『孤独のグルメ』を読む

 久住昌之(原作)×谷口ジロー(作画)『孤独のグルメ(文庫版)』(扶桑社文庫)を読む。これは先日久住昌之著『東京都三多摩原人』(朝日新聞出版)を読み、それで久住が原作を書いている本書に興味を持ったため。何巻にもわたるシリーズがあるかと思ったら、意外にわずかしか発行されていなかった。テレビドラマ化もされていて、こちらは結構長く続いているようだけど。
 中年の男性、個人の輸入会社を経営している井之頭五郎は顧客相手の仕事柄あちこちへ出かけ、その先々で昼食や夕食をとり、そのことを綴ったマンガ。決して有名料理屋ではなく、街角の食堂などが多い。しかし井之頭は酒を飲まないという設定なので、飲み屋に入って飲食する事例は少ない。また単独行動なので、人との交流はせいぜい食堂の経営者やスタッフたちで、常連ではないので付き合いはきわめて薄い。そんな状況下で料理について云々するので、特別な料理が紹介されるわけでもなく、これで長期間続けるのは難しいことがよく分かった。テレビなら多数のスタッフが取材したりして、店のバリエーションで続けられるだろうから、長期化させるのは難しくないのかもしれない。
 さて、『東京都三多摩原人』に「ビールなしの餃子と冷やし中華。汁が無く。逃げ場がないじゃないか」というセリフがあった。

 ボクのシューマイが来る前に、彼の頼んだ餃子が出てきた。ビールも飲まないで、スマホを片手に持ったまま、餃子だけをムシャムシャ食べている。餃子を食べている最中に、冷やし中華が出てきた。冷やし中華と焼き餃子。そんな組み合わせ、食べたことがない。いや、その間にビールがあったら、あるいはありえる。だが、ビールなしの餃子と冷やし中華。汁が無く。逃げ場がないじゃないか。

 同じ様なセリフが本書にもあった。主人公が焼そばと餃子を食べながら考える。

しかし…まあいいけどやはり
焼そばと餃子だけだと
なんとなく堂々めぐりをしている
ようだ…


あぁ…白い飯
ここに白い飯とお新香の
ひとつもあれば…

 作画の谷口の描く主人公の表情はもう少し変化があってもいいのではないかと思った。


孤独のグルメ (扶桑社文庫)

孤独のグルメ (扶桑社文庫)