新宿のサンモールスタジオで山上優演出の『二階の女』を見る。獅子文六原作、飯沢匡脚本。役者はNLTの団員を中心に文学座や青年座などから集めている。
「あらすじ」をパンフレットから引く。
時代は昭和13年(1938)から16年(1941)の開戦の朝まで。東京、千駄ヶ谷の貸間に暮らす歴史家の山崎久彌を旧星川藩主の末裔星川侯爵が訪ねてくる。侯爵は久弥に星川藩の藩史の編纂を依頼する。侯爵は史実通り書いてほしいと言うが、藩史刊行委員会の会長は、国体明徴を唱える予備役大佐の黒川男爵だ。
侯爵が帰ったあと、伯母が山崎の結婚話を強引に進めてくる。芝居は山崎が住む貸間の和室だけで進められていく。妻のつね子と和室で暮らすが、研究執筆は二階で行っている。折大学の助手の中野まつが研究の手伝いに来二人は二階にこもることになる。終日研究に没頭する夫に対して、妻が嫉妬し、二階に女を連れ込んでいるのではないかと疑う。
やがて戦争の影響で藩史の編纂が打ち切られる。助手のつね子はいいなずけと満州へ移住すると去っていく。山崎はつね子と離婚する。
昭和16年12月8日ついに日米開戦。二階から見知らぬ女が下りてくる。
ほとんど貸間の和室だけが舞台だ。背景に二階へ続く階段が薄く透けて見えるくらい。大きな事件はなくむしろ台詞劇に近いくらい。地味な芝居だが、芝居のテンポが良くて、また役者たちが巧く間然することなく、芝居は進行する。