AI関連の話題

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 土曜日の朝日新聞書評にAI関連の書籍の紹介が上下に並んで掲載されていた。瀬名秀明ポロック生命体』(新潮社)と、谷口将紀・宍戸常寿『デジタル・デモクラシーがやってくる!』(中央公論新社)だ。後者の副題が「AIが私たちの社会を変えるんだったら、政治もそのままってわけにはいかないんじゃない?」というもの。
 『ポロック生命体』の書評、評者は須藤靖、読売新聞の書評子だったが、最近は朝日新聞の書評子に変わっている。東大の宇宙論・地球系外惑星の専門家、私はファンです。

 米国の抽象画家の名を冠した《ポロック社》は、故人となった画家と小説家の作品をAIで解析し尽くし、彼らの新作を発表する。
 「巨人の肩に乗って」新たな発見を行う科学者が独創的であるのと同じく、過去の偉大な芸術家たちの作風をマスターしたAIは単なる模倣にとどまらない。彼らの全盛期を超越した新作を創造し続けるだろう。
 人間には不可能なこの芸術の発展法は、AIが過去の芸術家に新たな命を吹き込んだと表現すべきだ。
 AIに限界はあるかどころではなく、AIは果たして死ぬのかとの観点から、AIと人類の共生が不可避な社会の姿を模索すべき時代が目の前にある。

 ついで、『デジタル・デモクラシーがやってくる!』の書評、書評子は坂井豊貴。リアルな新聞にはどの読者にも共通の記事が掲載されている。それに対して、

(……)だがネットのニュースサイトは一般にそうとは限らない。一人ひとりの履歴に応じて、異なる記事が表示されるからだ。同じサイトを見ている人々が、違う記事を目にする。各人が気付かぬうちに、接する情報の範囲が狭まっていく。これは社会の分極化を促していく。
 2016年のアメリカ大統領選では、ヒラリー候補を攻撃する嘘の記事が多くでた。これはヒラリー氏を攻撃するほうが、トランプ氏を攻撃するよりもよく読まれ、広告収入が増えるからであった。

 日本でも18年の沖縄知事選で玉城デニー候補を攻撃する嘘の記事やサイトが多く現れた。それら嘘はSNSを通じて拡散されたと坂井は続けている。
 作家に代わって新作を発表したり、政治の方向を変えて行ったり、それらはAIが意図して行なっていることではない。だが、AIを使って優れた作品を作りたいとか、広告収入を得たいとか、これらはわれわれが選んだことなのだ。後戻りはできないだろう。とするなら、そのことを前提として新しい社会を設計する必要があることを、2冊の書籍が示唆しているのだろう。
 蒸気機関を発明したワットに高度資本主義のどんなイメージもなかっただろうが、蒸気機関の発明は現代社会への移行を必然とした。AIを選んだわれわれにどんな未来が待っているのか、どんなに難しくても想像する努力を怠ってはいけないだろう。

 

ポロック生命体

ポロック生命体