福寿草が芽生えていた


 墨田区の小さな植物公園で26日の日曜日に福寿草の芽生えを見つけた。固いけどまぎれもなく、これは福寿草の蕾だ。私が生まれ育った長野県の天竜川沿いの村は冬がとても寒い。世界中を回った飯田市出身の元朝日新聞記者本多勝一によれば、天竜川を挟む伊那谷の冬は室内に限れば世界で一番寒いという。
 養蚕が主要な産業だった歴史から、蚕の生育のために家屋の設計は夏涼しいことを何よりも優先した。そのため冬の室内の寒さは世界で最も苛酷なものとなったのだ。そんな村の生活では春が何よりも待ち遠しかった。春が来れば辛い寒さと別れられる。
 その春の最初の兆候が福寿草の芽生えだった。初めて見つけたときはすぐに家族に報告した。おばあちゃん、福寿草が出たよ! もうすぐ春になる。喬木村福寿草が芽生えるのは東京より2カ月は遅かったような気がする。福寿草が芽生えたよ。