音楽
フリードリヒ・グルダ『俺の人生まるごとスキャンダル』(ちくま学芸文庫)を読む。グルダはウィーン出身の20世紀を代表するピアニスト、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集やモーツァルト、バッハなどクラシックの名盤を数多く録音したほか、作曲やジャズ…
片山杜秀『片山杜秀のクラシック大音楽家15講』(河出文庫)を読む。片山は近代政治思想史が専門の慶應義塾大学教授。でありながら吉田秀和賞も受賞した音楽評論家、それも近現代音楽を最も好むと言う異端の評論家だ。特に『ゴジラ』の映画音楽を作曲した伊…
青柳いづみこ『ヴィンテージ・ピアニストの魅力』(アルテスパブリッシング)を読む。ヤマハの会員誌『音遊人(みゅーじん)』に2012年から連載したもの。執筆時点でおおむね75歳以上のピアニストをヴィンテージ・ピアニストとして取り上げている。その数40…
本間ひろむ「日本のピアニスト」(光文社新書)を読む。類書に多い日本のピアニストを紹介するのではなく、明治以降の日本人によるピアノ開発の歴史を描き、それと関連して日本人のピアニストの歴史が語られている。 最初の日本人ピアニストは幸田露伴の妹の…
吉松隆『調性で読み解くクラシック』(ヤマハミュージックメディア)を読む。「1冊でわかるポケット教養シリーズ」の1冊だ。ヤマハが出版もしているなんて知らなかった。現代音楽作曲家の吉松隆が初心者向けに音楽の調性について解説している。 音楽の基本…
青柳いづみこ『ショパン・コンクール見聞録』(集英社新書)を読む。2021年に行われた第18回ショパン国際ピアノコンクール、そのコンクールを現場で見て聴いた青柳いづみこの臨場感あふれる報告書。青柳は現役のプロピアニストで演奏会を繰り返していて、し…
村上春樹『一人称単数』(文藝春秋)を読む。春樹はあまり読んでこなかった。特に長篇はちょっと苦手だったが、短篇集は好きだった。 さて『一人称単数』だが、いつもに比べて淡々とした印象だ。超常現象的なところが少ないし、エッセイのような味わいだ。「…
時事通信が2月3日にモニカ・ヴィッティの訃報を伝えていた。 【AFP=時事】イタリアの女優モニカ・ヴィッティさんが死去した。90歳。文化相が2日、発表した。ヴィッティさんは、ミケランジェロ・アントニオーニ監督作品への出演で知られる。 ローマ生…
24日は日経ホールでオペラ『パリアッチ(道化師)』を見た。レオンカヴァッロ作曲の二幕オペラ、日経ホールで1回限りの舞台だった。ちらしには、「妻ネッダの不貞を知ったカニオ(パリアッチョ)は、怒りと悲しみを隠し、道化芝居の舞台に立つが、次第に芝居…
岡田暁生『音楽の危機』(中公新書)を読む。去年発売された時、コロナ禍で生演奏が聴けなくなったことを嘆いている時事的な本かと手に取らないでいたら、今年小林秀雄賞を受賞したのであわてて購入した。その授賞理由が、 「音楽」というものの生々しさと理…
小沼純一『武満徹逍遥』(青土社)を読む。内容によく沿ったタイトルだと思う。武満徹に寄り添った散歩。360ページを超える本書に33編の武満に関するエッセイ。武満徹という作曲家を巡る何とも薄味の評論集。小沼を読むのは初めてなので略歴を見る。「1959年…
吉田秀和『ブラームス』(河出文庫)を読む。吉田秀和は2012年に98歳で亡くなるまで長年にわたって音楽評論を書き継いできた。それらは時々の新聞雑誌に掲載され、出版された書籍も数多く、さらに全集も発行されている。本書は、吉田が発表してきたブラーム…
むかし入手しそこなってほんの少し悔やんでいることがある。安室奈美恵のサインと吉行淳之介の色紙だ。 伯母が再婚した相手は茨城県の医者だった。その伯父の娘婿Sさんがやはり医者で病院長をしていた。ある時伯母が私に安室奈美恵さんのサイン欲しかったら…
吉行淳之介のエッセイ「赤とんぼ騒動」に、山田耕筰の「赤とんぼ」のメロディがシューマンの曲から流れてきたというエピソードが紹介されている。シューマンの「ピアノと管弦楽のための序奏と協奏的アレグロ ニ短調作品134」から赤とんぼが飛びだしてきたと…
青柳いづみこが『図書』2月号から「響きあう芸術 パリのサロンの物語」という連載を始めた。その第1回が「サロンという登竜門」、若く無名でお金のない芸術家が世に出る手段は、21世紀ではショパン・コンクールやチャイコフスキー・コンクールだが、19世紀は…
沼野雄司『現代音楽史』(中公新書)を読む。これがとても素晴らしい。沼野は東京藝術大学大学院で音楽研究科を修了し、現在桐朋学園大学教授。 現代音楽について、膨大な数の作曲家を取り上げ、その代表作を詳しく紹介している。しかもそれが単なる羅列では…
NHKFMを聴いていたらローラ・ライトの歌う 「The Last Rose of Summer」が紹介された。それはとてもきれいな歌声だった。 https://www.youtube.com/watch?v=UUpG_mlU1dM この「The Last Rose of Summer」は日本では「庭の千草」の名前で小学校で歌わされた記…
レオン・フライシャーが亡くなったと朝日新聞に報じられていた(8月4日)。 フライシャーはアメリカのピアニスト、8月2日、92歳で亡くなった。 記事に「30代で筋肉が収縮する難病となり、長年にわたって左手で演奏を続け、指揮、教育に活動の場を広げた」と…
プロコル・ハルムの「青い影」は世界的にヒットした名曲だ。ジョン・レノンが絶賛したと聞いている。You Tubeで聴いていたが、訳詞が難しくて意味が分からない。最初の訳詞がこれ、 私たちはファンダンゴみたいにスキップで 部屋の向こうまでカートを蹴飛ば…
私にはチープなお宝が2つある。一つは映画『スエーデンの城』のサウンドトラックのドーナツ盤レコード。映画はモニカ・ビッティ(ママ)主演、ロジェ・バディム監督、フランソワズ・サガン原作だった。レコードのA面が「スエーデンの城」、B面が「恋の終末」…
河合隼雄・阪田寛夫・谷川俊太郎・池田直樹『声の力』(岩波現代文庫)を読む。本書は2001年に小樽市で行われた絵本・児童文学研究センター主催の講演・討議を記録したもの。4人が子供たちの歌や語りについて話している。私にはあまり縁のない世界で読んでい…
片山杜秀『革命と戦争のクラシック音楽史』(NHK出版新書)を読む。2019年4月~6月、朝日カルチャーセンターで行われた講座「クラシック音楽で戦争を読み解く」の内容を再構成したもの、とある。ところどころ講義中を思わせる言葉遣いが残されているのは、片…
岡田暁生『音楽と出会う』(世界思想社)を読む。第1章「音楽は所有できるのか?」を読み始めて、この読書は失敗だったと思ったが、章の終りに「My songがOur songになるとき」という小見出しがあって、伝説的な《ケルン・コンサート》のレコードの大ヒット…
伊熊よし子『35人の演奏家が語るクラシックの極意』(学研プラス)を読む。クリスティアン・ツィメルマン、チョン・キョンファ、ダニエル・バレンボイム、アンネ=ゾフィー・ムター、アファナシエフ、ギドン・クレーメル、サイモン・ラトルなど錚々たる名手…
近藤譲『ものがたり西洋音楽史』(岩波ジュニア新書)を読む。優れた西洋音楽通史であって、ジュニアだけに読ませるのはもったいない。近藤は現代音楽の作曲家であり、実にていねいに各時代の音楽を語ってくれる。 とても興味深く読んだと言いたいところだが…
片山杜秀+山崎浩太郎『平成音楽史』(アルテスパブリッシング)を読む。聞き手が田中美登里となっていて、これは衛星デジタル音楽放送「ミュージックバード」の121チャンネル、「ザ・クラシック」で2018年8月19日に放送された4時間番組を本に起こしたものな…
ベーラ・バルトーク『バルトーク音楽論選』(ちくま学芸文庫)を読む。ハンガリーの作曲家バルトークの音楽論をちくま学芸文庫オリジナルで編集したもの。バルトークといえば民俗音楽を収集し、それを自分の作曲の糧にもした作曲家だ。最初の章でどのように…
片山杜秀『鬼子の歌』(講談社)を読む。副題が「偏愛音楽的日本近現代史」というもの。雑誌『群像』に2年半ほど連載していた日本のクラシック音楽の作曲家たちの代表曲の紹介と解説。片山は日本政治思想史の専門家だから、読み応えのある見事な評論集になっ…
片山杜秀『音楽放浪記 日本之巻』(ちくま文庫)を読む。先日読んだ『音楽放浪記 日世界巻』の姉妹編だ。本書の元はやはり月刊誌『レコード芸術』2000年から2008年にかけて連載した「傑作!? 問題作!?」で、それをアルテスパブリッシングという出版社が『音盤…
片山杜秀『音楽放浪記 世界之巻』(ちくま文庫)の巻末の参考音盤ガイドがとても濃い~内容で興味深い。その一部を紹介する。 6.さようなら、クライスラー「オール・アメリカン・ショーケース」 マントヴァーニ・オーケストラ〔輸・Vocalion〕 クライスラ…