ギャラリーQの岩江圭祐展〈sign〉を見る

 東京銀座のギャラリーQで岩江圭祐展〈sign〉が開かれている(9月17日まで)。岩江は1987年、東京都生まれ。2014年に多摩美術大学大学院美術研究科博士前期課程工芸専攻金属研究領域を修了している(←これ長すぎる)。2015年に横浜市のギャラリー元町で初個展、今回が2回目の個展となる。
 ギャラリーの壁に岩江のステートメントが貼られている。

 日用品を思わせるこれらの彫刻は、以前から知っていたはずのそれとは違う、どこか妙な雰囲気を帯びている。
 鉄という素材が持つ"錆び"という特製によって露わにされたその物質性は、現実の世界の中に生き、呼吸をしている存在としてそこに在り続け、私の記憶を曖昧にする。
 そして、徐々に身体化されていく違和感は心地よさへと変容し、以前からそこにあり続けたような顔をして、再び日常の中へと溶け込んでいくのだ。








 岩江は鍛金という手法で作品を作っている。ところがその作品がおもしろい。蚊取り線香、黒板消し、ゴム風船、汚れたマスク、使い古しの電車の切符、ビニールパイプ、ポテトチップスなどなど。これ以外にもたくさんの作品が並べられている。実に精密に作られていて、さらに汚したり錆びさせていたりする。

 傑作なのは彫刻などの展示台の側面に貼り付けてあるキャプションだ。このキャプションが作品で「無題 鉄」と書かれていて、さらに赤丸がついている。この作品は売れたので赤丸を付けたとのこと。その値段を訊くと、作品が小さいので8,640円、ただ展示台も付けて渡すとのこと。一番大きなものが一番安くなっている。
 発想の奇抜さに、見ているとおかしみがこみ上げてくる。とても楽しい展示だ。
       ・
岩江圭祐展〈sign
2016年9月12日(月)−9月17日(土)
11:00−19:00(最終日17:00まで)
       ・
ギャラリーQ
東京都中央区銀座1-14-12 楠本第17ビル3階
電話03-3535-2524
http://www.galleryq.info