ガルリSOLの松尾玲央奈展を見る

 東京銀座のガルリSOLで松尾玲央奈展が開かれている(8月6日まで)。「画廊からの発言−新世代への視点2016」の企画の一つで、ガルリSOLでは初個展以来ここで8回も個展をしている松尾を選んだ。
 松尾は1984年、福岡県生まれ。2007年に女子美術大学芸術学部立体アート学科を卒業し、2012年に同大学大学院美術研究科美術専攻後期博士課程を修了している。博士論文は「抽象性と感情移入が出逢う瞬(とき)」とある。
 初個展は2007年ガルリSOLで行い、以来今回が9回目。そのほか女子美アートミュージアムや銀座gallery女子美など個展は12回を数える。
 今回のカタログに書かれた松尾の言葉を引く。

幾何学的な要素を含む形態の制作を行っていくなかで、/この様な形態に感情移入することが出来るとすれば、/どのような点においてそれを行うことができるのか…/さらに、抽象彫刻と感情移入との間には、どのような関係が存在するのか…/一人でも多くの方に、/抽象彫刻の抽象性と感情移入が出逢う瞬間を感じて頂ければ幸いです。





 画廊にはアルミの立方体8個を連結し着色した抽象彫刻が2つ置かれている。今までの松尾の作品は中心に向かって凝縮した形のものだった。また着色はされずに素材の金属色をそのまま出していた。
 今回はメタリックなパステル調の色彩が施され、いままでの凝縮した形に比べると開放的、散開的な印象がある。色彩が施されたことで、前回までの固く不愛想な印象が薄れ、少しとっつきやすいような感じを持った。8個の立方体は2個だけが一回り小さく、無機的な形態にわずかに表情を見せている。
 松尾の言う「抽象性と感情移入が出逢う瞬間」をどのように理解すればよいのか私には分からない。それは松尾の論文を読んでいないからだが、あるいはこんな印象を綴れば良いのだろうか。
 立方体で作る大きな作品2体のほか、壁面にはレリーフ状の作品や、かつて発表を重ねていた凝縮したような作品のマケットが並べられている。これらを見れば、松尾が内省から外部へと視線を向けてきたとも思えるのだが……。
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松尾玲央奈
2016年7月25日(月)−8月6日(土)
11:30−19:00(最終日17:00まで)日曜休廊
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ガルリSOL
東京都中央区銀座1-5-2 西勢ビル6F
電話03-6228-6050
http://www005.upp.so-net.ne.jp/SOL/