書評
豊﨑由美『ニッポンの書評』(光文社新書)を読む。豊﨑は書評家の第一人者、本書は15年前に光文社のPR誌『本が好き!』に連載したもの。15講に渡って書評に関するテクニックを詳しく語っている。私もブログで書評の真似事をしているので大変参考になった。…
全国紙3紙(読売、朝日、毎日)の読書委員が選ぶ年末恒例の今年の3冊が発表された。それらの内、私が読みたいと思った本を取り上げる。 朝日新聞は〔書評委員19人の「今年の3冊」〕。残念ながらここに選ばれた57冊に読みたいと思える本はなかった。 読売…
横尾忠則による志村真幸著『未完の天才 南方熊楠』(講談社現代新書)の書評が朝日新聞に掲載された(2023年8月12日朝刊)。写真がそれだが、印刷がひっくり返っている。でもこの通り印刷されていた。大きなゴジックの文字「未完」だけが正立している。 以…
読売新聞の読書委員が旅行中に読みたい本を推薦している(読売新聞、2023年8月13日付け)。21人の読書委員が各自1冊ずつで21冊。題して「旅行中に読みたい非日常を味わう本」。 私はこの21冊中3冊に興味を持った。 *牧野邦昭推薦 玉村豊男著『料理の四面…
スタニスワフ・レム『火星からの来訪者』(国書刊行会)について、若島正が毎日新聞に紹介している((2023年5月13日)。本書の副題が「知られざるレム初期作品集」というもので、「レム・コレクション」の第2期の1冊だ、その書評から、 レムの実質的なデ…
斎藤美奈子が「旅する文學 岐阜編」で、岐阜県を舞台とする小説を紹介している(朝日新聞、2023年3月31日夕刊)。 島崎藤村『夜明け前』(岩波文庫など)について、 (……)ひと言でいうとこれは地方から見た明治維新の裏面史だ。維新に夢をつなぐも裏切られ…
読売新聞年末恒例の“書評委員が選ぶ「2022年の3冊」”が掲載されている(12月25日付け)。書評委員20人が今年出合った「これぞと思う3冊」を挙げている。その中から気になったものを拾ってみる。 *春暮康一『法治の獣』(ハヤカワ文庫) 小川哲・選 本書は…
年末恒例の朝日新聞書評委員が選ぶ「今年の3点」から、気になったものを拾った。 毎日新聞の今年の「この3点」でも2人の書評委員が選んでいた『地図と拳』、朝日新聞でも2人が選んでいる。 *小川哲『地図と拳』(集英社) 澤田瞳子・選 歴史上、十数年だ…
毎日新聞年末恒例の今年の「この3冊」が発表された。書評委員が年間で最も良かったと挙げた3冊だ。その内私が印象に残ったものを拾ってみた。 *鷲見洋一『編集者ディドロ:仲間と歩く「百科全書」の森』(平凡社) 本書は3人が選んでいる。 辻原登・選 …
鈴木江理子・児玉晃一編著『入管問題とは何か』(明石書店)を中島京子が書評している(毎日新聞2022年9月17日付)。その内容が凄まじい。 ……いったい「入管問題」の本質はなんなのか。 編者の一人の鈴木江理子は、「暴力性」と書く。 「収監の可否判断に司…
佐藤義雄が紹介する『人口大逆転』(グッドハート、プラダン著、日本経済新聞出版)の書評が大変興味深い(読売新聞、2022年8月14日)。それは次のように書かれている。 著者はこれまでの約30年間の世界経済のトレンドを分析し、今後の展開を予想する。この…
先週5月14日付けの毎日新聞の書評は私には当りだった。読みたいと思った本が5冊も紹介されていた。 *新井潤美『英語の階級』(講談社選書メチエ)評者:村上陽一郎 村上が「この本、メッチャ面白い!」と書く。 「サッカー」と「フットボール」。日本では…
昨日紹介したポーランドのノーベル文学賞受賞詩人ヴィスワヴァ・シンボルスカは、30年にわたり数百冊の本の書評を書いてきた。その一部が、『シンボルスカ詩集』(土曜美術社出版販売)に抄録されている。そこに取り上げられているアンナ・シヴィデルクヴナ…
読売新聞年末恒例の読書委員20人の「2021年の3冊」が発表された(12月26日)。そこから、気になったものを拾ってみた。 橋本倫史推薦 岸政彦編『東京の生活史』(筑摩書房、4620円) 150人の聞き手が、150人の生活史を静かに聞き取った1216頁の大著。年末年…
朝日新聞年末恒例の書評委員19人の「今年の3点」が発表された(12月25日)。そこから、気になったものを拾ってみた。 犬塚元推薦 『批評の教室 チョウのように読み、ハチのように書く』(北村紗衣著、ちくま新書・902円) 本書は、どんな種類であれテクスト…
年末恒例の毎日新聞「今年の3冊」が発表された(12月11日と18日)。これは毎日新聞の書評執筆者36人が今年刊行された書籍から各3冊を挙げている。その中から気になったものを拾ってみた。 村上一郎推選 『ヒトラー 虚像の独裁者』芝健介著(岩波新書) 本書…
週末の新聞には書評欄があり、新刊書の書評が掲載される。毎日新聞、朝日新聞は土曜日に、読売新聞は日曜日に掲載される。書評欄は朝日新聞が3~4ページ、毎日新聞が3ページ、読売新聞も3ページだった。それが今日の読売新聞では2ページになっていた。 …
東大教授で、宇宙論・地球系外惑星の専門家須藤靖が朝日新聞の書評欄に、酒村ゆっけ、『無職、ときどきハイボール』(ダイヤモンド社)を紹介している。(4月10日付) 須藤はテレビ番組「孤独のグルメ」が好きだが、酒抜きである点がやや残念と書き、本書は…
澁谷知美『日本の包茎』(筑摩選書)の書評を渡邊十絲子が書いている(毎日新聞4月3日付)。本書の副題が「男の体の200年史」というもの。渡辺は書く。 ……多くの男性は包茎を恥と感じるが、その価値観は男性だけのもので、女性は全然気にしていない。包茎…
朝日新聞恒例「書評委員が選ぶ『今年の3冊』」が発表された(2020年12月26日)。書評委員20名がそれぞれ3冊を選んで、都合60冊が並んでいる。その中で興味を惹いたものを紹介してみる。 まず須藤靖。須藤は東京大学大学院物理学専攻教授とある。専門は宇宙物…
佐藤正午『小説の読み書き』(岩波新書)を読む。岩波書店のPR誌『図書』に2年間連載したもの。作家佐藤正午が著名な12冊の小説を取り上げて感想を書いている。これが面白い。作家らしく文体などのある種細部にこだわり、それを追求していく。 中勘助の『銀…
佐藤優が冨山和彦著『コロナショック・サバイバル』(文藝春秋)を毎日新聞に紹介している(6月6日)。それがとても興味深い。 冨山氏は、新型コロナウイルスがもたらす経済危機は3段階で到来すると予測する。第1波がローカルクライシスだ。〈出入国制限はも…
土曜日の朝日新聞書評にAI関連の書籍の紹介が上下に並んで掲載されていた。瀬名秀明『ポロック生命体』(新潮社)と、谷口将紀・宍戸常寿『デジタル・デモクラシーがやってくる!』(中央公論新社)だ。後者の副題が「AIが私たちの社会を変えるんだったら、…
絲山秋子『御社のチャラ男』(講談社)の書評が朝日新聞に載っていた(3月28日)。書評子は辛口斎藤美奈子、チャラ男について簡単にまとめているが、私の理解しているチャラ男とあまりにもピッタリ合っていて驚いた。 チャラ男の定義は一言ではいえないが、…
加藤典洋『僕が批評家になったわけ』(岩波現代文庫)を読む。「批評とは何か」を考えて本書を書いたという。批評には文芸批評という狭義の批評と、評論という広義の批評があるという。この辺からもうよく分からない。 加藤は初期に『文藝』という雑誌から新…
いま読んでいる本にフランス語の単語が載っていた。意味を調べようと本棚から何年振りかで仏和辞典を取り出した。中に新聞記事が挟まっている。書評のようだ。私はしばしば書評を購入した当の本に挟み込んでおく。しかしこの仏和辞典は古く、そんな古い本の…
読売新聞 朝日新聞 毎日新聞 読売新聞と毎日新聞の書評欄は毎週日曜日にそれぞれ3ページが充てられている。朝日新聞は土曜日に4ページ充てている。書評欄下の広告スペースは出版社にとって読書家が最も注目する場所だと思っていた。 3月1日の読売新聞の書評…
毎日新聞、読売新聞に続いて、朝日新聞書評委員が選ぶ「今年の3冊」が発表された(12月28日)。書評委員20人×3冊=60冊、その中から気になったものを挙げる。 石川健治(東京大学教授) 『高村光太郎の戦後』(中村稔著、青土社・2860円)本書は、己を虚しく…
毎日新聞に続いて読売新聞でも読書委員が選ぶ2019年の3冊というのを発表している(12月22日)。読書委員の人数が21人、3冊ずつ選んで63冊が挙げられているけれど、私が気になったのは3冊だけだった。なぜか昔から毎日新聞の書評には引っかかるものが多いのに…
毎日新聞の書評欄で「2019 この3冊」(下)として、書評委員に今年のベストを挙げてもらっている(2019年12月15日)。その中から気になったものを拾ってみる。 中村桂子(JT生命誌研究館長) 『進化の意外な順序 感情、意識、創造性と文化の起源』アントニオ…