樹村みのり『冬の蕾』を読む

 樹村みのり『冬の蕾』(岩波現代文庫)を読む。副題が「ベアテ・シロタと女性の権利」。岩波現代文庫ながらマンガだ。

 ベアテ・シロタは22歳で戦後、アメリカ民政局の日本国憲法草案作成に加わった。ベアテの父はユダヤ系ドイツ人だったが、ピアニストで戦前から日本で教えていた。ベアテも自然日本で育ち、日本語が自由に話せた。アメリカで学んでいた時太平洋戦争が勃発し、父母は日本に留まり、連絡が付かなかった。戦後ベアテは父母の消息を知りたいと、民政局の一員となって日本に来た。偶然が重なり軽井沢に住んでいた両親と会うことができた。

 ベアテ日本国憲法草案を作成するアメリカ民政局憲法制定会議のメンバーに選ばれた。ベアテが日本語を自由に話すことができたからである。ベアテはそこで女性の権利を重視する草案を作成した。ベアテが戦前の日本に住んでいて、日本の女性のほとんど権利を無視された生活を見て来ていたからである。

 そのベアテの草案は、現憲法第24条になった。

婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により維持されなければならない。配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

 すばらしい。一人の人間が機会を得て大きな仕事ができることが証明している。またベアテがいなければ日本はもっと息苦しい社会になっていたかもしれない。

 またマンガでありながら岩波現代文庫に取り入れた編集者も素晴らしいと思う。