2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧
丸谷才一のエッセイ傑作選『腹を抱へる』(文春文庫)を読んでいたら、作家の梶山季之は詩人のゴシップを話すのが好きだったと書かれていた。金子光晴が亡くなったとき、丸谷はこの詩人の話を梶山としたことがなかったことを思い出した。金子と会ったのは二…
東京京橋のギャラリー川船で「60〜70年代 現代美術 俯瞰展」が開かれている(5月2日まで)。そこに中沢潮のエスキース(下絵)が展示されている。もともと発表を目的としたものではないエスキースなのでとても地味な作品だ。ところがこれは極めて重要な作…
池澤夏樹が岩波書店のPR誌『図書』に「誌のなぐさめ」と題するエッセイを連載している。5月号が「恋人の吐息、あるいはライト・ヴァースへの誘い」というタイトルだった。 池澤はここで岩波文庫の新刊『辻征夫詩集』を取り上げている。『図書』が岩波書店の…
東京京橋のギャラリー川船で「60〜70年代 現代美術 俯瞰展」が開かれている(5月2日まで)。そこに柴田和の作品「BLACK BOX II」のマケットが展示されている。マケットというのは普通彫刻の試作のための模型を言う。この作品はマケットのほかにエスキース…
クレア・ベサント『ネコ学入門』(築地書館)を読む。副題が「猫言語・幼猫体験・尿スプレー」となっている。カバーの惹句が、 人や犬と違い、群れない動物である猫は、多様なコミュニケーション手段をもっている。 猫は人に飼われても野性を失わない生きも…
東京外苑前のトキ・アートスペースで山本耕一展「ドローイング2013〜2015」が開かれている(4月26日まで)。山本は1949年、京都市生まれ。同志社大学文学部を卒業している。主な個展は、ガレリア・フィナルテで1997年から5回、トキ・アートスペースで2001…
東京銀座のなびす画廊で瀧田亜子展が開かれている(5月2日まで)。瀧田は1972年東京都生まれ。なびす画廊での個展は昨年の11月に続いて今回で18回目になる。最近は春秋と年に2回も個展を行っている。その作品は紙に顔料で描いている。 瀧田は昔から書を学…
東京の銀座ニコンサロンで新田樹写真展「サハリン」が開かれている(5月5日まで)。新田は1967年、福島県生まれ。東京工芸大学工学部卒業後、麻布スタジオ入社。1991年半沢事務所入社。1996年独立。写真展に、2003年コニカ・フォトプレミオ「SURUMA…
田中克彦・H. ハールマン『現代ヨーロッパの言語』(岩波新書)を読む。田中とハールマンの名前が並んでいるが、二人の共著で、田中はモンゴル学と言語学が専攻の優れた言語学者、ハールマンは12歳年下のドイツの言語学者である。 前半半ば近くが第1部「言語…
東京京橋のギャラリー川船で「60〜70年代 現代美術 俯瞰展」が始まった(5月2日まで)。本展はコレクターの川谷登が中心となって企画し、今回出品した数人の作家たちが賛同して、ギャラリー川船の画廊主川舩氏の協力を得て開催されることになった、という…
東京京橋のギャラリー川船で今日から「60〜70年代 現代美術 俯瞰展」が始まる(5月2日まで)。本展はコレクターの川谷登が中心となって企画し、今回出品した数人の作家たちが賛同して、ギャラリー川船の画廊主川舩氏の協力を得て開催されることになった。…
谷川俊太郎 編『辻征夫詩集』(岩波文庫)に辻と谷川の対談が収められている。そこで二人が金子光晴の詩が好きだと言っている。 辻征夫 (……)金子光晴は好きですか? 立川俊太郎 ぼくは好きです。もちろん判らないものもありますけど。きっと、あまりにも人…
谷川俊太郎 編『辻征夫詩集』(岩波文庫)を読む。名前は知っていたが、辻征夫の詩を読むのは初めてだった。カバーの袖に惹句が書かれている。それを引くと、 やさしくて、茫洋として、卑下もせず、自慢もしない――。話し言葉を巧みに使って書いた素直な言葉…
本広克行監督の映画『幕が上がる』を見る。先に平田オリザ『演劇入門』(講談社現代新書)を読んだが、それを朝日新聞の書評欄で本広克行が推薦していた。その文章、 『演劇入門』を読んだのはアクション映画「少林少女」を撮り終えた頃。戯曲の書き方や役者…
『林俊詩集』(風塔舎)に篠田魔孤を詠んだ「破れたる出発」という詩があり、「篠田魔孤に与う」と献辞がある。 ぴやらぴやらと破れたるラッパは鳴れり そはわれらがかなしき門出の合図なるべし いざゆかん つぎつぎと 白き晒布はハタハタと風に翻り 我らが…
東京銀座のSteps Galleryで吉岡まさみ展が開かれている(4月25日まで)。吉岡は1956年、山形県生まれ。1981年に東京学芸大学教育学部美術科を卒業している。1982年に東京のかねこ・あーとGIで初個展、以来同画廊やときわ画廊、巷房などさまざまな画廊で個展…
椹木野衣『アウトサイダー・アート入門』(幻冬舎新書)を読む。きわめて刺激的な本だった。最初アウトサイダー・アート=アール・ブリュットに関する啓蒙書かと思って読み始めた。とんでもないことだった。美術の再定義を要求するラディカルな=根源的な主…
5年半使ったコンパクトデジカメが壊れて新しいのに買い換えた。その試し撮りを兼ねて、近所で4月の花を撮影した。 ニリンソウ(二輪草) オドリコソウ(踊子草)外来の姫踊子草ばかりが目立つが本種は国産 ヤマブキソウ(山吹草) カンアオイ(寒葵)ギフ…
東京国立近代美術館で「生誕110年 片岡球子展が開かれている(5月17日まで)。1905年生まれ、2008年に103歳で亡くなった日本画家、文化勲章を受章している。 「面構」シリーズが代表作で、それらのいくつかは図版などでしばしば見かけるし、作品も何点かは…
丸谷才一『腹を抱へる』(文春文庫)を読んでいたら、「懐かしい人」という章の中に、「菊池武一」というエッセイがあった。菊池武一は四国高松の人、明治29年生まれ、長く國學院大学の教授として英語を教えた。昭和47年没、享年76。丸谷は昭和39年まで十数…
丸谷才一『腹を抱へる』(文春文庫)を読む。これは「エッセイ傑作選1」と副題があり、丸谷のエッセイ集のなかから粒よりのものだけを選び抜いたのだと、解説で鹿島茂が書いている。 単行本に掲載された年でいえば、1970年から2004年にまで及んでいる。もっ…
先日、山本弘に対する私の評価を書いた。今回は客観的な評価を紹介したい。まず美術評論家の針生一郎の言葉。 むろん芸術家の生活がどんな内的苦悩にみちていようとも、作品はそれじたいで評価されるほかはない。だからわたしたちは作品を見る前にどんな成算…
東京銀座のコバヤシ画廊で坂本太郎展が開かれている(4月11日まで)。坂本太郎は1970年、埼玉県生まれ、2000年に愛知県立芸術大学大学院修士課程を修了している。都内では2000年に当時早稲田にあったガルリSOL、2001年以降銀座のフタバ画廊や小野画廊、ギャ…
平田オリザ『演劇入門』(講談社現代新書)を読む。これがとても面白い本だった。初版が1998年だが、去年誰かが推薦していたので購入した。そのまま読まないで本棚に差してあった。その時点ですでに23刷だった。売れているらしい。 そして先月朝日新聞の書評…
赤瀬川原平『四角形の歴史』(毎日新聞社)を読む。毎日新聞の書評欄のコラム「この3冊」で、美術評論家の山下裕二がこの本を「あまり知られていないけれど、極めつきの名著だ」と絶賛していた(2月1日)。 自筆のイラストとごく短い文章による絵本という…
六本木の東京メトロの駅の壁に某テレビ局のポスターが貼られていた。「ものづくり日本の奇跡」という某テレビ局60周年特別企画の番組の広告で、「ふりむくと、未来が見える。」というヘッドコピーが書かれている。そのボディーコピーが、 焼け野原で、先人た…
廣野由美子『批評理論入門』(中公新書)を読む。何やら難しそうなタイトルだが、内容は小説論。著者は最初『新・小説神髄』の名前を考えていたという。副題が「『フランケンシュタイン』解剖講義」といい、有名な『フランケンシュタイン』をテキストにして…
東京北青山のギャラリージーで染谷レイコ展「passed portraits」が開かれている(4月19日まで)。染谷は1980年、埼玉県生まれ、このギャラリー ジーで10回以上の個展をしている。 染谷はいつも渋谷や表参道などで若い女性に声をかけて彼女たちのポートレイ…
小松茂美『利休の死』(中央公論社)を読む。小松は「平家納経」を研究した古筆学者。その世界では大御所として知られる。小松は利休の手紙とされる368点を精査し、また当時の利休を取り囲む人たちの消息=手紙を読み解き、本書を執筆した。 千利休の伝記で…
東京銀座6丁目のみゆき画廊で井上敬一展が開かれている(4月4日まで)。井上は1947年香川県生まれ、1980年に福岡教育大学美術研究科を修了している。 人が描かれているが、ひとつの画面に何人かの顔が重なっている。毎年同じような画面を作っているが、少…