2018-05-01から1ヶ月間の記事一覧

姫乃たま『職業としての地下アイドル』を読む

姫乃たま『職業としての地下アイドル』(朝日新書)を読む。帯に宮台真司が推薦文を寄せている。 現役地下アイドルが幾多の数値データを、自分の実存を賭けて解釈していく本書は、狭義の「地下アイドル本」をはるかに超えて、芸能の歴史と本質への再考を迫る…

野見山暁治『みんな忘れた』を読む

野見山暁治『みんな忘れた』(平凡社)を読む。平凡社の雑誌『こころ』に連載されたエッセイをまとめたものだろう。亡くなった22人の知人の思い出を書いている。一人当たりたった6ページの分量で。こんなに短い文章でどうしてこんなに深い感動を覚える文章が…

黒田龍之助『世界のことばアイウエオ』を読む

黒田龍之助『世界のことばアイウエオ』(ちくま文庫)を読む。世界の100の言葉を見開き2ページでエッセイ風にまとめている。配列はアイウエオ順で、アイスランド語から始まってアイヌ語、アイルランド語と続き、ルーマニア語、レト・ロマンス語、そしてロシ…

山口晃『すゞしろ日記 参』を読む

山口晃『すゞしろ日記 参』(羽鳥書店)を読む(見る)。山口は東京大学出版会のPR誌『UP』にこのタイトルで毎月マンガを連載していて、もうそれが今月5月号で158回になっている。つまり13年間続いているのだ。それを50回ごとに単行本にまとめている。本書は…

上野公園さつきフェスティバルを見る

上野公園でさつきフェスティバルが開かれている(5月28日まで)。個々の具体的な樹齢は分からないが、幹回りを見ればみな100年以上なのだろう。見事というほかはない。 カレル・チャペックがイギリスの庭園の芝生作りについて『園芸家12カ月』で書いている。…

内藤啓子『赤毛のなっちゅん』を読む

内藤啓子『赤毛のなっちゅん』(中央公論新社)を読む。副題が「宝塚を愛し、舞台に生きた妹・大浦みずきに」とあり、宝塚のトップ俳優だった大浦みずきについて、その一生を姉の内藤が書いた伝記だ。大浦みずきは2009年に53歳で肺がんのため亡くなった。 私…

ギャラリーストークスの辻忍個展を見る

東京表参道のギャラリーストークスで辻忍個展が開かれている(6月2日まで)。辻は1961年、東京都生まれ。1984年に東海大学教養学部芸術学科を卒業している。1989年に銀座のギャラリーミハラヤで初個展、以来ときわ画廊やギャラリークラマー、横浜のギャラリ…

椿近代画廊の天野裕夫展を見る

東京日本橋室町の椿近代画廊で天野裕夫彫刻展が開かれている(5月26日まで)。天野は1954年岐阜県生まれ、1978年に多摩美術大学大学院彫刻科を修了している。天野は椿近代画廊で何度も個展を繰り返しているが、今回は3年ぶりになる。ほかに各地の高島屋デパ…

ギャラリーツープラスの藤澤江里子展を見る

東京日本橋のギャラリーツープラスで藤澤江里子展が開かれている(5月27日まで)。藤澤は1960年東京都生まれ、武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン科を卒業したあとBゼミスクールを修了している。なびす画廊、かわさきIBM市民文化ギャラリー、村松画廊、ギャ…

平芳幸浩『マルセル・デュシャンとアメリカ』を読む

平芳幸浩『マルセル・デュシャンとアメリカ』(ナカニシヤ出版)を読む。副題が「戦後アメリカ美術の進展とデュシャン受容の変遷」というもの。デュシャン論ながらアメリカの美術評で語られたデュシャンという視点から論じているのだが、これは膨大な論文に…

コバヤシ画廊の村山隆治展を見る

東京銀座のコバヤシ画廊で村山隆治展が開かれている(5月26日まで)。村山は1954年茨城県生まれ、1980年に東京芸術大学大学院美術研究科を修了している。その後、ギャラリー山口やギャラリー手、ギャラリー21+葉などで個展を繰り返した後、2007年からは毎年…

埼玉県立近代美術館の「モダンアート再訪」を見る

さいたま市北浦和の埼玉県立近代美術館で「モダンアート再訪」が開かれた(5月20日まで)。副題が「ダリ、ウォーホルから草間彌生まで、福岡市美術館コレクション展」というもの。福岡市美術館が工事休館中なので、その所蔵作品から70点を選んで展示した。ま…

山本弘の作品解説(72)「緑の家(仮題)」

山本弘「緑の家(仮題)」、油彩、F4号(33.5cm×24.5cm) 制作年不明。少し遠くの左上に小さな一軒家が描かれている。ヘの字型の屋根が黒く描かれ、家の本体はモスグリーンの絵具がパレットナイフで厚塗りされている。全体にベージュ系の色が塗られ、家の右…

山本弘の作品解説(71)「庵」

山本弘「庵」、油彩、F10号(45.5cm×53.0cm) 1976年制作。小さな一軒家が描かれている。家の前に庭があり、そこに小さな猫も描かれている。家の裏手には山が迫っているようだ。このような一軒家は山本がしばしば取り上げたテーマだった。きっと山本はいつも…

白井聡『永続敗戦論』を読む

白井聡『永続敗戦論』(講談社α文庫)を読む。同じ著者の『国体論』の評判が良くて購入したが、前著である『永続敗戦論』を去年買ったのにまだ読んでなかったので、これから読んでみた。 日本は1945年8月15日にポツダム宣言を受諾して連合国に敗戦した。それ…

円満字二郎『漢和辞典的に申しますと。』を読む

円満字二郎『漢和辞典的に申しますと。』(文春文庫)を読む。円満字は出版社で国語教科書や漢和辞典の編集者として働いていた。本書では160の漢字を取り上げて、それぞれ見開き2ページでコラムのように解説している。これが意外におもしろかった。私も漢字…

山本弘の作品解説(70)「白い顔」

山本弘「白い顔」、油彩、F30号(91.0cm×73.0cm) 制作年不詳だが、1978年10月に飯田市で開かれた生前最後の個展に展示された。山本としては大きな作品で、天地91cmの30号になる。題名から白い顔が描かれているのだろうが、どれが眼鼻かと考えるとよく分から…

山本弘の作品解説(69)「骸骨(仮題)」

山本弘「骸骨(仮題)」、油彩、F12号(60.5cm×50.0cm) 1977年制作。題不詳だが明らかに骸骨が描かれている。あぐらを組んだ骸骨が頬杖をついている。山本の好きな色彩、ネギの色が太い筆触で周囲に描かれ、体の部分にも塗られている。下方のバッテンがスネ…

内藤啓子『枕詞はサッちゃん』を読む

新潮社のPR誌『波』に「文士の子ども被害者の会」という座談会が載っていた(4月号と5月号)。阿川弘之と矢代静一と阪田寛夫の娘たちの阿川佐和子と矢代朝子と内藤啓子の座談会だ。これがとても面白かった。文士=作家である3人の父親たちがどんなに身勝手で…

合掌の法則、再び

この2冊の本のカバーが短くて上部が数ミリ寸足らずになっている。2冊とも同じ著者(白井聡)の本で、講談社α文庫と集英社新書で出版社は違う。 カバーを取ってみたら、どちらもその下に別のカバーがあった。してみると、寸足らずのカバーは実はいわゆる「帯…

東京国立近代美術館の横山大観展を見る

東京国立近代美術館で横山大観展が開かれている(5月27日まで)。美術館のパンフレットより、 横山大観(1868-1958)は、1500点を超える富士の絵を残したことや、40メートル超えの水墨画の画巻《生々流転》を描いたことで知られる、近代日本画壇のトップです…

JINENギャラリーの古屋真美展を見る

東京日本橋小伝馬町のJINENギャラリーで古屋真美展が開かれている(5月13日まで)。古屋は1994年山梨県生まれ、2018年武蔵野美術大学油絵学科版画専攻卒業、現在同大学 大学院造形研究科修士課程美術専攻版画コース在籍中。今回が初個展になる。 リトグラフ…

村上春樹『ラオスにいったい何があるというんですか?』を読む

村上春樹『ラオスにいったい何があるというんですか?』(文春文庫)を読む。副題が「紀行文集」で、アメリカ、ギリシャ、フィンランド、アイスランド、ラオス、イタリア、熊本県など11の地域へ旅行した紀行文が集められている。春樹の紀行文だからみな楽し…

山本弘の作品解説(68)「工事場」

山本弘「工事場」、油彩、F10号(53.0cm×45.5cm) 1977年制作。工事現場で働く労働者というか人夫を描いているのだろう。当時の言葉では土方。前かがみになって働いている男は白い絵具に包まれている。 山本は若いころ日本美術会飯伊支部結成に参加し、日本…

山本弘の作品解説(67)「(題不詳)」

山本弘「(題不詳)」、油彩、F10号(53.0cm×45.3cm) 制作年不明。キャンバスの裏面に誰かの手で「人物80」と書かれている。誰の字なのだろう。「80」とは何か。1980年はずっと病院に入院していて絵を描くことは不可能だったが。しかし、サインや作風から晩…

山本弘の作品解説(66)「湘五才」

山本弘「湘五才」、油彩、F20号(72.8cm×63.0cm) 制作年不明。愛娘「湘」が5歳なら制作は1976年か1977年になる。いつもながらユニークな構図だ。自分の愛娘をこんな形に描いている。それでいて、どこか特徴を掴んでもいる。山本の優れている点はその卓越し…

辻惟雄『奇想の図譜』を読む

辻惟雄『奇想の図譜』(ちくま学芸文庫)を読む。先月紹介した『奇想の系譜』(ちくま学芸文庫)の姉妹編ともいえるもので、前著同様すばらしかった。本書では北斎の「神奈川沖浪裏」などの表現をめぐり、その前例やまたヨーロッパへの影響など論じている。…

小さな新聞記事に気づいたこと

先日新聞に春の叙勲の受章者一覧が載っていた。勲章に格別の興味もないのでそのまま次のページを開こうとしたときに、知っている名前に気づいた。「カジ・ギャスディン」という文字が眼に飛び込んできた。よく見ると「カジ・ギャスディン/(バングラディシ…

山本弘の作品解説(65)「電柱のある一軒家(仮題)」

山本弘「電柱のある一軒家(仮題)」、油彩、F10号(45.3cm×53.0cm) 1977年制作。一軒家が描かれている。前に道があるが行き止まりになっているようだ。その右側に電柱が立っている。家は緑の木々に囲まれているようだ。山の中の一軒家なのだろうか。山本は…