本間ひろむ「日本のピアニスト」を読む

 本間ひろむ「日本のピアニスト」(光文社新書)を読む。類書に多い日本のピアニストを紹介するのではなく、明治以降の日本人によるピアノ開発の歴史を描き、それと関連して日本人のピアニストの歴史が語られている。

 最初の日本人ピアニストは幸田露伴の妹の香田延だった。その弟子の久野久が日本でベートーヴェン弾きとして絶賛されヨーロッパへ渡る。しかし彼女は初歩からの学び直しを指摘され自ら命を絶つ。

 戦後、斎藤秀雄吉田秀和に呼びかけて「子供たちの音楽教室」を立ちあげ、小澤征爾堤剛、江戸京子、中村紘子らがそこから育った。高橋悠治もここで学んだ。

 フランス帰りの安川加壽子は東京芸術大学で教え、その門下から田中希代子が生まれた。

 ついでヤマハとカワイなどのピアノメーカーの歴史が語られる。両社はアメリカに進出し成功を収める。また電子鍵盤楽器が発売される。ヤマハクラビノーバやデジタル・シンセサイザーカシオトーンなどだ。

 海外で活躍したピアニストは内田光子だ。館野泉はヘルシンキで活躍する。彼らに続いて熊本マリ仲道郁代河村尚子、金子三勇士、アリス=紗良・オットらの名前が挙げられる。

 最後にショパン・コンクールに参加した日本人ピアニストたちが紹介される。

 付録は日本のピアニスト・ディスコグラフィ30として、中村紘子内田光子から反田恭平、小林愛美まで30人の代表的なCDが挙げられる。

 ちょっとユニークな構成でおもしろく読んだ。あとがきによると、本間は家で毎日ヤマハクラビノーバを弾いているという。