2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

塩田千春展「鍵のかかった部屋」を見る

横浜市の神奈川芸術劇場で塩田千春展「鍵のかかった部屋」が開かれている(10月10日まで)。会場は少し薄暗くなっていて、大きな部屋一面に天井から周囲まで赤い毛糸が張り巡らされている。 入口に近い半分の空間には5つの扉が設置されている。その扉の周囲…

eitoeikoの岡本光博展「69」がおもしろい

東京新宿区神楽坂のeitoeikoで岡本光博展「69」が開かれている(10月8日まで)。これがおもしろい。岡本は1968年、京都市生まれ。1994年に滋賀大学大学院教育学科を卒業している。その後1994〜96年、ニューヨークのアート・スチューデンツ・リーグに学び…

フィリップ・カー『変わらざるもの』を読む

フィリップ・カー『変わらざるもの』(PHP文芸文庫)を読む。重量級の傑作ミステリだ。カーはイギリスのミステリ作家。デビュー作は『偽りの街』だった。第2次世界大戦直後のドイツが舞台となっている。主人公のベルンハルト・グンターは戦時中ドイツの親衛…

『図説 吉原事典』を読む

永井義男『図説 吉原事典』(朝日文庫)を読む。知人(女性)があなた、こういうの好きでしょうとくれたもの。いささか誤解されているフシがあるが、とくにこの世界が好きなわけではない。でもせっかくもらったから、某所に置いて毎日少しずつ読んでいた。意…

ギャラリーなつかで「たまびやき」を見る

東京京橋のギャラリーなつかで「たまびやき」が開かれている(10月1日まで)。「たまびやき」は、毎年ギャラリーなつかで開かれる多摩美術大学工芸学科/陶/選抜作品展だ。今年は第8回になり、参加している作家は、安藤優、石井あや子、大井真希、太田浩子…

ブコウスキー『パルプ』を読む

チャールズ・ブコウスキー『パルプ』(ちくま文庫)を読む。ブコウスキーを読むのは初めてだった。『町でいちばんの美女』の題名だけは知っているという程度。いつかは読みたいと思っていた。 本書はミステリ仕立て、主人公が私立探偵ニック・ビレーンだ。と…

飯田市への旅

飯田市へ行って来た。11月初めに予定している山本弘展に展示する作品を借りるため、天竜峡の山本弘未亡人宅を訪い、作品を数点借りてきた。 その夜は昨年亡くなった友人の兄貴さんから、友人の遺品としてケンプの弾くベートーヴェンのピアノソナタ全集のLPを…

ヴァレリー・アファナシエフ『ピアニストは語る』を読む

ヴァレリー・アファナシエフ『ピアニストは語る』(講談社現代新書)を読む。アファナシエフはロシア(旧ソ連)出身のピアニスト、1968年のエリザベート王妃国際音楽コンクールで優勝し、のちにベルギーに亡命した。数年前にも『ピアニストのノート』(講談…

ギャラリーなつかの平田達哉展「かたちと情景」を見る

東京京橋のギャラリーなつかで平田達哉展「かたちと情景」が開かれている(9月24日まで)。平田は1961年、北海道遠軽町生まれ。1984年、金沢美術工芸大学美術科油画専攻を4年次で中退。この年、スペインのグラナダで2人展を開く。1991〜93年、イタリアで…

朝日歌壇に載った囚人の歌

今朝の朝日歌壇に4人の選者に選ばれた2人の囚人の4首の短歌が掲載された(朝日新聞、9月19日)。 まず殺人罪によってアメリカの獄舎で終身刑となっている郷隼人。2人の選者が2首を選んでいる。 灼熱の午後の獄庭(ヤード)の上空を旋回(パトロール)せしは…

損保ジャパン日本興亜美術館の「没後110年 カリエール展」を見る

東京西新宿の損保ジャパン日本興亜美術館で「没後110年 カリエール展」が開かれている(11月20日まで)。カリエールは19世紀フランス象徴主義を代表する画家(1849−1906)とある。晩年はルオーやマティスとサロン・ドートンヌの創設に関わった。 展覧会のキ…

ギャラリーOUT of PLACEの内山聡展「ワーキング・ワークス」を見る

東京外神田のギャラリーOUT of PLACEで内山聡展「ワーキング・ワークス」が開かれている(10月2日まで)。内山は1978年神奈川県生まれ。2005年に多摩美術大学大学院日本画研究領域を修了している。2003年にアートスペース羅針盤で初個展、その後神奈川県の…

『桜前線開架宣言』を読む

山田航 編著『桜前線開架宣言』(左右社)を読む。1970年以降に生まれた若い歌人40人を集め、各人56首ずつ、合計2,200首以上を紹介している。1970年代生まれの歌人が19名、1980年代生まれが19名、1990年代生まれが2名となっている。編著者の山田がそれぞれに…

永六輔『職人』を読む

永六輔『職人』(岩波新書)を読む。1996年初版発行、先に永が亡くなったためか、書店で平積みになっていた。私が購入したのが2014年発行の26刷りだった。人気のある著者のロングセラーだ。 永は通産省が禁止した曲尺、鯨尺を職人たちに届けるために、逮捕覚…

ギャラリーQの岩江圭祐展〈sign〉を見る

東京銀座のギャラリーQで岩江圭祐展〈sign〉が開かれている(9月17日まで)。岩江は1987年、東京都生まれ。2014年に多摩美術大学大学院美術研究科博士前期課程工芸専攻金属研究領域を修了している(←これ長すぎる)。2015年に横浜市のギャラリー元町で初個…

原美術館の篠山紀信写真展「快楽の館」を見る

品川区御殿山の原美術館で篠山紀信写真展「快楽の館」が開かれている(2017年1月9日まで)。同展のちらしから、 「ここ(=原美術館)で撮った写真をここに帰す(=展示する)」というアイデアのもと、出品作品はすべて当館で撮り下ろした新作で、およそ30名…

巷房地下の作間敏宏展「治癒」を見る

東京銀座の奥野ビル地下に巷房2と巷房階段下という2つのアートスペースがあり、そこで作間敏宏展「治癒」が開かれている(9月17日まで)。 作間は今年1月にも根津のギャラリー金魚で個展を開いたが、今回階段下の展示は、その時の大きなビニールハウスに…

『孤独のグルメ2』を読む

久住昌之・原作+谷口ジロー・作画『孤独のグルメ2』(扶桑社)を読む。以前『孤独のグルメ』を読んでその紹介をしたのが今年の4月だった。今回の『孤独のグルメ2』には、『週刊SPA!』2009年6月9日号に掲載された静岡市の汁おでんから、2015年5月19日号の…

枡野浩一短歌集『ますの。』を読む

枡野浩一短歌集『ますの。』(実業之日本社)を読む。1968年生まれの枡野が1999年に出版した短歌集。当時枡野は31歳くらいか、若いニューウェーブ歌人の一人のようだ。 しかし本を開いて驚いた。レイアウトに品がないのだ。 このように見開き2ページに短歌が…

『山之口獏詩集』を読む

高良勉 編『山之口獏詩集』(岩波文庫)を読む。明治36年(1903年)沖縄県生まれの詩人。貧しいなかで口語体の平易な詩を書き続けて昭和38年(1963年)、東京オリンピックの前年に胃がんのため亡くなった。享年59歳。 1篇の詩をつくるために、100枚、200枚…

松本直樹『神話で読みとく古代日本』を読む

松本直樹『神話で読みとく古代日本』(ちくま新書)を読む。『古事記』『日本書紀』を読みといて日本の古代史を再構築している。『古事記』に書かれていることと『日本書紀』に書かれていることをつき合わせ、さらに『出雲風土記』と併せて、その〈神話〉か…

ギャラリー58の小鶴幸一展「−グリッド・コンポジション−」を見る

東京銀座のギャラリー58で小鶴幸一展「−グリッド・コンポジション−」が開かれている(9月10日まで)。小鶴は1948年、福岡県生まれ。1972年武蔵野美術大学油画科を卒業し、1974年渡仏し、パリ国立美術大学に留学している。 小鶴の作品は矩形に黒枠で型取り、…

アートギャラリー環で古茂田杏子展を見る

東京神田のアートギャラリー環が開廊40周年だという。その記念に古茂田杏子展が開かれている(9月24日まで)。古茂田杏子は1946年生まれ、両親とも画家で、父が古茂田守介、母が美津子、2012年に目黒区立美術館で古茂田守介+古茂田美津子展が開かれた。 今…

斎藤宣彦『マンガ熱』を読む

斎藤宣彦『マンガ熱』(筑摩書房)を読む。副題が「マンガ家の現場ではなにが起こっているのか」とあり、斎藤が11人のマンガ家たちにインタビューしたものを集めている。そのマンガ家たちは、島本和彦、藤田和日郎、藤子不二雄A、しりあがり寿、くらもちふさ…

良知力「春と猫塚」という優れたエッセイ

30年ほど前に時々読んでいた良知力という社会思想史学者がいた。もう一人似た名前に竹内良知という哲学者がいた。姓は「らち」と読み、名前は「よしとも」と読んだ。良知とは孟子の言葉で生まれながら持っている知能を指し「りょうち」と読む。 良知力が未来…

「あたらしい短歌、ここにあります」

雑誌『ユリイカ』8月号は「特集・あたらしい短歌、ここにあります」だ。新作5首として、16人の人たちが5首ずつ短歌を寄せている。ほかに雪舟えまは10首をイラストともに提出している。 5首ずつ寄せた16人の名前を挙げると、俵万智、巻上公一、戸川純、斉藤斎…

『古代出雲を歩く』を読む

平野芳英『古代出雲を歩く』(岩波新書)を読む。平野は島根県八雲立つ風土記の丘勤務を経て荒神谷博物館に主席学芸員として勤務し、現在同博物館副館長とある。 題名のとおり現在の島根半島を通して古代の出雲を紹介している。平野は地元出身者で、島根半島…

童話『いやいやえん』を読む

中川李枝子 さく・大村百合子 え『いやいやえん』(福音館)を読む。ベストセラーの童話だという。私が図書館から借りた本が、2009年4月発行で127刷となっている。初版が1962年12月だから、47年間で127刷、毎年3刷を重ねていることになる。現在まで同じペー…