2017-12-01から1ヶ月間の記事一覧

今泉雄四郎さんの思い出

10年ほど前に、今泉雄四郎さんのことをブログに書いた。 私はもう15年来、銀座、京橋、その他の地域の画廊を回るのを週課(日課でなく週ごとだから)としている。およそ年間2,000件の個展やグループ展を見て回っている。しかし上には上があって、奇麻魔美術…

駅のアナウンス

駅のアナウンスが英語で「野郎ライン」て言っているように聞こえる。娘に話したら、後日、あれは「イエローライン」だよって教えてくれた。そういえば、日本語で「安全のため黄色い点字ブロックの内側までお下がりください」と言っている。こう言っているの…

星新一『ボッコちゃん』を読んで

星新一『ボッコちゃん』(新潮文庫)を読む。1971年に初版が発行されて以来、私が購入した昨年8月発行のものですでに109刷りを重ねている。すごい人気だ! 星新一を読んだのは高校生のころで、面白いとは思ったものの、以来手に取ったことはなかった。今回読…

執筆という行為自体が考える行為(再録)

ブログを書く時間がないので、以下、昔書いたのを再録する。 ルイーズ・バレット/小松淳子・訳『野性の知能』(インターシフト)に執筆という行為について興味深いことが書かれている。 ……言語は私たちにコミュニケーション能力を与えるものだし、私たちの…

おこげという植物

私が育った長野県の飯田地方は昆虫食のセンターでもあるが、「おこげ」という灌木の新芽をお浸しにして食べていた。春芽吹いた時、それを摘んでお浸しにする。ちょっとでも葉が大きくなると硬くなって食べられない。だから食べられるのはほんの短い期間だ。 …

平松洋子の『野蛮な読書』を読む

平松洋子の『野蛮な読書』(集英社文庫)を読む。雑誌『すばる』にほぼ毎月連載したもので、本の紹介をエッセイの形で書いている。連載1回目はちょっとリキが入っている感じだったが、2回目以降は落ち着いて書いている。新刊書ではなく、気になった本を取り…

鷲田清一のパンチラ論

鷲田清一は元大阪大学の学長で、現象学が専門の哲学者だ。パンチラ論なんていう下品な論文など書くはずがない。しかし「文化装置としてのファッション」という小冊子があるし、最先端の流行の洋服も着こなしていた。ファッションに深い関心を持っていのは事…

古部族研究会 編『古諏訪の祭祀と氏族』を読む

古部族研究会 編『古諏訪の祭祀と氏族』(人間社文庫)を読む。先日紹介した「日本原初考」シリーズの2冊目にあたる。その1冊目は『古代諏訪とミシャグジ祭政体の研究』だった。古代諏訪の原始信仰を研究し、古代日本の政治体制を探っている。 古部族研究会…

ポルトリブレ「蚤の市 Last Waltz」が始まる

新宿2丁目のフリーアートスペースのポルトリブレで「蚤の市 Last Waltz」が始まった(12月28日まで)。ラスト・ワルツと銘打ったのは訳がある。2005年4月にオープンしたポルトリブレだが、いよいよビルが建て替えられることになって画廊を閉じなければならな…

脚本家の早坂暁亡くなる

脚本家の早坂暁さんが亡くなった(12月16日=88歳)。吉永小百合主演の『夢千代日記』などの脚本を担当した。私は早坂の映画を見たことはなかったが、猫に関する印象的なエッセイを通じて関心を持っていた。それで、彼が山頭火に関する映画の企画を持ってい…

苅部直『日本思想史への道案内』を読む

苅部直『日本思想史への道案内』(NTT出版)を読む。見出しを拾うと全体の構成が見える。「日本神話」をめぐって/『神皇正統記』の思想/武士の倫理をどうとらえるか/戦国時代の「天」とキリシタン/儒学と徳川社会/「古学」へのまなざし/国学思想と近代…

ギャラリー現の井上修策展の思い出

銀座にこの夏前に閉廊したギャラリー現という画廊があった。今の時期になると毎年井上修策さんの個展が開かれていた。もう13,4回はやったのではないか。ちょうど11年前は針金で作った小さなキリスト像1,000体を画廊に吊り下げていた。キリストの大きさは身長…

佐藤春夫『南方熊楠』を読む

佐藤春夫『南方熊楠』(河出文庫)を読む。南方は柳田国男と並ぶ民俗学の大御所だ。民俗学以外にも植物学や粘菌などの研究で名高い。同時に奇人変人でも類がないほどだった。佐藤は同じ和歌山県出身の南方を戦後間もなくの1952年に伝記にまとめている。 南方…

うしお画廊でカレンダー展が開かれている

東京銀座のうしお画廊で「あなたのためのカレンダー展II」が開かれている(12月16日まで)。画廊では「あなたの好きな絵を選んでカレンダーを作ってみませんか?」と提案している。 ギャラリー空間に小さな作品がぎっしり展示されている。155人の作家たちの2…

ギャラリー川船で「歳末正札市展」が始まった

東京京橋のギャラリー川船で「歳末正札市展」が始まった。タイトル通りのきわめて安価な即売会だ。ざっと130点ほどが四囲の壁面を埋め尽くしている。私の好きな野見山暁治に限っても、6号の油彩が53万円で、段ボールの立体が45万円、ドローイングは3万円とな…

鹿島茂『病膏肓に入る』を読んで

鹿島茂『病膏肓に入る』(生活の友社)を読む。副題が「鹿島茂の何でもコレクション」とあり、鹿島のコレクションを1ページのカラー写真で示し、それに関するエッセイを3ページにわたって書いている。肖像画から、ロダンの胸像のブロンズ作品(11万円)、独…

ギャラリー古今の瀧田亜子個展「連続する風景2013−2017」を見る

東京大田区洗足池のギャラリー古今で瀧田亜子個展「連続する風景2013−2017」が開かれている(12月17日まで)。瀧田は1972年東京都生まれ。なびす画廊での個展を中心に銀座の画廊で発表を繰り返してきた。先月銀座の藍画廊で個展をやったのに続いて今年3回目…

アーサー・ビナードの危惧

アメリカ出身の詩人アーサー・ビナードが「日本語は破滅に向かっている」と危惧している記事が毎日新聞に掲載されていた(2017年11月29日)。 大好きな宮沢賢治の詩など美しい日本語がいつまでも残ってほしいと願うビナードさんにとって一番の気がかりは日本…

私の履歴書

誰からも要望はないが、私の履歴書を書いてみる。 1948年(昭和23年)長野県下伊那郡喬木村生まれ。同郷の偉人に椋鳩十がいる。母の実家のすぐ近所の出身だ。母が子どものころ、長髪の大学生で、ひょうひょうと歩いていたという。継母なる人と折り合いが悪く…

井上ひさし『ブラウン監獄の四季』を読む

井上ひさし『ブラウン監獄の四季』(河出文庫)を読む。井上は24歳から37歳までテレビの世界で台本作者として仕事をしてきた。NHKの教育テレビの仕事が多かったという。テレビの仕事は「細々と露命をつなぐ賃仕事」という感じがつきまとって離れないと言い、…

ギャラリーなつかの濱田富貴展「混沌」を見る

東京京橋のギャラリーなつかで濱田富貴展「混沌」が開かれている(12月23日まで)。濱田は1972年福岡県生まれ、1998年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科版画コースを卒業し、2000年に同大学大学院造形研究科美術専攻版画コースを修了している。その後、カナ…

私のブログが4,000回を数えた

私のこのブログも、11月30日で4,000回の投稿を数えた。2006年の3月から始めたのだったが、その半年後からはほぼ毎日書いている。もう12年になる。 直近の200日分を分析してみた。基本的に1日1テーマとしていて、本の紹介が一番多く、90日ほどになっている。…

サンモールスタジオで『二階の女』を見る

新宿のサンモールスタジオで山上優演出の『二階の女』を見る。獅子文六原作、飯沢匡脚本。役者はNLTの団員を中心に文学座や青年座などから集めている。 「あらすじ」をパンフレットから引く。 時代は昭和13年(1938)から16年(1941)の開戦の朝まで。東京、…

加賀乙彦『加賀乙彦 自伝』を読む

加賀乙彦『加賀乙彦 自伝』(集英社)を読む。「あとがき」に「わが生涯についての、増子信一さんの問いに対して私が正直に答え、それに註をつけ写真を補って成ったものである。結果として、ありのままの自伝になった」と書いている。一種の聞き書きだろう。…

池田清彦『進化論の最前線』を読む

池田清彦『進化論の最前線』(インターナショナル新書)を読む。聞きなれない新書だが、今年1月に創刊した集英社インターナショナルの新しい新書名だ。池田清彦は構造主義進化論を提唱している生物学者。本書は出版された月に購入したが、池田は地球が温暖化…