ギャラリー現のセシル・アンドリュ

 東京銀座のギャラリー現でセシル・アンドリュCecile Andrieu展が開かれている(1月24日まで)。アンドリュは1956年フランス生まれ。ギャラリー現ではたびたび個展を開いている。
 床に大きな丸い立体が8個並んでいる。これは「沈黙の石」と題されている。作家の言葉。

このインスタレーションは、碁石から着想を得た作品からなり、それぞれ、外も内も国語辞典のページの断片から作られている(外周部はフランス語、内部は諸国語)。これらの辞書の遺物の表面は厚い皮で覆われ、作品に石の外観を与えている。石は見えるもの、触れるもの、語りえるものの象徴である。しかしながら言葉は、沈黙するにつれて次第に消えてゆき、石の深部、すなわち見えないもの、触れないもの、語りえないものの世界に、視線を誘いつつ、合流する。



 ギャラリーの左の壁面に黒く塗られたパネルが貼られている。「壁の中」と題されたこの作品はオランダ語の辞書が使われている。以下、作家の言葉。
       ・
現在多くの住まいの壁を覆う石膏ボードは、柔らかくて、人の声などの音を遮断するとともに、それらをひそかに保存する特性を持っている。
石膏ボードの各パネルを辞書の26部門の最初のページのコピーで覆い、一番目のパネルならば、aの文字全部をボードの中に押し込み、次にまわりの他の文字をインクでほぼ黒く塗りつぶして、aを際立たせた。二番目のパネルの文字bにも同じ操作を施し、順にアルファベットの26番目まで繰り返した。人間が存在する所では、すべてのものに言葉が吹き込まれていることを見せるためである。
       ・
(なぜか引用の記号が使えないので、このような表記にした)



 写真は全体像、パネルの右側、パネルの左側を示している。
 下の写真の上段左上から右に向かって、a、b、c、d、eと並び、下段は左から、n、o、p、q、rと続いている。a、d、e、n、rの使用頻度が高いのが分かる。qのパネルはほとんど真っ黒で、qが使われていないことも一目瞭然だ。コナン・ドイルのミステリ、シャーロック・ホームズの『踊る人形』を思い出した。踊っている人形の絵を使った暗号を、使用頻度の高い文字eから、ホームズがその謎を解いている。
 他に「書見台」と「無言」という作品が展示されている。開いた本のイメージと書見台をひとつにしたものと、やはりオランダ語辞書を使った作品。アンドリュはいつも言葉にこだわった作品を制作している。
       ・
セシル・アンドリュ展
2015年1月10日(土)−1月24日(土)
11:30−19:00(土曜日は17:30まで)日曜・祝日休廊
       ・
ギャラリー現
東京都中央区銀座1-10-19 銀座一ビル3F
電話03-3561-6869
http://g-gen.main.jp/