2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧

池端宏「稲作渡来民」を勧める

以前、私は池橋宏の著書を紹介して、「稲作の起源、中尾佐助の誤り」(2007年2月9日)を書いた。稲の起源を長江中・下流域で多年生稲の株分けから始まったとする画期的な新説だった。池端宏は水稲の育種が専門の学者だが、稲作の起源論からたどって日本へ…

野見山暁治の言葉

6月14日地下鉄副都心線が開業した。池袋から渋谷までの8つの駅に現代美術家たちの陶板や壁画、ステンドグラスが設置された。山口晃(西早稲田駅)や中山ダイスケ(東新宿駅)、千住博(新宿三丁目駅)、山本容子(新宿三丁目駅)、吉武研司(北参道駅)、…

わが村の二人称

1967年に北海道大学に入学した小中高と一緒だった友人のK君が、同級生に「てめえ、どっから来たのよ?」と聞いて、相手は喧嘩をふっかけられたと思ったという。K君にしたら「君はどこの出身ですか?」くらいのつもりだったのに。私たちの村で皆がてめえなん…

アメリカカンザイシロアリ、東京に侵入!

東京にアメリカカンザイシロアリが発生しているというショッキングなニュースが朝日新聞に紹介されていた。(6月24日) 東京のある住宅密集地では、住民が風評に神経をとがらせている。何しろここでは、400メートル四方のエリアが、米西海岸原産のアメリカ…

藤原審爾「秋津温泉」の見事な省略

吉田喜重監督作品「秋津温泉」を見た。原作とどう違うのかと藤原審爾「秋津温泉」(角川文庫)を読み直した。大略は原作の大枠を踏襲しているが、細部はかなり改変している。一番大きな変更は私(河崎)と絡む女性が、私が少年時から憧れて好きだった美人の…

自慢の盆栽

自慢の盆栽、ツタの小品盆栽で樹齢28年くらい。樹高15センチ、幹の幅35ミリ。 この盆栽は以前にも紹介したことがある。(id:mmpolo:20070215) 私は落葉樹の盆栽が好きだ。季節の変化が飽きない。ところが親父は生前、松の盆栽を作っていた。落葉樹のほうが…

岡田茉莉子、わが憧れの女優

シネマヴェーラ渋谷で「吉田喜重レトロスペクティブ-熱狂ポンピドゥセンターよりの帰還-」が始まった。吉田喜重監督作品19本が6月21日から7月11日までの3週間で上映されるのだ。その2日目の「秋津温泉」を見て、主演の岡田茉莉子の46年前の美しさに圧倒…

YouTubeの「三島 vs 東大全共闘」の映像

hayakarさんの日記にYouTubeの「三島 vs 東大全共闘」の映像が紹介されている。(http://d.hatena.ne.jp/hayakar/20080615)それに対するhayakarさんのコメントが、 ちなみにYouTubeに上がってる「三島 vs 東大全共闘」 http://jp.youtube.com/watch?v=3dKnQ…

奈良美智という変な画家

新刊情報を求めて筑摩書房が発行しているPR誌「ちくま」を購読している。この表紙に奈良美智の絵がもう2年半にわたって使われている。写真は6月号の表紙だ。 奈良は村上隆と並んで現代美術としては海外で最高に評価されている日本の画家だ。大きなタブロー…

権力は腐敗する、いつでも

南木佳士「トラや」(文藝春秋)を読む。芥川賞作家であり医者でもある人がうつ病になり、奥さんや猫(トラ)に助けられ長い時間をかけて回復していく。トラは野良の子猫だったが南木家の飼い猫となる。そして15歳で急性腎不全にかかって亡くなるまでが描か…

何が美人を決めるのか

最近よく見かけるアコムの広告だ。モデルは江波戸ミロという女優の卵、これから1年間かけてだんだん顔を見せていくらしい。アコムのイメージキャラクターからは小野真弓が芸能界にデビューしている。 この広告、眼だけを出している。美の基準は眼だと思われ…

それぞれの当たり所

以前ポルノ小説のさわり(だけ)を書いて友人のS島君に送ったら、お前こんなのダメだよ、ポルノなら重松清の「愛妻日記」だよとの返事が返ってきた。早速「愛妻日記」を読んでみた。私には全然当たらないのだった。人それぞれに当たり所があるらしい(何の?…

4,000円の図鑑が、27年で298,000円に値上がりした

Amazonで河合省三「日本原色カイガラムシ図鑑」の中古本が298,000円で売られている。もうびっくりした。私もきれいな本を1冊持っている。何しろ27年前に私が編集した図鑑なのだ。当時の定価が4,000円、まだ消費税はなかった。印刷部数が4,000部、それを20年…

不条理な盲人用タイル

JRの高田馬場駅近くには盲学校があるとかで、表面がボツボツした黄色の帯(盲人用タイルというらしい)が駅前から学校がある方向に貼られている。前にオートバイに乗っていた頃、このタイルの上に駐車して交番に呼ばれて叱られた。弁解の余地はない。 このタ…

喫煙は県外で

神奈川県知事が飲食店での喫煙を規制する計画を立てていると報道された。テレビのニュースで街頭インタビューを受けている男性が、こうなったら県外へ行くしかないですねと答えていた。 40年前、東京都は売春禁止令を厳格に守っていた。東京都と接する千葉県…

東京オペラシティ3階の男子トイレの平面プラン

以前「トイレに関する新しい設計思想」を紹介した。そこでも指摘したが、東京オペラシティ3階男子トイレの平面プランを紹介する。 廊下から見てトイレ入口にドアがない。入って最初に右折し左折するとそこが洗面所で大きな鏡の前に洗面器が3つある。そこを…

損保ジャパン東郷青児美術館でヴラマンク展を見る

損保ジャパン東郷青児美術館で「没後50年 モーリス・ド・ヴラマンク展」を見る。ヴラマンクは気になる画家だったが、まとめて見るのは初めてだ。展覧会のちらしには、ヴラマンクは独学で絵を学び、ゴッホやセザンヌの影響を受け、マティスやドランらとともに…

モラヴィアとゴダールの「軽蔑」

アルベルト・モラヴィアの「軽蔑」を40年ぶりに読み直した。この作品はモラヴィアのなかで最も完成度が高いとずっと思っていた。しかし今回読み直して、細密な心理描写がむしろ鬱陶しいくらいだった。小説は一人称で書かれていて、思考の描写が地を這うよう…

世田谷美術館の「冒険王・横尾忠則」を見て

世田谷美術館で行われている「冒険王・横尾忠則」という展覧会を見る。横尾忠則の美術館での個展は、6年前に東京都現代美術館で行われた「横尾忠則 森羅万象」展以来だ。その時、横尾は大作400点を並べた。広い美術館の壁面一杯に展示された膨大な作品を見…

図書館の利用法

昔カミさんに出会ったころ、公共図書館を利用することを教わった。これが案外知られていない。図書館の機能のひとつに情報サービスがある。私は仕事上で分からないことがあると、しばしば東京都立中央図書館に電話して教えてもらった。カミさんは「インフォ…

エルモア・レナードの「小説作法十則」

丸谷才一のエッセイ集「月とメロン」(文藝春秋)は「オール読物」に連載していたせいか、同じ丸谷が朝日新聞に連載していた「袖のボタン」にくらべ、ずいぶん力を抜いている。面白い話がいくつもあったが、直井明の連載評論にエルモア・レナードの「小説作…

西村画廊の5年ぶりの押江千衣子展を見て

押江千衣子の個展が日本橋の西村画廊で開かれている(6月14日まで)。彼女のペインティングの個展は実に5年ぶりだという。ベルギーに1年間留学していたとはいえ、やはりスランプだったのだろう。13年前に京橋のINAXギャラリーに登場したときのあのみずみ…

出版物の部数のいろいろ

亀山郁夫は「カラマーゾフの兄弟」の新訳が何十万部も売れたロシア文学者だ。しかし亀山郁夫+佐藤優「ロシア 闇と魂の国家」(文春新書)という対談集を読むと、売れない本が多かったらしい。 亀山郁夫 ぼくは、きっと自分の能力もあるのでしょうが、初めか…

三井住友銀行、オートバイ、猫、美しい知人

表参道の交差点の交番で三井住友銀行の場所をたずねると、信号を渡って左に真っ直ぐ150メートルほど行ったところだと教えてくれた。もう150メートルは過ぎただろうと思うのに銀行の看板が見えない。警官が他の銀行と勘違いしたのだろうかと思ったとき、遠く…

トイレに関する新しい設計思想

有楽町の新しいビル、イトシア4Fの映画館「シネカノン有楽町2丁目」のトイレへ行って少し驚いた。ドアが開くとすぐに小便器が並んでいて、作業に熱中している男たちの姿が見えるのだ。建物は新しいのに、トイレの設計思想は古いのだ。 では新しい設計思想…

チャドクガ発生

近所の植え込みのサザンカにチャドクガの幼虫が発生しているのを見つけた。まあ探しに行ったから見つけたのだけれど。チャドクガはツバキやサザンカ、チャに寄生する毛虫で蛾の幼虫だが、名前のとおり有毒害虫だ。十数匹から数十匹が葉縁に並んで葉を食べて…

古代の諏訪信仰

「ちくま」6月号に中沢新一がエッセイ「折口信夫と天竜川」を寄せている。最近ちくまプリマーブックスから刊行された中沢の新刊「古代から来た未来人 折口信夫」の販促のために書かれたのだろう。「古代から来た〜」は一昨年11月NHK教育テレビで放送された…

内田けんじ監督作品「アフタースクール」

映画や芝居評でいつも参考にしているぼのぼのさんのブログBadlands(http://bonobono.cocolog-nifty.com/)で以前内田けんじ監督の「運命じゃない人」が絶賛されており、それではとツタヤでDVDを借りて見たら本当に面白かった。ところがストーリーも複雑では…

丸谷才一の小林秀雄批判

毎日新聞の6月1日の書評欄で、丸谷才一が岡田暁生「恋愛哲学者モーツァルト」(新潮選書)を紹介している。 宮廷の遊戯愛でも、プラトニック・ラブでもない、心情による愛を結婚の前提とする考え方は18世紀初頭のイギリスで生れ、ドイツでは18世紀半ばから勢…

泉本奈生美展を見た

東京銀座コバヤシ画廊で行われた泉本奈生美展を見た(5月26日〜31日)。泉本は毎年コバヤシ画廊で個展を続けている。色彩が独特で美しく印象に残っていたが、ここ何年か形が安定してきて極めて完成度が高くなってきた。泉本の作品を見ていると、抽象作品の魅…