斎藤宣彦『マンガ熱』(筑摩書房)を読む。副題が「マンガ家の現場ではなにが起こっているのか」とあり、斎藤が11人のマンガ家たちにインタビューしたものを集めている。そのマンガ家たちは、島本和彦、藤田和日郎、藤子不二雄A、しりあがり寿、くらもちふさこ、岩明均、田中相、荒川弘、ちばてつや、諸星大二郎、大友克洋となっている。
最初に島本和彦と藤田和日郎の二人にそれぞれ長いインタビューをしている。分量にして全体の3割ほどがこれに充てられている。残念ながら、私は島本も藤田も読んだことがない。だからせっかくの充実したインタビューもあまり楽しめなかった。島本の代表作は、『アオイホノオ』、『吼えろペン』あたり、藤田の代表作は、『うしおととら』、『からくりサーカス』などという。いずれも本書で初めて知ったくらい。
いや知っているマンガ家を挙げた方が早い。藤子不二雄A、しりあがり寿、くらもちふさこ、ちばてつや、大友克洋の5人だけだ。大友の『AKIRA』は単行本になったときに読んで圧倒された記憶がある。あれからもう30年も経ったらしい。
くらもちふさこは何か読んでいると思うがよく憶えていない。10年近く前、『駅から5分』の第1巻を買ったが、読まないまま2、3年前に売ってしまった。この斎藤のインタビューを読んで手放したことを後悔し、改めて全3巻をamazonへ注文した。
ちばてつやはなんといっても『あしたのジョー』だ。これは1968年〜1973年に『週刊少年マガジン』に連載されたという。当時雑誌連載中に読んでいたように記憶する。力石の顔が親しかった後輩の顔に似ていたこともあって、力石も好きだった。だが、同じ原作者の『巨人の星』はさほど好きではなかった。斎藤の、『あしたの〜』以外に自分の作品の何を読者に勧めるかという質問に、ちばが『短篇集』と答えている。それでは『短篇集』を読んでみよう。
マンガが好きで、このあたりのマンガ家をよく読んでいる読者には十分楽しめるだろう。それと、常々娘から「父さん、軟弱だから」と揶揄されているように、私はどうも少年マンガより、吉田秋生や南Q太、安彦麻理絵、魚喃キリコ、高野文子なんかを贔屓にしていた。娘の推薦するバキなんかはどうも苦手だった。そう言いながら、本書を読んで、少年マンガのただ前向きでプラス志向の傾向はやっぱり苦手だと再確認した。

マンガ熱: マンガ家の現場ではなにが起こっているのか (単行本)
- 作者: 斎藤宣彦
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2016/07/25
- メディア: 単行本
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