上野千鶴子『また 身の下相談にお答えします』を読む

 上野千鶴子『また 身の下相談にお答えします』(朝日文庫)を読む。題名にあるとおり、前著『身の下相談にお答えします』(朝日文庫)の続編になる。上野は朝日新聞の土曜日beに毎週掲載される「悩みのるつぼ」という一種の人生相談の回答者を務めていて、ほかの3人とローテーションで回答している。毎月1回8年間回答者を務めてきて、もう100回を数えたという。最初の50回を『身の下相談にお答えします』にまとめ、今回その続きを本書として出版した。
 前著の質問は、「既婚女性と"やばい"感じです:30代男性」「私の性欲をどうしたらいいのか:59歳男性」「セックスレスで枯れそうです:35歳主婦」「性欲が強くて勉強できません:18歳女子」「性欲が強すぎて困ります:15歳男子」「妻との現場を娘に見られました:46歳男性」「30代の彼と別れられません:70歳主婦」等々"やばい"のが多くてなかなかおもしろかった。それに対して今回の質問は、「女装が好きな大学生の息子:50代主婦」「家事ハラ? の夫に困って」「体求める88歳の夫に対し:79歳妻」「離婚して恋がしたい:40代女性」など比較的温厚な質問が多かった。それだけ面白みに欠けるきらいがあった。その中の「離婚して恋がしたい:40代女性」について、以前ここに紹介したことがあったが、一部を再度載せてみたい。

相談者 女性 40代


 48歳女性、現在、離婚に向けて夫と別居しています。
 詳細は省きますが、理由はお互いの浮気とか借金問題ではありません。
 今、一番私が困っているのは「恋がしたい」ことです。(中略)
 とはいえ結婚はこりごりなので、婚活パーティーや相談所に行って結婚する気などさらさらありません。地域のサークルなどで知り合うのは、後々面倒なころになったら嫌なのでごめんです。仕事の休みの日に、少しおしゃれして食事をしたり、映画をみたり、小旅行に出かけたりするパートナーがほしいのです。(後略)

 上野千鶴子が回答している。わざわざ「浮気や借金問題ではない」と書いているところから、我慢の緒が切れるような何か決定的な離婚原因があったわけではないと言いたいのだろうと。その分だけ半世紀近く生きてきて、不全感に悩んでいるのだろうと。

 そこまではわかります。結婚はこりごり、も賢明です。が、その不全感をチャラにするのが、恋愛ですか。20代のギャルからの質問じゃあるまいし、いい年齢の大人の女の悩みとは思えません。
 恋愛ってしたことがないんですか。(中略)恋愛が人生を変えるなんて、小娘のような妄想をまだ持っているんですか。
 よく読むと、ほしいのは「休日におしゃれをして食事や映画に出かけ、小旅行する」程度の相手。これならつつましい望みです。そんなものを恋愛とカン違いしてはいけません。恋愛とはもっと自我に食い込む闘いです。欲望やエゴイズムなどがむき出しの、食ったり食われたりの関係を、今になって味わいたいのですか?
(中略)
 そんな恋愛で何もかも人生をリセットしたいという妄想を抱いているのでなければ、この程度のつつましい望みは、いくらでもかなえたらいいでしょう。友達以上恋人未満の異性をキープしておくことぐらい簡単です。え、どうすればいいですかって? 自分から誘えばいいんです。断られてもめげずに、あるいは断られたら次、また次と声をかければ。おつきあいしたければまめでなくては。その点、もてる男性はほんとにまめですね。
 再婚する気がないのなら、未婚の男性に限る必要もないでしょう。かえって既婚男性の方が、ナンバー2以下でいられて安心です。(後略)

 続編の『またまた 身の下相談にお答えします』が出るとすれば4年後の2021年になるのだろう。