今井野菊の本を読んだこともあった。古代諏訪に石神信仰があ…
東京銀座のコバヤシ画廊で村上早展が開かれている(12月2日まで)。村上は1992年群馬県生まれ。2014年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科版画専攻を卒業し、2017年同大学大学院博士後期課程中退。2016年ワンダーウォール都庁で初個展、ついでコバヤシ画廊、東…
蓮實重彦『ハリウッド映画史講義』(ちくま学芸文庫)を読む。副題が「翳りの歴史のために」というもので、これがなかなかおもしろかった。ひと言でいえばアメリカの「B級映画」の歴史を語っているのだ。 しかしB級というのは誤解されていて、A級とB級はある…
東京銀座の広田美術で阿部ふみ展「―真夜中、深く―」が開かれている(12月2日まで)。阿部ふみは1980年東京生まれ、2007年に東京芸大美術学部油画専攻を卒業している。2011年みゆき画廊で初個展、その後広田美術で個展を繰り返し行っている。 阿部はいつも顔…
イリーナ・メジューエワ『ピアノの名曲』(講談社現代新書)を読む。副題が「聴きどころ 弾きどころ」で、まさにこのような内容。著者のメジューエワはロシアのゴーリキー生まれ。5歳よりピアノを始めモスクワの音楽大学で学んだあと、オランダロッテルダム…
カズオ・イシグロ『日の名残り』(ハヤカワepi文庫)を読む。イシグロは以前、『浮世の画家』と『夜想曲集』、『私を離さないで』を読んだが、『私を〜』には圧倒された。ノーベル文学賞受賞と聞いたとき驚いたが納得もした。 『日の名残り』は淡々と進行し…
横浜石川町のアトリエ・Kで吉岡まさみ展「秘密の記憶2017」が開かれている(11月25日まで)。吉岡は1956年、山形県生まれ。1981年に東京学芸大学教育学部美術科を卒業している。1982年に東京のかねこ・あーとGIで初個展、以来同画廊やときわ画廊、巷房などさ…
東京銀座のコバヤシ画廊で野沢二郎展が開かれている(11月25日まで)。野沢は茨城県生まれ、1982年に筑波大学大学院を修了している。これまで「VOCA展'97」や同年の「バングラデシュ. アジア美術ビエンエーレ」に参加し、2012年はDIC川村記念美術館の企画展…
上野千鶴子『また 身の下相談にお答えします』(朝日文庫)を読む。題名にあるとおり、前著『身の下相談にお答えします』(朝日文庫)の続編になる。上野は朝日新聞の土曜日beに毎週掲載される「悩みのるつぼ」という一種の人生相談の回答者を務めていて、ほ…
東京恵比寿の東京都写真美術館で長島有里枝展が開かれている(11月26日まで)。長島は1973年、東京都生まれ。武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科を卒業し、アメリカのカリフォルニア・インスティテュート・オブ・アーツのファインアート科写真専攻…
東京銀座のStepsギャラリーで中村宏太展「Miniscule」が開かれている。中村は1975年鎌倉市生まれ。1995年Storm King High School 卒業、1999年Syracuse University 油画卒業、2003年New York School of Visual Arts修士課程修了、2010年東京藝術大学大学院油…
ボンテンベッリ『鏡の前のチェス盤』(光文社古典新訳文庫)を読む。裏表紙の惹句から、 10歳の男の子が罰で閉じ込められた部屋で、古い鏡に映ったチェスの駒に誘われる。不思議な「向こうの世界」に入り込むと、そこには祖母や泥棒、若い男女らがいて……。(…
小林昌人・編『廣松渉 哲学小品集』(岩波同時代ライブラリー)を読む。廣松は難解な哲学者だが、これは雑誌などに掲載した小論を集めたもの。題名が硬いが、エッセイ集とした方が内容を表しているだろう。 「一度かいてみたい序文」という項で、ショーペン…
川端康成『たんぽぽ』(講談社文芸文庫)を読む。川端はほとんどを読んできたつもりでいたが、こんな作品があるなんて知らなかった。文庫本で183ページ、中編より少し長いくらいだが、未完である。雑誌に連載していたが亡くなったこと=自殺によって完成をみ…
東京京橋のギャラリイKで戸張花展が開かれている(11月25日まで)。これは毎年恒例の多摩美術大学大学院美術研究科彫刻専攻生選抜プロジェクトで、例年2人が選ばれてギャラリイKで2週間ずつ個展をする機会が与えられる。選ばれた優秀な学生の個展ということ…
東京銀座の藍画廊で瀧田亜子展が開かれている(11月18日まで)。瀧田は1972年東京都生まれ。なびす画廊での個展を中心に銀座の画廊で発表を繰り返してきた。今年7月になびす画廊が閉廊したため、今回から新しい空間での発表となった。そのためか作品も少し変…
東京銀座のコバヤシ画廊で西成田洋子展「記憶の領域2017」が開かれている(11月18日まで)。西成田は1953年茨城県生まれ、1987年より東京、水戸、ニューヨークなどでもう30回以上も個展を開いている。作品は大きな奇妙な立体で、古着などを縫い合わせて造形…
井上理津子『すごい古書店 変な図書館』(祥伝社新書)を読む。『日刊ゲンダイ』に連載したもので、東京を中心に85軒の古書店と32館の図書館を、それぞれ見開き2ページで紹介している。著者は『さいごの色街 飛田』を書いた人。 荻窪のささま書店。34坪に4万…
橋爪大三郎『性愛論』(河出文庫)を読む。これが大変難しくて、読み終わるのに普通の倍の時間がかかってしまった。でもおもしろかった。本書は1980年前後に書かれた論文をもとにしている。橋爪30代前半ころの仕事だ。その頃橋爪はこれらの論文をトレーシン…
ガッサーン・カナファーニー『ハイファに戻って/太陽の男たち』(河出文庫)を読む。カナファーニーは1972年に自動車に仕掛けられた爆弾によって36歳の若さで亡くなったパレスチナの作家。たった1冊この本を読んだことで、パレスチナの問題が生々しく迫って…
岡部企画プロデュース『追憶』を見る。紀伊国屋ホール、岡部耕大 作・演出。副題が「7人の女詐欺師」。昭和11年、賄賂を受け取って協力する軍人の大佐と結託した悪徳商人が密輸で儲けていたが、商人の一人が足を洗おうとして殺される。殺された商人と親しか…
昨日に引き続いて横浜トリエンナーレで印象に残ったいくつかの作品を紹介する。 オラファー・エリアソン 光にまつわる作品を通して、異なる組織や人々を繋げながら、環境、エネルギー、社会問題への具体的な実践を行う、とあるがどう作品と結びつくのかわか…
横浜トリエンナーレを見た。会期は長いと思っていたらもう最終日の3日前になっていた。あわてて横浜美術館へ向かう。たくさんの作品の中から印象に残ったものを2回にわたっていくつか紹介する。 ジョコ・アビアント とにかく大きい。これが小さかったら工芸…
池澤夏樹『この世界のぜんぶ』(中公文庫)を読む。池澤は河出書房新社発行の『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集全30巻』をタイトル通り個人で編集している。その『近現代詩歌』で池澤は穂村弘(短歌)と小澤實(俳句)とともに詩を選んでいる。その詩人の選…
橋爪大三郎/大澤真幸 他『社会学講義』(ちくま新書)を読む。大学新入生や高校生、あるいは社会人に社会学とは何かを教えてくれる入門書という体裁だ。もともとは1993年に『わかりたいあなたのための社会学・入門』から抜粋して補筆し、第5章は新たに書き…
先々月、ここに半藤一利『其角と楽しむ江戸俳句』(平凡社ライブラリー)を紹介したことがあった。読み終えて本を義父(娘の祖父94歳)に送ったところ、礼状をもらった。それをここに公開したい。 「其角と楽しむ江戸俳句」読了。「感想」を書かねば”お礼状”…
カルヴィーノ『まっぷたつの子爵』(岩波文庫)を読む。カルヴィーノは以前『冬の夜ひとりの旅人が』と『レ・コスミコミケ』を読んでいる。どちらも奇妙なほら話だった。 本書の時代はむかしトルコ人との戦争が行われていたころで、メダルド子爵は敵の大砲の…
五十嵐太郎『日本建築入門』(ちくま新書)を読む。副題が「近代と伝統」、全体を10の章に分け、「オリンピック」「万博」「屋根」「メタボリズム」「民衆」「岡本太郎」「原爆」「戦争」「皇居・宮殿」「国会議事堂」と、不思議な見出しでくくっている。 「…
小林敏明 編『哲学者廣松渉の告白的回想録』(河出書房新社)を読む。廣松渉は西田幾多郎と並んで日本で最も難解な哲学者だ。編者の小林敏明は廣松が名古屋大学で教えていたときの弟子で、もう一人東大で教えていたときの弟子が熊野純彦だ。本書は廣松が虎ノ…
以前読んだ橋本治+橋爪大三郎『だめだし日本語論』(太田出版)につぎのようにあった。 橋本 橋爪さんからも『これで古典がよくわかる』(ちくま文庫)について大学で講演をしてほしいとご依頼をいただいたことがあります。時間が合わずそれきりになってし…