東京オペラシティアートギャラリーの荒木経惟展「写狂老人A」を見る

   


 東京オペラシティアートギャラリー荒木経惟展「写狂老人A」が開かれている(9月3日まで)。写狂老人Aとは葛飾北斎の晩年の号「画狂老人卍」に倣って付けた由。


 最初の部屋は「大光画」と題されていて、人妻のヌード写真が圧倒する量で展示されている。弁証法の「量が質に転換する」というのが納得できる。人妻とはいいながら、みな中年から初老の女性たちだ。体は若いのに顔が老けていたり、顔が若いのに体が老けていたり、どちらも老けているのやどちらも若いのがいる。ふと吉永小百合のことを連想して、彼女もこんなのだろうかと思ってしまった。すみません。




 次の部屋が「空百景」と「花百景」だ。それぞれ100枚ずつの写真で構成されている。



 ついで「写狂老人A日記」。すべてに刻印されている日付7月7日は亡き妻陽子さんとの結婚記念日だという。678点の写真から構成されている。


 「非日記」はスライドショー形式の映像。3面のマルチスクリーンで映し出されている。
 「遊園の女」とは、遊郭から逃げようとする遊女をイメージしている。女衒である荒木が捕らえて折檻している設定だ。



 写真には技術の側面と写されている画像の情報という意味がある。秋山庄太郎の女のポートレート篠山紀信の撮る女性という撮影技術はとても優れている。アラーキーも優れた技術を持っていたのだろうが、ある時からそれを捨てていると見える。アラーキーの手法はスナップで、土門拳以来の現実の記録を目指しているような姿勢をとっている。しかしそれは形ばかりで、真実の記録など考えてはいない。しばしばタイトルにつかう「偽日記」が表しているようにフィクション=演出なのだ。猥雑な現実をスナップの手法で演出すること。また「性」、エロを重要なキーワードにしている。
 本展と妻陽子さんを撮った東京都写真美術館での荒木経惟展を併せ見てほしい。
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荒木経惟展「写狂老人A」
2017年7月8日(土)―9月3日(日)
11:00−19:00(金・土は20:00まで)
月曜日休館
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東京オペラシティアートギャラリー
東京都新宿西新宿3-20-2
電話03-5777-8600(ハローダイヤル)
https://www.operacity.jp/ag/
京王新線初台駅下車