野見山暁治の言葉

 6月14日地下鉄副都心線が開業した。池袋から渋谷までの8つの駅に現代美術家たちの陶板や壁画、ステンドグラスが設置された。山口晃西早稲田駅)や中山ダイスケ東新宿駅)、千住博新宿三丁目駅)、山本容子新宿三丁目駅)、吉武研司(北参道駅)、絹谷幸二(渋谷駅)ら12人だ。野見山暁治のステンドグラスは明治神宮前駅に設置されている。
 それを記念してか、6月29日のNHK教育テレビ新日曜美術館」は野見山暁治の特集だった。野見山の歴史がざっとたどられ、博多の海に面したアトリエで台風に遭遇した経験が語られる。

(ナレーション)ある年の夏、その日は台風が近づき、海も山も普段ののどかさとはうって変わって大荒れでした。バルコニーの片隅にあった焼き物の瓶(かめ)に激しい雨と風が吹き付けていました。ふと見ると、その瓶が風に押されたのかひとりでに動いています。瓶はバルコニーの中ほどまで来ると身動きが取れなくなったようにピタリと止まり、その場で激しく身震いをし始めました。そして次の瞬間瓶は粉々に砕け散りました。風が引き起こした恐ろしい出来事を目撃して野見山さんの自然の見方、絵の見方は変わりました。


「いい絵というのはね、そういう恐ろしいものが潜んでいるということが分かった。だから本当に美しいものってのは、中に悪魔が潜んでいるんですね。中に悪魔が潜んでいない美しさというのは、ただ表面の上ずった見せかけの美しさで、本当の美しさは中に魔物がいるんだよという……」


(ナレーション)形は魔性を秘めた眼に見えない何ものかに支配されている。その何ものかによって形は移ろい失われていく。野見山さんは形を消しかねない巨大な力のようなものを絵にしたいとカンバスに向かうようになりました。

 副都心線に設置された作品の原画展が、地下鉄銀座線外苑前駅近くのクレアーレ青山アートフォーラムで開かれている。(7月10日まで)
 クレアーレ青山アートフォーラム http://www.creareaoyama.jp/
 嬉しいことに、明日6月30日から野見山暁治展が京橋のギャラリー山口で7月19日まで開かれる。大きな楽しみだ。
 ギャラリー山口 http://www.galleryyamaguchi.net/