コバヤシ画廊の村上早展がとてもいい

 東京銀座のコバヤシ画廊で村上早展が開かれている(8月6日まで)。「画廊からの発言−新世代への視点2016」でコバヤシ画廊が選んだのが、まだ若い村上だ。彼女は1992年群馬県生まれ。2014年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科版画選考を卒業し、2016年同大学大学院修士課程版画コースを修了、現在同大学院博士後期課程に在学中だという。
 今回が初個展。しかし、2015年に「FACE展2015損保ジャパン日本興亜美術賞展」優秀賞や「シェル美術賞展」入選、また「山本鼎版画大賞展」大賞受賞など、輝かしい受賞歴を誇っている。





 村上は銅版画を作っているが、カタログのテキストに次のように書いている。

人は誰しも生まれ育っていく中で様々なものに出会い影響を受け、形作られていく。その中でも幼児の記憶は特別で、忘れていても心が覚えている。自身から抽出したモチーフを物語に孕ませ、銅の版に傷として表す。私にとって版は「セイブツ」。腐食は腐敗であり、版上の傷は人体と心の傷、紙に刷り取れるインクは血である。

 造形的な完成度の高さにも驚いたが、テキストに見る非凡な知性にも感心した。履歴を読んで、そういえば昨年のeitoeikoのグループ展で見たことを思いだした。数々の受賞歴を知って、なるほど優れた才能には誰しも感嘆するのだと納得した。村上に師事した先生を聞くと高浜利也だという。高浜は25年ほど前ギャラリーなつかで見てから注目している版画家だ。優れた師が才ある弟子を指導していると知って、美の連鎖という印象を持った。
 画廊の奥に事務室を兼ねた小さなスペースがある。そこの壁面に村上の小さな版画作品がびっしりと展示されている。それらの作品もとても良く、しかも最低価格が5,000円からと大変安価だ。そちらも見られることをお薦めする。
       ・
村上 早展
2016年7月25日(月)−8月6日(土)
11:30−19:00(最終日17:00まで)、日曜休廊
       ・
コバヤシ画廊
東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1
電話03-3561-0515
http://www.gallerykobayashi.jp/