2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧

府中美術館の小山田二郎展を見る

府中美術館で小山田二郎展が開かれている(2月22日まで)。 最近読んでいるドナルド・キーン/角地幸男・訳『日本文学史 近代現代篇五』(中公文庫)の「太宰治と無頼派」の項で、キーンが織田作之助について書いている。 『堕落論』で知られる坂口安吾は、…

飯田市美術博物館の「伊那谷の洋画家たち」

長野県の飯田市美術博物館で「伊那谷の洋画家たち」が開かれている(3月15日まで)。伊那谷は諏訪湖から流れ下る天竜川が作った大きな谷。その長野県内に位置するところを伊那谷という。美術館のホームページから、 山に囲まれた風光明媚の地・伊那谷。ここ…

シモバシラと福寿草

朝の天気予報が今朝の最低温度が0℃近かったというので、いつもの公園にシモバシラができているか見に行った。もう仕事をしていない小父さんたち数人がすでに来ていて、指でバッテンをしてくれた。今日はシモバシラができていないという意味だ。 すぐ横には…

中沢新一『はじまりのレーニン』を読む

中沢新一『はじまりのレーニン』(岩波書店)を読む。本書はソ連崩壊3年後の1994年に発行されている。もうレーニンなんか過去の思想家だと思っていたが、本書を読んで考え方を改めた。 レーニンの著作というと『唯物論と経験批判論』を思い出す。昔購入した…

『誰も戦争を教えてくれなかった』を読む

古市憲寿『誰も戦争を教えてくれなかった』(講談社)を読む。1985年生まれの若い社会学者が、日本や海外の戦争博物館を訪ねて回るというユニークな本。ハワイのパールハーバーのアリゾナ・メモリアルから始まって、上海の南京大虐殺記念館を訪ね、広島の平…

ベントレー・コンティネンタルGT試乗記

今から10年ほど前に、自動車会社で設計の仕事をしている従兄弟にイギリスの名車ベントレーに乗せてもらった。知らない名前の車だったが、あとで調べたら映画監督伊丹十三の愛車だった。伊丹がヤクザに襲われて斬りつけられても抵抗しなかったのに、ヤクザが…

観劇のすすめ

とても面白い芝居が上演されるので、おすすめしたい。一つはエドワード・ボンド作『大いなる平和』、もう一つは井上ひさし作『父と暮せば』で、どちらも見る価値が大いにあると思う。 まず『大いなる平和』について。座・高円寺という劇場があり、劇場創造ア…

ヒノギャラリーの多和圭三展を見る

東京八丁堀のヒノギャラリーで多和圭三展が開かれている(1月31日まで)。多和は1952年愛媛県生まれ、1978年日本大学芸術学部美術学科彫刻専攻卒業、1980年日本大学芸術学部芸術研究所修了、2009年多摩美術大学彫刻科教授就任、現在に至る。 1981年真木画廊…

堀内康司の年賀状

先週まで長野県東御市にある梅野記念絵画館で遺作展が開かれていた堀内康司の年賀状を見る機会があった。ギャラリー美庵のNさんに仲介していただいて、年賀状の所有者であるHさんに会うことができた。Hさんは92歳、もう40年以上画廊を回っているコレクターだ…

『変愛小説集』を読む

岸本佐知子編訳『変愛小説集』(講談社文庫)を読む。「変」愛小説集であって、「恋」愛小説集ではない。岸本が選んだ英米作家10人の11編の短篇小説集。奇想天外な「変」愛小説を集めたもの。 まずアリ・スミスの「五月」。樹木に熱烈な恋をした話。相手が樹…

ギャラリー現のセシル・アンドリュ

東京銀座のギャラリー現でセシル・アンドリュCecile Andrieu展が開かれている(1月24日まで)。アンドリュは1956年フランス生まれ。ギャラリー現ではたびたび個展を開いている。 床に大きな丸い立体が8個並んでいる。これは「沈黙の石」と題されている。作…

「DOMANI・明日展2015」を見て

国立新美術館で「DOMANI・明日展2015」が開かれている(1月25日まで)。副題が「文化庁芸術家在外研修の成果」というもので、文化庁が「将来の芸術界を担う芸術家を支援するため、若手芸術家を海外に派遣し、その専門とする分野について研修の機会を提供す…

大岡昇平『愛について』を読む

大岡昇平『愛について』(講談社文芸文庫)を読む。恋愛に関する10篇の短編小説集。それぞれの登場人物たちが他の短篇にも登場する。少しシュニッツラーの『輪舞』を思わせる。いわゆる風俗小説に似ているが、それでいて作家が主人公たちを作り上げている感…

アヌイの『アンチゴーヌ』を見る

先日、12日の夜、ジャン・アヌイ作『アンチゴーヌ』を見た。演出が栗山民也、新国立劇場演劇研修所公演で、第8期生修了公演だった。すばらしかった。アヌイはギリシャ悲劇ソフォクレスの『アンティゴネ』を翻案してこの芝居を書いている。 私は高校生の頃こ…

損保ジャパン日本興亜美術館「クインテットII−五つ星の作家たち」の平体文枝が良い

東京新宿の東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で「クインテットII−五つ星の作家たち」展が開かれている(2月15日まで)。5人の作家なのでクインテット(五重奏)。具体的には、富岡直子、平体文枝、岩尾恵都子、水村綾子、山本晶の5人。昨年の「ク…

森山大道『通過者の視線』を読む

森山大道『通過者の視線』(月曜社)を読む。森山はストリート・スナップのカメラマン。すでに120冊以上の写真集を出版し、美術館での写真展も、ロンドンのテート・モダンやパリのカルティエ現代美術財団、サンフランシスコ近代美術館をはじめとするアメリカ…

荷風の絶倫

野口冨士男『わが荷風』(岩波現代文庫)に荷風の絶倫ぶりが紹介されている。 もともと荷風には詠嘆癖があって、自身の健康を実質以上に低く表現する傾向があるので、彼が好んで吐く弱音を正直に受け取ることは危険きわまるものの、『墨東綺譚』が発表された…

ドナルド・キーン『日本文学史』を読む

ドナルド・キーン『日本文学史 ――近代・現代篇7』(中公文庫)を読む。原著は英語で書かれており、英米の読者向けに書かれたものだろう。本篇は短歌と俳句を取り上げている。英米人向けとはいえ、私も短歌史、俳句史について知らないのでちょうど良い入門書…

木田元『マッハとニーチェ』を読む

木田元『マッハとニーチェ』(講談社学術文庫)を読む。副題が「世紀転換期思想史」というもの。これが意外におもしろかった。ニーチェはともかく、マッハなんてすでに過去の哲学者だと思っていたのは私の無知だった。転換期における重要な存在だった。 雑誌…

山本弘のドローイング「猫」

山本弘のドローイング。サインはあるが制作年が書かれていない。30代後半ころ描かれたものか。 妻の愛子さんが猫好きで1匹飼っていた。ノアっていう名前だったと思う。モンパルナス派の画家たちのモデルの名前から採ったと言っていた。もう46年も前のことだ…

浮気のすすめ?

朝日新聞の人生相談「悩みのるつぼ」で、「新婚2カ月後から主人に8カ月間浮気をされ」た女性が、自信を失ってしまったと相談を寄せている(1月10日)。回答者は三輪明宏。その回答から、 そもそも浮気をしない男は「無形文化財」だと思ってください。希少…

山本弘のドローイング

山本弘のドローイング。1969年2月のサインがあるので、38歳のときの作品。中央に丸く顔が描かれており、その下に体が描かれている。右手を横に出し、両足が踏ん張っている。右手に棒を持っているように見える。左手にあるのは樹木だろうか。頭上に葉の繁っ…

Oギャラリーの志村冬佳展「牛人と牛人のあいだ」がおもしろい

東京銀座のOギャラリーで志村冬佳展「牛人と牛人のあいだ」が開かれている(1月11日まで)。志村は1980年山梨県生まれ、2002年に筑波大学芸術専門群を卒業し、2004年に同大学芸術研究科洋画コースを修了している。2001年に牛久の画廊で初個展、その後銀座の…

筆文字のロゴタイプ

昔小田実が「アメリカ」という紀行文で、初めてアメリカに行った時アメリカの女性の美醜が分からなかったと書いていた。極端なのは分かる、中間が分からない。しかしそれもアメリカに何カ月も暮らすうちに徐々に両側から埋まっていって、最後は日本人女性を…

塚本邦雄『定家百首』を読む

塚本邦雄『定家百首』(河出書房新社)を読む。前衛歌人塚本が天才歌人藤原定家の数多い和歌から秀歌百首を選んでその現代語訳と鑑賞をまとめたもの。定家といえば新古今の最重要歌人で極めて技巧的な複雑な歌を詠んだ歌人、それを鑑賞する塚本は前衛歌人の…

3紙の『献灯使』の書評

多和田葉子『献灯使』(講談社)の書評が3大紙に掲載された。毎日新聞=鴻巣友季子(2014年11月9日)、朝日新聞=佐々木敦(2014年12月14日)、読売新聞=本田有希子(2015年1月4日)。3大紙が揃って書評に取り上げたのは私が気づかないだけでまだまだある…

篠田魔孤と久保田創二

昨年が没後50年だった無名の画家篠田魔孤については以前ここで紹介したことがある。 ・伝説の画家・篠田魔孤を誰も知らない(2007年1月7日) 上に掲載したような優れた絵を描いていながら無名のまま亡くなった。作品は散逸し、もうほとんど魔孤さんのこと…

多和田葉子『献灯使』を読む

多和田葉子『献灯使』(講談社)を読む。帯に「デストピア文学の傑作! 震災後のいつかの日本。」と書かれている。続けて「鎖国を続ける「日本」では老人は百歳を過ぎても健康で、子供たちは学校まで歩く体力もない――――子供たちに託された未来とは? 未曽有…

三好達治『詩を読む人のために』を読む

三好達治『詩を読む人のために』(岩波文庫)を読む。古い本だ。はじめ至文堂から1952年(昭和27年)に発行されたもの。三好は優れた詩人で『測量船』とか『駱駝の瘤にまたがつて』などの詩集がある。『測量船』は青空文庫でも公開されている。 http://www.a…

謹賀新年

謹賀新年 2015年元旦 山本弘の色紙。翌年の未年にちなんで、1978年か1966年に描かれたものだろう。立派な角のある雄の羊である。