2010-01-01から1年間の記事一覧

岡本太郎美術館の池田龍雄展「アヴァンギャルドの軌跡」とモートン・フェルドマン

川崎市生田緑地にある岡本太郎美術館で池田龍雄展「アヴァンギャルドの軌跡」が開かれている(1月9日まで)。 池田龍雄は1928年生まれ、終戦間際に予科練へ行っている。岡本太郎美術館へは初めて行った。小田急の向ヶ丘遊園駅から公式には徒歩17分とある。…

「文藝春秋」2011年新年特別号「特別企画 弔辞」

「文藝春秋」2011年新年特別号は「特別企画 弔辞」が掲載されている。「文藝春秋」を買ったのは40年間で5回もなかっただろう。しかし弔辞を読むのが好きなのだ。本誌480ページのうち弔辞の記事は94ページ、それで不要な400ページ近くを破いて捨てた。残った…

銀座三越の山口晃展

銀座三越で山口晃展が始まった(1月10日まで)。山口は日本橋三越のリニューアル時にポスターを描いているので三越との相性はいい。楽しみにして見に行った。初日なのに8階のギャラリーは展示替え中だ。はて1日延期したのかしらん。ちらしで確認すると、…

福寿草が芽生えていた

墨田区の小さな植物公園で26日の日曜日に福寿草の芽生えを見つけた。固いけどまぎれもなく、これは福寿草の蕾だ。私が生まれ育った長野県の天竜川沿いの村は冬がとても寒い。世界中を回った飯田市出身の元朝日新聞記者本多勝一によれば、天竜川を挟む伊那谷…

老人の孤独死が話題になっている

老人の孤独死が話題になっているが、朝日新聞でも12月26日から「孤族の国」として特集が始まった。 首都圏の大規模団地で11月上旬。死後3カ月以上経った男性(79)の遺体が見つかった。遺族に依頼された遺品整理会社「あんしんネット」の作業に同行した。 …

斎藤憐の音楽劇「アメリカン・ラプソディ」

斎藤憐・作の音楽劇「アメリカン・ラプソディ」を座・高円寺という劇場で見た。演出が佐藤信、出演が高橋長英と関谷春子、ガーシュイン役で終始ピアノを弾いていたのがジャズピアニストの佐藤允彦だった。つまりこの芝居はガーシュインを描いたもの。ガーシ…

美しい尻?

昨日紹介した大塚英子「夜の文壇博物誌」(出版研)にこんな一節がある。 「この子のお尻、すっごくカッコいいのよ。キュッと上がっていて、丸くって、こんなお尻あたし初めて見たわ」 古川裕子(ママ)がそう言って、安部公房氏の前に私を立たせた。 安部氏…

「夜の文壇博物誌」に書かれた作家たちのゴシップ

大塚英子「夜の文壇博物誌」(出版研)は銀座のホステスの目から見た作家たちのゴシップ集だ。大塚英子は吉行淳之介の愛人だった人で、吉行亡き後、「吉行淳之介との28年間にわたる衝撃的な愛の日々を綴った」『「暗室」のなかで−−吉行淳之介と私が隠れた深…

ジョゼフ・コーネルの箱の作品の意味するもの

ジョゼフ・コーネルは箱を作品としている美術家だ。川村記念美術館にも作品が収蔵してあり、そのホームページでコーネルについて読むことができる。 アメリカ生まれのジョゼフ・コーネル(1903-1972)は、「箱のアーティスト」として知られています。1931年…

「紙の上の競宴−−寺田コレクションより」をぜひ

東京オペラシティアートギャラリーの収蔵品展「紙の上の競宴−−寺田コレクションより」をお薦めする(12月26日まで)。 「紙の上の競宴」では、版画技法別にこれまで紹介することのできなかった作品を中心に取り上げた。ゆえに加納光於、菅井汲、松谷武判など…

INAXギャラリーの下平千夏展「IMPLOSION POINT」の不思議な空間

京橋のINAXギャラリー2で下平千夏展が開かれている(12月25日まで)。 下平は1983年長野県生まれ、2歳のときから5年間シンガポールで暮らしている。2007年武蔵野美術大学建築学科を卒業したあと、東京芸術大学大学院へ入学し美術研究科先端芸術表現専攻を…

「江戸絵画の不都合な真実」に書かれたエピソードも面白い

狩野博幸「江戸絵画の不都合な真実」(筑摩選書)については昨日紹介したが、あちこちに面白いエピソードが散りばめられていた。ここではそれらを拾ってみる。まず岸駒の項で、 近世随筆において質量ともに他を圧する『翁草』全200巻の著者・神沢貞幹(1710-…

「江戸絵画の不都合な真実」が素晴らしい!

狩野博幸「江戸絵画の不都合な真実」(筑摩選書)が素晴らしい! 本書は江戸時代の8人の画家を取り上げて簡潔に紹介している。岩佐又兵衛、英一蝶、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、岸駒、葛飾北斎、東洲斎写楽であるが、初めて知って驚いたことがいくつもあ…

雑誌「本」の表紙に取り上げられた浅見貴子

講談社のPR誌「本」は毎月現代美術の作家を選んで表紙に取り上げている。2011年1月号は浅見貴子が採用された。選んでいるのは高階秀爾、現代最も権威のある美術評論家だ。まずなぜ高階が現代美術の作家に詳しいかといえば、長くVOCA展の選定委員長を務めて…

川本三郎の「小説家たちの休日」では65人の作家が取り上げられた

川本三郎・文、樋口進・写真「小説家たちの休日」(文藝春秋)を読んだ。副題が「昭和文壇実録」という。見出しと作家の簡単な略歴で1ページ、写真で1ページ、文章がそれぞれ4ページという構成で、400ページの本に65人の作家が取り上げられている。写真の…

ギャラリー檜の柴崎和也の彫刻がすばらしい

京橋のギャラリー檜B・Cで柴崎和也展が開かれている(12月25日まで)。この鉄の立体がすばらしい。 柴崎は1982年大阪府生まれ、現在多摩美術大学大学院彫刻専攻に在籍していて今回が初個展となる。この個展は多摩美術大学彫刻研究室が主催して、2名の彫刻専…

アートスペース羅針盤の竹村芳樹新作展

アートスペース羅針盤で竹村芳樹新作展が開かれている(12月18日まで)。竹村は1950年横浜市生まれ、横浜国立大学教育学部美術科に入学するも4年後に中退する。異色なのは、小説「痔物語」(新風舎)を書いて出版している。 今回の新作はここ10年以上見てき…

カトリーヌ・アルレーのミステリ「理想的な容疑者」がすばらしい

カトリーヌ・アルレー「理想的な容疑者」(創元推理文庫)がすばらしい。ミステリとしてとても優れている。ネタバレを避けるため、これ以上触れることは止そう。ただ、著者が女性であるため、男に対する女の立場からの非難の台詞が強く実感を伴っている。男…

とんぼの本『「戦争」が生んだ絵、奪った絵』を読む

新潮社の「とんぼの本」のシリーズ最新刊がこの『「戦争」が生んだ絵、奪った絵』だ。著者名として、野見山暁治、橋秀文、窪島誠一郎の名前が並んでいる。実際は野見山が香月泰男について22ページ書き、橋が浜田知明について11ページ書いている。ついで編集…

文京アートの吉仲太造展は見逃したくない

地下鉄八丁堀駅近くの文京アートで吉仲太造展「大いなる遺産」が始まった(12月25日まで)。吉仲太造は1928年京都市生まれ、1985年56歳で亡くなる。今年が没後25年の年。 ちょうど10年前に渋谷区立松濤美術館で個展が行われた。すばらしい回顧展だった。しか…

「安閑園の食卓」という名エッセイ

辛永清「安閑園の食卓」(集英社文庫)を読む。著者は台湾出身の料理研究家。NHKの「きょうの料理」の講師も務めたという。12編のエッセイとそこに取り上げた料理のレシピが1つずつ紹介されている。 エッセイは台湾で育った彼女の家庭での思い出を料理にか…

ドナルド・キーン「日本の作家」は優れた作家論だ

ドナルド・キーン「日本の作家」(中央公論社)を読む。作家論で、取り上げられているのは、森鴎外、正岡子規、石川啄木、谷崎潤一郎、川端康成、太宰治、三島由紀夫、安部公房、大江健三郎などだ。1959年から1971年にかけて雑誌や文学全集などの解説等に書…

ギャラリー現の井上修策展「多様性の柱」は見る者を欲求不満にさせる

井上修策展が銀座1丁目のギャラリー現で開かれている(12月11日まで)。 ギャラリーに入ると床に白い柱が1本横たえられている。木口に絵が描かれているようだ。作家に聞くと、柱と見えたのは3,500枚のドローイングを重ねたものだという。毎日10枚のドロー…

チェーホフの「かもめ」

先日あった読書会でチェーホフの「かもめ」がテキストとして使われたが、おおかたの感想はつまらないとか読みづらいというものだった。最近池袋の劇場で「かもめ」を見たという人が芝居は面白かったと言われた。 私も高校生の時、友人に勧められて清水邦夫の…

常用漢字が追加された〜勝目梓

29年ぶりに常用漢字表が改定され196字が追加された。「虎」とか「熊」「鹿」「亀」「嵐」「岡」「俺」「柿」「蔑」も追加された。今まで虎の門も岡山も亀戸も熊本も使えなかったのか。「尻」が使えるようになって、オカマの恋人同士が「あなたの尻が忘れられ…

田端麻子展がShonandai MY Galleryで開かれている

田端麻子展がShonandai MY Galleryで開かれている(12月8日まで)。田端麻子は昨年のOギャラリーUP・Sの個展を紹介したが、1972年神奈川県藤沢市生まれ、1996年に多摩美術大学油画専攻を卒業している。Oギャラリーのほか、湘南台画廊やギャラリー人、アート…

ギャラリーテムズの及川伸一展が良い

武蔵小金井のギャラリーテムズで開かれている及川伸一展がとても良い(12月6日まで)。及川は1949年東京生まれ。1980年から1992年まで独立美術に出品していたが、1992年からは個展を主な発表の場所としている。これまでギャラリー汲美、ギャラリーテムズ、…

永井画廊の堀越千秋展

銀座4丁目の永井画廊で堀越千秋展が開かれている(12月17日まで)。個展のタイトルが「ANA機内誌『翼の王国』表紙原画展」だ。表紙原画展なので小品だが堀越のダイナミックな作風はよく現れている。堀越は美術界の名文家3人の1人でもある。その3人とは野…

梶井基次郎「檸檬」を読んで

世評の高い梶井基次郎「檸檬」(集英社文庫)を読んだ。実は梶井を読むのはこれが初めてだった。この集英社文庫は鈴木貞美のていねいな解説が付いている。 ……梶井基次郎の作品世界はどれも、結核に冒されたひとりの青年の経験を、その具体性のままに書いたに…

南天子画廊の麻生三郎展

京橋の南天子画廊で麻生三郎展が開かれている(12月11日まで)。東京国立近代美術館の麻生三郎展にあわせて企画したのだろう。売りやすい小品が並んでいるのだろうと思って行ったが違っていた。大作が並べられている。一番大きな作品は1,500万円もする。1944…