マンガ
つげ義春に『李さん一家』というマンガがある。「僕」の2階に李さんという朝鮮人一家が住みついている。奥さんと子どもが2人、李さんは定職がなく相当な怠け者なので生活は苦しい。奥さんは僕が作ったキューリを時たま失敬していく。庭に作ったドラム缶の風…
峰なゆか『AV女優ちゃん 1』(扶桑社)を読む。自身AV女優を経験した峰が、その体験を漫画に仕立てている。読後の印象は最悪だった。登場人物たちが主人公以外みな下種野郎たちなのだ。なるほど、それがAV業界なのだろう。素人の女の子たちをAV女優にして稼…
黒鉄ヒロシ『マンガ猥褻考』(河出新書)を読む。カバーの惹句から、「……天才漫画家が、ついに生涯のテーマのひとつ“ワイセツ”に、真正面から挑む。歴史、文学、美術、映画、哲学、博物学の知見を総動員して、その秘密に迫る。超絶技巧の作画でおくる、完全…
筒井清忠編『昭和史講義【戦後文化篇】(下)』(ちくま新書)を読む。本書戦後文化篇下巻は、映画などを主体に音楽やマンガやテレビなどを扱っている。いままで映画は監督を中心に見ていくという視点が多かったが、本書は映画会社から映画史を見ていくとい…
内田春菊『私たちは繁殖している 16』(ぶんか社)を読む。この16巻は自分のがん体験を描いているとあったので読むことにした。内田は大腸がんと診断され、抗がん剤治療を受け、5時間の手術ののち人工肛門を増設した。元からあった肛門は手術で閉じ、左わき…
竹宮惠子『少年の名はジルベール』(小学館文庫)を読む。竹宮のデビューした頃を描いた自伝。少女漫画でデビューし、同じくデビューしたばかりの萩尾望都と一軒家で共同生活をする。本書を巡って萩尾望都が『一度きりの大泉の話』を書き、この大泉時代に二…
白取千夏雄『「ガロ」に人生を捧げた男』(興陽館)を読む。数日前、高野慎三『神保町「ガロ編集室」界隈』(ちくま書房)を読み、「高野が退職したあと、何年かして青林堂は人手に渡る。そのあたりのことを高野ははっきりとは書いてくれない」とブログに書…
高野慎三『神保町「ガロ編集室」界隈』(ちくま書房)を読む。高野は大学卒業後日本読書新聞に入社し、その後『ガロ』を発行していた青林堂に転職する。青林堂は社長の長井勝一とパートナーで経理担当の香田明子の二人だけだった。結局1966年9月から5年少し…
樹村みのり『冬の蕾』(岩波現代文庫)を読む。副題が「ベアテ・シロタと女性の権利」。岩波現代文庫ながらマンガだ。 ベアテ・シロタは22歳で戦後、アメリカ民政局の日本国憲法草案作成に加わった。ベアテの父はユダヤ系ドイツ人だったが、ピアニストで戦前…
東京西池袋のブックギャラリーポポタムで中田いくみ「つくも神ポンポン」展が開かれている(3月31日まで)。中田いくみは1982年生まれ、成城大学で学んだ後、バンダイビジュアル研究所でイラストレーションを専攻した。初め銀座のギャラリー銀座フォレストで…
吉田秋生『海街diary9 行ってくる』(小学館フラワーコミックス)を読む。悲しいことにこれが最終巻だという。2007年から11年かかって9巻が出た。毎回楽しみで手に取ってきた。 あらすじ、 すずは父の死後、鎌倉に住む母親違いの3人の姉と暮らしているが、…
山口晃の「すゞしろ日記」が今回は大そうじがテーマだ(『UP』2019年1月号)。 最初に『マカロニほうれん荘』のギャグが引用される。主人公は「なつかしい」と思っているが奥さんには通じない。 ついでそうじ個所を表にしている。そうじの手順を図示すること…
山口晃『すゞしろ日記 参』(羽鳥書店)を読む(見る)。山口は東京大学出版会のPR誌『UP』にこのタイトルで毎月マンガを連載していて、もうそれが今月5月号で158回になっている。つまり13年間続いているのだ。それを50回ごとに単行本にまとめている。本書は…
4年ほど前、佐藤信主宰の鷗座公演で、ベルナール=マリ・コルテスの芝居『森の直前の夜』を見た。佐藤の演出は実験的で、役者がひとり舞台中央に立ったまま2時間近く喋りつづけるというものだ。上半身は動かすものの、足は1カ所に立ったままだった。ほとん…
東大出版会のPR誌『UP』の4月号は毎年「東大教師が新入生にすすめる本」というアンケートの結果を紹介している。今年のみI部を東大教師によるアンケート、II部はUP誌に執筆している方によるアンケートとなっている。アンケートの質問は、 1.私の読書から――…
、 中田いくみ『かもめのことはよく知らない』(KADOKAWA)を読む。中田は画家だが、最近はマンガも描いている。私は彼女の画家としての仕事が好きで、このブログでも何度か紹介している。単行本としては初めての仕事だ。 「夜のとばり」は、少年が転校して…
久住昌之・原作+谷口ジロー・作画『孤独のグルメ2』(扶桑社)を読む。以前『孤独のグルメ』を読んでその紹介をしたのが今年の4月だった。今回の『孤独のグルメ2』には、『週刊SPA!』2009年6月9日号に掲載された静岡市の汁おでんから、2015年5月19日号の…
斎藤宣彦『マンガ熱』(筑摩書房)を読む。副題が「マンガ家の現場ではなにが起こっているのか」とあり、斎藤が11人のマンガ家たちにインタビューしたものを集めている。そのマンガ家たちは、島本和彦、藤田和日郎、藤子不二雄A、しりあがり寿、くらもちふさ…
いしいひさいち『現代思想の遭難者たち』(講談社学術文庫)を読む。これがとてもおもしろい。1990年代後半に講談社から『現代思想の冒険者たち』全31巻が刊行された。ハイデガーから始まり、フッサール、ウィトゲンシュタイン、カフカ、ニーチェ、マルクス…
久住昌之(原作)×谷口ジロー(作画)『孤独のグルメ(文庫版)』(扶桑社文庫)を読む。これは先日久住昌之著『東京都三多摩原人』(朝日新聞出版)を読み、それで久住が原作を書いている本書に興味を持ったため。何巻にもわたるシリーズがあるかと思ったら…
吉田秋生『海街diary7 あの日の青空』(小学館フラワーコミックス)を読む。6巻が出たのが一昨年の夏だった。半年ほど前から書店のコミック売場をひと月に1回くらい覗いていた。以前は庵野モヨコとか南Q太とか、魚喃キリコとかも読んでいたけれど、ここ何…
吾妻ひでお『逃亡日記』(日本文芸社)を読む。文庫とは謳ってないないが判型は文庫本だ。吾妻は2005年に『失踪日記』で漫画三賞を受賞している。それは日本漫画家協会大賞、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、手塚治虫文化賞マンガ大賞の3つで、この3…
中条省平『マンガの論点』(幻冬舎新書)を読む。これが面白かった。本書は幻冬舎の月刊PR誌「星星峡」に2006年7月から連載したマンガ時評で、雑誌が途中終刊となったためネット上のウェブサイトに移して、2014年10月まで続いた。その100回分をほぼ完全に収…
東京都写真美術館(写美)で発行しているニュース別冊「ニャイズ」が面白い。作者は既婚OLカレー沢薫、PRマンガらしいけれど、実に自由に描いている。美術館のスタッフをおちょくったり、内実をスクープしたり、いいんだろうかとちょっと心配してしまう。 主…
本棚の読まない本の間から新聞マンガの切り抜きが出てきた。いずれも朝日新聞に連載された『サミット学園』と『Mr.ボォ』の第1回目だ。それぞれ1993年の6月1日と1996年4月1日だ。でも、ほとんど憶えていない。Wikipediaで調べてみた。まず『サミット学…
吉田秋生『海街diary6 四月になれば彼女は』(小学館フラワーコミックス)が発売された。5巻が出たのが去年の冬だったから待ちこがれていた。 「あらすじ」から、 父の死後、鎌倉に住む母親違いの3人の姐に引き取られた〈すず〉。4人が家族になっての生活…
永山薫『エロマンガ・スタディーズ』(ちくま文庫)を読む。エロマンガはエロ漫画だ。その歴史を分析している。著者は非常に真面目で実証的だが、対象がエロ漫画だから、内容はきわめて過激だ。図版が少なからず掲載されているが、文庫という制約もあってと…
山口晃『すゞしろ日記 弐』(羽鳥書店)を読む。画家山口晃が東京大学出版会の月刊PR誌『UP』に毎月もう8年以上連載しているマンガを単行本にしたもの。第1巻にあたる『すゞしろ日記』は同じ版元から2009年に発行されている。この『UP』の判型はA5判とい…
資生堂のPR誌『花椿』に穂村弘の対談が連載されていて、これが楽しい。2月号は瀧波ユカリと対談している。瀧波については知らなかったが、『臨死!! 江古田ちゃん』というマンガの作者ということだ。 穂村 『臨死!! 江古田ちゃん』を読んだ男性はみんな、瀧…
吉田秋生『海街diary 5 群青』(小学館フラワーズ コミックス)を読む。最近本書が、マンガ好きの書店員、同志らが中心となって選ぶ『マンガ大賞 2013』に選ばれた。私は1巻からこの5巻までずっと読んでいるが、今一番興味がある。吉田秋生といえば、『BAN…