2016-07-01から1ヶ月間の記事一覧
私は山本弘の弟子だった。山本弘は飯田市の画家だが生前それほど多くの飯田市民に知られてはいなかった。知っている人もあの酔っ払いの画家かという程度の認識だったろう。事実いつも酔っ払った姿で市内をうろつき、悪口雑言は毎度のことだった。人の個展を…
長嶋有『猛スピードで母は』(文春文庫)を読む。佐野洋子のエッセイを読んでいると、古道具屋ニコニコ堂のやる気のなさそうな主人が何度も出てくる。佐野はそのやる気のなさ加減が気に入っているようでもある。ニコニコ堂の息子がユウ君と言って、運転手を…
東京銀座のギャラリー58で松見知明展が開かれている(8月6日まで)。松見は1984年、福井県生まれ。2010年に福井大学教育地域科学部美術教育サブコースを卒業し、2012年に同大学大学院教科教育専修美術専攻を修了している。初個展は2011年にこのギャラリー58…
東京銀座のガルリSOLで松尾玲央奈展が開かれている(8月6日まで)。「画廊からの発言−新世代への視点2016」の企画の一つで、ガルリSOLでは初個展以来ここで8回も個展をしている松尾を選んだ。 松尾は1984年、福岡県生まれ。2007年に女子美術…
東京銀座のコバヤシ画廊で村上早展が開かれている(8月6日まで)。「画廊からの発言−新世代への視点2016」でコバヤシ画廊が選んだのが、まだ若い村上だ。彼女は1992年群馬県生まれ。2014年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科版画選考を卒業し、2016年同大学…
東京銀座のなびす画廊で佐藤万絵子展「窓枠を押しつぶせ空」が開かれている(8月6日まで)。「画廊からの発言−新世代への視点2016」でなびす画廊が選んだ作家が佐藤万絵子だ。佐藤は1975年、秋田県生まれ。1998年に武蔵野美術大学油絵学科を卒業し、2000年…
今日から始まる「画廊からの発言−新世代への視点2016」は、恒例の13軒の画廊が推薦する40歳以下の若手作家13人の個展だ。現代美術の代表的な貸画廊が選んだ作家たちだから見逃せない重要な企画で、7月25日から2週間開かれる(8月6日まで)。 13の画廊と…
佐野洋子『覚えていない』(マガジンハウス)を読む。主に1990年前後に雑誌等に掲載されたエッセイなどを集めたもの。佐野を読む面白さは、女性の極論的本音を知ることができると思われるからだ。女性の思考が男性とちょっと異なると感じたのは4コママンガの…
グレッグ・イーガン『TAP』(河出文庫)を読む。編訳者の山岸真があとがきで書いている。 ……〈SFマガジン〉創刊700号記念のオールタイム・ベスト投票(2014年7月号発表)では、海外作家部門で第1位、海外短篇部門で「しあわせの理由」が第2位になったのをは…
佐野洋子『私の息子はサルだった』(新潮社)を読む。ケンちゃんという男の子の保育園時代から高校生の頃までを書いている。発行が2015年の5月、ちなみに佐野は2010年に亡くなっている。最後に「あとがきのかわり」と題して広瀬弦が書いている。広瀬は佐野の…
東京上野の東京都美術館で「ポンピドゥー・センター傑作展」が開かれている(9月22日まで)。ポンピドゥー・センター所蔵の美術品71点が都美術館に並べられている。ピカソ、マティス、シャガール、カンディンスキー、デュシャン、ジャコメッティなど、錚々た…
東京銀座のギャラリーゴトウ2nd roomで森本秀樹展「メモランダム」が開かれている(7月23日まで)。森本は1951年、愛媛県宇和島出身。ギャラリー汲美をはじめ、ギャラリーゴトウ、小田急デパートなど数多くの個展を行っている。 今回の個展は小さなドローイ…
パトリック・ジュースキント/池内紀・訳『ゾマーさんのこと』(文藝春秋)を読む。佐野洋子がエッセイで「生涯ただ1冊といわれたらこれです」と書いていた。絵本のような挿絵が入っており、中高校生向けといった感じの本だった。訳者の池内があとがきで書い…
佐野洋子『食べちゃいたい』(ちくま文庫)を読む。39種類の野菜や果物をテーマに、それらを擬人化してちょっとエロチックな文章を書いている。いや擬人化とは少し違っている。擬物化? 「パセリ」という章、 どうして女はあんなに度々ヘアスタイルを変える…
佐野洋子『私の猫たち許してほしい』(ちくま文庫)を読む。著者初めてのエッセイとのこと。すばらしい。 植物園にばらを観に行った。静かな植物園で、ばら園の一角だけがざわめいていて、音もないのにけたたましいと書いている。ばら園をこんな風に書いてい…
佐野洋子『友だちは無駄である』(ちくま文庫)を読む。匿名の誰かのインタビューに答えるという形式をとっている。佐野の語る友情論だ。最初「ちくまプリマ―ブックス」というヤング向けの新書として刊行された。匿名のインタビューアーが子供の頃の佐野の交…
佐野洋子『問題があります』(筑摩書房)を読む。主に2000年代にあちこちの新聞雑誌に掲載した短いエッセイを集めたもの。本文250ページに50編近くが掲載されている。つまり1編が数ページと短いものばかりだ。ところがその短いエッセイが深いのだ。これには…
福島正実『未踏の時代』(ハヤカワ文庫)を読む。副題が「日本SFを築いた男の回想録」とある。早川書房から刊行された雑誌『S-Fマガジン』を企画し初代編集長を務めた福島自身の回想録だ。 福島は明治大学文学部を中退し、早川書房に入社する。早川書房は195…
東京新宿の新宿眼科画廊でろくでなし子個展「わたし、出馬しまんこ! 新党まんこ党」が開かれている(7月20日まで)。ろくでなし子は1972年、静岡県生まれ、大学を卒業後デザインの専門学校に通うも、デザインの図面描きが退屈で中退する。1997年、講談社「…
東京大田区鵜の木のギャラリーHasu no hanaで立原真理子展『帳と青』が開かれている(7月19日まで)。立原は1982年茨城県生まれ、2006年に女子美術大学芸術学部洋画専攻を卒業し、2008年に東京芸術大学大学院美術研究科修士課程を修了している。2007年に銀…
佐野洋子対談集『ほんとのこと言えば?』(河出書房新社)を読む。小沢昭一、河合隼雄、明石家さんま、谷川俊太郎、大竹しのぶ、岸田今日子、おすぎ、山田詠美、阿川佐和子と対談している。やはり対談というのは相手があるので、いつもの佐野洋子のパワーが…
佐野洋子『役にたたない日々』(朝日文庫)を読む。2003年から2008年にかけて書かれたエッセイ集。佐野が65歳から70歳までの5年間に書いて、その2年後に亡くなった。本書で身辺雑記を綴っている。それが半端ではなく、ほとんど壮絶に近い生活だ。きわめて魅…
東京京橋のギャラリー川船で「夏期正札市展」が開かれている(7月12日まで)。結構広いギャラリーに200点近くの作品が並んでいる。 高い作品はやはり長谷川利行の油彩で、180万円、150万円、130万円あたり、ついで棟方志功の油彩が125万円、北川民次の油彩…
『自選 大岡信詩集』(岩波文庫)を読む。とても巧い詩人だ。十代からすでに優れた詩を書いている。とくに修辞の技巧が群を抜いている。シュールレアリスムの手法を自家薬籠中のものにしている。イメージが大胆に飛躍する。 大岡は美しい娘を歌う。青春の恋…
皆川典久+東京スリバチ学会『東京スリバチ地形入門』(イースト新書Q)を読む。スリバチ地形とは、東京の山の手の台地に見られる窪地を指している。その武蔵野台地には支流である小さな川がいくつもあり、その一番の上流から谷が始まっている。そこを「谷頭…
東京日本橋本町のギャラリー砂翁で和田祐子・杉原民子展が開かれている(7月15日まで)。和田はアメリカと日本でカリグラフィーを欧米の講師(米・ドイツ・ベルギー・イタリア・英)から学んだ後絵画に転じる。2008年にベルギーの画廊で初個展、日本に帰国…
佐野洋子『神も仏もありませぬ』(筑摩書房)を読む。前著『死ぬ気まんまん』より10年ほど前の著作。皮肉たっぷり言いたい放題のようで繊細な面も見えている。身辺のことを綴ったものがそのまま優れたエッセイになっている。とても魅力的な人だ。 身辺を綴り…
常盤新平『翻訳出版編集後記』(幻戯書房)を読む。「出版ニュース」の1977年から1979年にかけて連載したものを単行本にした。常盤は2013年に81歳で亡くなっている。 本書は常盤が早川書房に勤めた1959年から翻訳出版に携わっていた10年間のことを中心に書か…
東京渋谷区神宮前のMAHO KUBOTAギャラリーで安部典子展「日々変容するカッティングの連続」が開かれている(7月30日まで)。安部は1967年、埼玉県生まれ。1990年に武蔵野美術大学油絵学科を卒業している。1992年にギャラリーQで初個展、その後ギャラリーな…
佐野洋子『北京のこども』(小学館P+Dブックス)と『死ぬ気まんまん』(光文社)を続けて読む。前者は佐野洋子の、1938年(昭和13年)北京で生まれて、1945年(昭和20年)北京を去るまでの7年間の思い出を書いている。それにしてもすごい記憶力だ。私だった…