2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

加藤耕一『時がつくる建築』を読む

加藤耕一『時がつくる建築』(東京大学出版会)を読む。副題が「リノベーションの西洋建築史」とある。本書について、松原隆一郎が毎日新聞の書評欄で紹介している(6月18日)。それを要約しつつ簡単に紹介する。 著者は西洋建築史を古代までさかのぼり、再…

銀座K'sギャラリーの田中みづほ展を見る

東京銀座の銀座K'sギャラリーで田中みづほ展が開かれている(9月2日まで)。田中ははじめキルト作家として出発し、2003年から美術作家に転向したと画廊の壁に貼られた簡単な略歴にある。フランスの「ル・サロン展」や「サロン・ドートンヌ」に出品していた…

ギャラリーなつかの吉田収展を見る

東京京橋のギャラリーなつかで吉田収展が開かれている(9月9日まで)。吉田は1960年鳥取県生まれ、1985年武蔵野美術大学を卒業している。1985年かねこ・あーとギャラリーで初個展、以来ルナミ画廊、ときわ画廊、トキ・アートスペースなどで個展を繰り返して…

五十嵐太郎『日本の建築家はなぜ世界で愛されるのか』を読んで

五十嵐太郎『日本の建築家はなぜ世界で愛されるのか』(PHP新書)を読む。タイトルのやや胡散臭いのに反してとても面白かった。 まず「アメリカで学んだモダニズム」として、槙文彦と谷口吉生を紹介し、「メタボリズムを世界に売り出した」黒川紀章、「建築…

岡本勝人『「生きよ」という声 鮎川信夫のモダニズム』を読む

岡本勝人『「生きよ」という声 鮎川信夫のモダニズム』(左右社)を読む。鮎川の詩を中心とした作家論。岡本はそれを吉本隆明との交渉史を中心にして書く。ほかに「荒地」の仲間たちの北村太郎、黒田三郎、田村隆一、加島祥造、石原吉郎らが登場する。また鮎…

光嶋裕介『建築という対話』を読む

光嶋裕介『建築という対話』(ちくまプリマ―新書)を読む。副題が「僕はこうして家をつくる」とあり、今年37歳の若い建築家の自叙伝だ。父の転勤に伴って、アメリカで生まれて育ち、いったん日本に帰り、また父の転勤で中学からカナダへ行く。高校は早稲田大…

日本橋高島屋で沢田教一写真展を見る

東京日本橋高島屋の8階ホールで沢田教一写真展「その視線の先に」が開かれている(8月28日まで)。同展のちらしから、 1965年からベトナム戦争で米軍に同行取材し、最前線で激しい戦闘や兵士の表情など数多く写真に収めた写真家、沢田教一(1636−70)。輝…

木村資生『生物進化を考える』を読む

木村資生『生物進化を考える』(岩波新書)をやっと読む。分子進化の中立説を説いた進化論の大御所の本をようやく読んだ。発行されてから29年も経つ。評価の高い本だが、いままで敬遠してきた。ダーウィンの自然淘汰論やその後の総合説が気に入らなかったし…

「現代詩読本」特装版『さよなら 鮎川信夫』を読む

「現代詩読本」特装版『さよなら 鮎川信夫』(思潮社)を読む。鮎川信夫は1986年10月に自宅で倒れて亡くなった。66歳だった。『現代詩読本』に追悼号が組まれ、50人以上が寄稿した。さらに鮎川の詩から代表詩が3人(北村太郎、長谷川龍生、北川透)によって6…

ギャラリー58の松見知明展を見る

東京銀座のギャラリー58で松見知明展が開かれている(8月26日まで)。松見は1984年、福井県生まれ。2010年に福井大学教育地域科学部美術教育サブコースを卒業し、2012年に同大学大学院教科教育専修美術専攻を修了している。初個展は2011年にこのギャラリー58…

今野真二『かなづかいの歴史』を読む

今野真二『かなづかいの歴史』(中公新書)を読む。目次を見ると、「仮名の成立とかなづかい」「平仮名で日本語を書く」「片仮名で日本語を書く」「中世から近世にかけてのかなづかい」「明治期のかなづかい」「『現代仮名遣い』再評価」となっている。 本書…

野見山暁治画文集『目に見えるもの』を読む

野見山暁治画文集『目に見えるもの』(求龍堂)を読む。野見山の絵とその文章というか断章を組み合わせたもの。口絵の写真は鬼海弘雄が撮った野見山の肖像写真。 その一部を・・・ オンナに触れる夢は繰り返し見つづけた。今も見る。欲情するものはとっくに…

石原吉郎の詩集『サンチョ・パンサの帰還』のドン・キホーテとは誰か

現在多摩美術大学美術館で宮崎進展が開かれている。それに関連して宮崎進に関するシンポジウムが行われた。メインパネラーである詩人の高良留美子が、宮崎進同様シベリアに抑留されていた詩人石原吉郎に触れて、石原吉郎の処女詩集が『サンチョ・パンサの帰…

倉本一宏『戦争の古代日本史』を読む

倉本一宏『戦争の古代日本史』(講談社現代新書)を読む。磯田道史が毎日新聞で紹介していた(6月18日)。その書評の末尾。 本書は、現代の日本と朝鮮半島の複雑な関係の淵源を古代までさかのぼって丁寧に論じ、説明してくれる。古代からそこそこの大国であ…

埼玉県立近代美術館の遠藤利克展「聖性の考古学」を見る

埼玉県立近代美術館で遠藤利克展「聖性の考古学」が開かれている(8月31日まで)。遠藤は1950年生まれ、これまでヴェネツィア・ビエンナーレやドクメンタなどの国際的な舞台で活躍してきた。作品は大きな木を使い、加工したあとで焼いて黒く焦がしている。と…

三木成夫『内臓とこころ』を読む

三木成夫『内臓とこころ』(河出文庫)を読む。35年ほど前に三木が保育園で行った講演を本にしたものの文庫化。単行本は1982年に出版されており、それが三木の処女作だったという。すぐ後に名著と評価の高い『胎児の世界』(中公新書)が出版されており、そ…

多摩美術大学美術館で宮崎進展を見る

もう10年も前になるが、東京日本橋にギャラリー汲美という日本の現代美術を扱っている企画画廊があった。画廊主の磯良さんが亡くなって画廊も閉廊した。磯良さんははじめコレクターだった。よく通っていた西新宿にあった杏美画廊の信藤さんに将来画廊を開き…

千葉聡『歌うカタツムリ』を読む

千葉聡『歌うカタツムリ』(岩波科学ライブラリー)を読む。カタツムリという地味な生物を研究対象としている進化論の本だ。標題の所以は200年前ハワイの古い住民たちがカタツムリが歌うと信じていたことによる。19世紀の半ばハワイでのカタツムリの研究を通…

東京オペラシティアートギャラリーの荒木経惟展「写狂老人A」を見る

東京オペラシティアートギャラリーの荒木経惟展「写狂老人A」が開かれている(9月3日まで)。写狂老人Aとは葛飾北斎の晩年の号「画狂老人卍」に倣って付けた由。 最初の部屋は「大光画」と題されていて、人妻のヌード写真が圧倒する量で展示されている。弁証…

久保田万太郎『浅草風土記』を読む

久保田万太郎『浅草風土記』(中公文庫)を読む。浅草をめぐるエッセイを集めたもの。久保田は明治22年東京浅草生まれ、昭和38年に亡くなっている。小説のほか戯曲を書き、岸田國士らとともに文学座を創立した。 「雷門以北」が昭和2年の作。そこで10年前の…

コバヤシ画廊の太田三郎展「POST WAR 72世紀の遺書」を見る

東京銀座のコバヤシ画廊で太田三郎展「POST WAR 72世紀の遺書」が開かれている(8月19日まで)。太田は1950年山形県生まれ。1971年に鶴岡工業高等専門学校機械工学科を卒業している。1980年よりシロタ画廊をはじめ個展を多数開いている。 今回は「POST WAR …

行方昭夫 編訳『たいした問題じゃないが』を読む

行方昭夫 編訳『たいした問題じゃないが』(岩波文庫)を読む。副題が「イギリス・コラム傑作選」というもの。編訳者の行方が解説で「20世紀初頭に活躍したガードナー、ルーカス、リンド、ミルンという、4人のイギリスの名エッセイストの選集である」と書い…

猛毒の植物キョウチクトウとキダチチョウセンアサガオ

『一冊の本』8月号(朝日新聞出版)に「世界の毒草 キョウチクトウ」というエッセイが載っていた。著者は植松黎。キョウチクトウが有毒植物だということは知っていたが詳しくは知らなかった。それによると、キョウチクトウの主な毒成分はオレアンドリンで、…

木下直之『股間若衆』を読む

木下直之『股間若衆』(新潮社)を読む。副題が「男の裸は芸術か」というもの。2010年と2011年に『芸術新潮』に掲載された。街中に設置されている男性ヌード彫刻の股間の表現に注目したことから木下の調査研究が始まる。これは東京赤羽駅前に立っている川崎…

吉行淳之介『私の文学放浪』と『私の東京物語』を読む

吉行淳之介『私の文学放浪』(講談社文芸文庫)と『私の東京物語』(文春文庫)を読む。『〜文学放浪』は何度目か、『〜東京物語』は初めて読んだ。初めてだったとはいえ、ほとんどが読んだことのあるものばかりだった。 『〜文学放浪』は文字通り、吉行の文…

東京都写真美術館で「荒木経惟 センチメンタルな旅 1971-2017-」を見る

恵比寿の東京都写真美術館で「荒木経惟 センチメンタルな旅 1971-2017-」が開かれている(9月24日まで)。 展覧会のちらしから、 本展は、その膨大な作品群から、妻、「陽子」というテーマに焦点をあてた展覧会です。荒木自らが「陽子によって写真家になった…

東京都写真美術館で「コミュニケーションと孤独」を見る

恵比寿の東京都写真美術館でTOPコレクション「コミュニケーションと孤独」が開かれている(9月18日まで)。TOPコレクションは東京都写真美術館の収蔵品で構成された写真展で、今回展示されている写真家は、菊地智子、大塚千野、屋代敏博、中村ハルコ、やなぎ…

大沢文夫『「生きものらしさ」をもとめて』を読む

大沢文夫『「生きものらしさ」をもとめて』(藤原書店)を読む。生物物理が専門の名古屋大学・大阪大学名誉教授の生命論。毎日新聞に高樹のぶ子の書評が載っていた(7月9日)。 この本で一貫して著者が言いたかったことは「人間はゾウリムシと同じだ」とい…