2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧

東京の巨樹・名木

年末、書棚の整理をしていたら古い雑誌が出てきた。『緑と水のひろば』49号だ。平成19年9月発行とあるから12年前になる。「特集 巨樹・名木に会いに行こう!」と表紙にある。本書は東京都公園協会の発行で、内容も東京都内に限られている。 本書によると、巨…

竹森神社の由来

東京都中央区小伝馬町に竹森神社という小さな神社がある。神社の由来が書かれたものを写す。 小伝馬町三丁目の守護神である竹森神社は、江戸時代よりこの付近に竹やぶが多く、竹につながる町、竹職人の町ともいわれ、竹藪にちなんで竹森神社としたと言われて…

山本弘からの手紙

年末、書類の整理をしていたら、43年前の山本弘さんからの手紙が出てきた。その年1976年はアル中治療のため前年から入院していた飯田病院を1月に退院し、愛子さん(奥さん)によれば断酒している。(断酒はその後2年間も続いた)。断酒の結果、神経がピリピ…

朝日新聞書評委員が選ぶ「今年の3冊」

毎日新聞、読売新聞に続いて、朝日新聞書評委員が選ぶ「今年の3冊」が発表された(12月28日)。書評委員20人×3冊=60冊、その中から気になったものを挙げる。 石川健治(東京大学教授) 『高村光太郎の戦後』(中村稔著、青土社・2860円)本書は、己を虚しく…

深沢眞二『連句の教室』を読む

深沢眞二『連句の教室』(平凡社新書)を読む。深沢は和光大学の教授で、一般教養科目で連句を巻く授業をしていて、その一部始終を本にまとめたもの。初心者の学生たちに連句に参加させ、その結果で単位を与えるとしている。 初心者の学生たちに連句のルール…

井上ひさし『組曲虐殺』を読む

井上ひさし『組曲虐殺』(集英社)を読む。特高によって虐殺された小林多喜二を描いた戯曲。井上は『少年口伝隊一九四五』のように原爆投下後の悲惨な広島を、悲惨さを避けないで見事に作品化した優れた批判的な作品が多い。だから期待して読んだ。 小林多喜…

道浦母都子『女歌の百年』を読む

道浦母都子『女歌の百年』(岩波新書)を読む。最初に俵万智とその同時代の水原紫苑、米川千嘉子が取り上げられる。そして与謝野晶子から始まって、山川登美子、茅野雅子、九條武子、柳原白蓮、原阿佐緒、三ヶ島葦子、岡本かの子、中条ふみ子、齋藤史、葛原…

読売新聞読書委員が選ぶ2019年の3冊

毎日新聞に続いて読売新聞でも読書委員が選ぶ2019年の3冊というのを発表している(12月22日)。読書委員の人数が21人、3冊ずつ選んで63冊が挙げられているけれど、私が気になったのは3冊だけだった。なぜか昔から毎日新聞の書評には引っかかるものが多いのに…

毎日新聞書評委員による2019年この3冊(下)

毎日新聞の書評欄で「2019 この3冊」(下)として、書評委員に今年のベストを挙げてもらっている(2019年12月15日)。その中から気になったものを拾ってみる。 中村桂子(JT生命誌研究館長) 『進化の意外な順序 感情、意識、創造性と文化の起源』アントニオ…

野坂昭如『吾輩は猫が好き』を読む

野坂昭如『吾輩は猫が好き』(中公文庫)を読む。野坂がヒマラヤンの猫を5匹飼っていた頃、シベリアンハスキーのジジを散歩に連れ出した時に道路の植え込みでジジが仔猫をくわえてきた。野坂はその仔猫を拾って帰りチャーリーと名づける。しかし先住のヒマラ…

シェル美術賞展2019を見る

東京六本木の国立新美術館でシェル美術賞展2019が開かれている(12月23日まで)。ここにはグランプリの黒坂祐と審査員賞及び学生特別賞、それに審査員推薦作家のみ紹介する。 黒坂祐(グランプリ) 池田舞花(新藤淳審査員賞) 石川未来(角奈緒子審査員賞)…

「東京藝術大学大学院美術研究科博士審査展2019」を見る

東京藝術大学美術館で「東京藝術大学大学院美術研究科博士審査展2019」が開かれていた(12月18日まで)。その中の気になった作品を紹介する。 杉山佳「部屋曼陀羅」 Saki Fernando Cardoso 金丸遥 田内隆利 金孝真 さて、しかし見終わって全体にあまり面白く…

富岡幸一郎『生命と直感』を読む

富岡幸一郎『生命と直感』(アーツアンドクラフツ)を読む。副題が「よみがえる今西錦司」で、今西錦司の業績を再確認、再評価しようという書。今西錦司という生態学者、進化論者、巨大な知というべき人が亡くなってもう27年になる。あれだけ偉大だった人の…

うしお画廊恒例の「あなたのためのカレンダー展IV」が始まった

東京銀座のうしお画廊で恒例の「あなたのためのカレンダー展IV」が始まった(12月26日まで)。今年は270点の作品が並んでいる。 一部を紹介する。 関英司、由良麻由子 橋浦道子、永田由利子 関田比佐子、都丸志帆美、カジ・ギャスディン 伊藤彰規、上野明美…

藍画廊の上野茂都展「薩摩芋による彫刻」を見る

東京銀座の藍画廊で上野茂都展「薩摩芋による彫刻」が開かれている(12月21日まで)。上野は1986年にギャラリー葉で初個展、以来ギャラリー21+葉や藍画廊などで20数回個展を開いてきた。2013年までは武蔵野美術大学客員教授、その後多摩美術大学で非常勤講…

毎日新聞書評委員による2019年この3冊(上)

毎日新聞の書評欄で「2019 この3冊」(上)として、書評委員に今年のベストを挙げてもらっている(2019年12月8日)。その中から気になったものを拾ってみる。 荒川洋治(現代詩作家) 『いやな感じ』高見順著(共和国・2970円)本書は、高見順(1907-1965)…

曳舟駅周辺の画廊を回る

東京墨田区曳舟駅周辺にいくつもの画廊がオープンしている。その中のあをば荘、ギャラリーTOWED、トークン アート センターを回ってきた。 あをば荘では「堀江たくみと四井雄大の展でのふるまい」が開かれている(12月17日まで)。堀江は1988年大阪府生まれ…

穂村弘『短歌ください』を読む

穂村弘『短歌ください』(メディアファクトリー)を読む。雑誌『ダ・ヴィンチ』誌上で短歌を募集し、応募された短歌を穂村が選びコメントしている。 面白い作品を拾ってみる。 好きでしょ、蛇口。だって飛びでているとこが三つもあるし、光っているわ (陣崎…

穂村弘=監修『はじめての短歌』を読む

穂村弘=監修『はじめての短歌』(成美堂出版)を読む。穂村は日経新聞の短歌欄の選者をしている。そこに送られてきた短歌を例にとってそれを改悪などして、良い短歌悪い短歌を解説している。 空き巣でも入ったのかと思うほどわたしの部屋はそういう状態 平…

小林信彦『和菓子屋の息子』を読む

小林信彦『和菓子屋の息子』(新潮社)を読む。副題が「ある自伝的試み」とある。小林の生家は京保年間創業の老舗の和菓子屋だった。店舗兼工場兼住宅は両国にあった。地名が変わって今は東日本橋という。現在の両国は昔は東両国と言った。戦前東京の盛り場…

ギャラリー川船の「歳末正札市」が始まった

東京京橋のギャラリー川船で「歳末正札市」が始まった(12月14日まで)。160点の作品が画廊の壁を覆っている。いずれも大変安い価格が付けられている。 一例をあげると、青木野枝のオブジェがあるがこれは24万円、今西中通のデッサン、鶴岡政男のパステル画…

山本弘の作品解説(94)(題不詳)

山本弘(題不詳)、油彩、F4号(24.0cm×33.5cm) 1976年制作。山本弘46歳。最晩年の作品になる。それにしてはこの単純な構図は何だろう。キャンバスの裏には山本以外の筆跡で「静物」とある。画面の右下には「ヒロシ」とサインがされている。この片仮名のサ…

松本元・松沢哲郎『ぼくたちはこうして学者になった』を読む

松本元・松沢哲郎『ぼくたちはこうして学者になった』(岩波現代文庫)を読む。副題が「脳・チンパンジー・人間」という脳科学者松本と霊長類学者松沢の対談集。二人の優れた学者が子供時代から小中高校を経てそれぞれ東大、京大に入り、自分の研究テーマを…

亀戸アートセンターへ行ってみた

東京亀戸に亀戸アートセンターという現代美術のギャラリーがあることを知って、初めて訪ねてきた。現在ホリグチシンゴ個展が開かれている(12月22日まで)。ホリグチは1993年京都市生まれ、多摩美術大学絵画学科日本画研究領域終了、2017年にガレリア青猫で…

坂本砂南+鈴木半酔『はじめての連句』を読む

坂本砂南+鈴木半酔『はじめての連句』(木魂社)を読む。来年の年賀状の文面を考えていて、10年前に義父からいただいた年賀状にあった俳句を使わせてもらおうと思った。しかしそれだけでは芸がないと考えて、連句のように脇を付けようと思った。だが、連句…

若松英輔『詩集 幸福論』と『詩集 燃える水滴』を読む

若松英輔『詩集 幸福論』と『詩集 燃える水滴』(どちらも亜紀書房)を読む。荒川洋治が『霧中の読書』(みすず書房)で若松の詩について、「素朴なのはいいが、ものの見方がすこぶる単純。ほんとうはあまりものを考えない人なのではないかと思った」と書い…

JINEN ギャラリーの奥澤華展が興味深い

東京小伝馬町のJINEN ギャラリーで奥澤華展が開かれている(12月15日まで)。奥澤は1992年三重県生まれ、2016年東京藝術大学美術学部工芸科彫金専攻卒業、2019年金沢卯辰山工芸工房金工工房を修了した。2017年JINENギャラリーで初個展、以来今回が3日目にな…

荒川洋治「美代子、石を投げなさい」

荒川洋治が芸術院会員に選ばれた。会員には年間250万円の報酬が出る。詩人というおそらくは裕福ではない優れた詩人のためにそのことを喜びたい。それで私の好きな荒川の詩「美代子、石を投げなさい」を紹介したい。(以下、全文) 美代子、石を投げなさい 宮…

山本弘の作品解説(93)「面」

山本弘「面」、油彩、サムホール(SM)(22.8cm×15.8cm) 1964年10月制作。山本弘34歳。中期の作品になる。ちょうど東京オリンピックが開催されていた頃だ。山本は当時すでに脳血栓の後遺症で手足が不自由になっていたのではないか。 小さな画面に般若の面を…