2014-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『映画は語る』における淀川長治の語り口

淀川長治・山田宏一『映画は語る』(中央公論新社)は淀川に対する山田のインタビュー集だ。すばらしい映画談義が交わされている。淀川のクセのある語り口を紹介したい。 山田 最近の、というより、もうだいぶ前から、フランス映画には淀川さんがおっしゃら…

淀川長治・山田宏一『映画は語る』がすばらしい

淀川長治・山田宏一『映画は語る』(中央公論新社)がすばらしい。対談というよりも、山田の淀川へのインタビュー集。山田は淀川に6回のインタビューを行っている。それぞれテーマは「トリュフォー」「バスター・キートン」「(プロデューサーの)サミュエ…

山口晃『すゞしろ日記 弐』が楽しい

山口晃『すゞしろ日記 弐』(羽鳥書店)を読む。画家山口晃が東京大学出版会の月刊PR誌『UP』に毎月もう8年以上連載しているマンガを単行本にしたもの。第1巻にあたる『すゞしろ日記』は同じ版元から2009年に発行されている。この『UP』の判型はA5判とい…

近所の公園に顔を出した春

まだまだ寒い日が続いているが、近所の公園に少しだけ春が顔を出していた(1月26日)。 福寿草。管理のお爺さんが、朝はまだ開いてなかったのにねえと言っていた。この日は補聴器をつけているらしく、久しぶりに話ができた。私より15歳年上なのに、以前年齢…

eitoeikoの相川勝展「あなたがここにいてほしい」が興味深い

東京新宿神楽坂のギャラリーeitoeikoで相川勝展「あなたがここにいてほしい」が開かれている(2月8日まで)。相川は1978年ペルー生まれ、2004年に多摩美術大学メディア芸術学科を卒業。2010年には「六本木クロッシング2010」に参加している。 今回の個展に…

前田哲明の鉄の彫刻がみごと

東京木場のギャラリーCOEXIST-TOKYOとEARTH+ギャラリーで前田哲明展が開かれている(1月26日まで、今日!)。前田は1961年東京都生まれ、1986年に東京芸術大学彫刻科を卒業し、同年安宅賞を受賞している。1991年同大学大学院博士課程満期修了、1997年に文化…

日本画廊で見られる山下菊二「あけぼの村物語」

東京日本橋の日本画廊で山下菊二展が開かれている(1月31日まで)。ここに山下菊二の代表作「あけぼの村物語」が展示されている。少々気味が悪い作品だ。老婆が首を吊っており、犬がその鼻水を舐めている。血色の池の中に男が倒れている。帽子をかぶったり…

井上ひさし『演劇ノート』を読む

井上ひさし『演劇ノート』(白水uブックス)を読む。劇作家の井上が、上演するたびに劇場で配布するパンフレットに書いたエッセイをまとめたもの。1969年のテアトル・エコーの『日本人のへそ』から1995年のこまつ座の『黙阿弥オペラ』まで36作品が収録されて…

鳥原学『日本写真史』を読む

鳥原学『日本写真史(上)(下)』(中公新書)を読む。日本の写真史に関しては、飯沢耕太郎や伊藤俊治、多木浩二あたりの仕事があり、こんな名もない人の写真論なんかどうかなあと思いながら読んでいった。とんでもないことだった。私は優れた日本写真史を…

穂村弘と瀧波ユカリの対談がおもしろい

資生堂のPR誌『花椿』に穂村弘の対談が連載されていて、これが楽しい。2月号は瀧波ユカリと対談している。瀧波については知らなかったが、『臨死!! 江古田ちゃん』というマンガの作者ということだ。 穂村 『臨死!! 江古田ちゃん』を読んだ男性はみんな、瀧…

『DOMANI・明日展』を見る

六本木の新国立美術館で『DOMANI・明日展』が開かれている(1月26日まで)。副題が「文化庁芸術家在外研修の成果」というもので、文化庁が「将来の芸術界を担う芸術家を支援するため、若手芸術家を海外に派遣し、その専門とする分野について研修の機会を提…

若者はしばしば貧しい

山崎努が『俳優のノート』(文春文庫)で若い頃の貧しかった記憶を書いている。 俳優座養成所の3年間は楽しかった。 所長の杉山誠先生の演技指導は、生徒の自主性を育てるものだった。 (中略) 授業でチェホフ『結婚申込み』の求婚者を演った時、昂奮し過…

山崎努『俳優のノート』を読んで

山崎努『俳優のノート』(文春文庫)を読む。一昨日、劇作家と演出家の対談を読んだ感想をアップしたが、次いで読んだのが俳優の書いたものだった。今まで劇作家や演出家に興味をもって芝居を見、関連する本を読んできたが、俳優に関するものを読んだのは初…

無人島プロダクションの風間サチコ プチ回顧展「プチブル」がすばらしい

東京江東区の無人島プロダクションで風間サチコ プチ回顧展「プチブル」が開かれている(1月19日まで)。風間は1972年東京生まれ、1996年武蔵野美術学園版画研究科を修了している。1998年にギャラリー山口で初個展、その後、ギャラリー手、マキイマサルファ…

井上ひさし・平田オリザ『話し言葉の日本語』を読む

井上ひさし・平田オリザ『話し言葉の日本語』(新潮文庫)を読む。二人の劇作家が芝居を巡って対談したもの。いまはない『せりふの時代』という戯曲の専門雑誌に6年間にわたって連載したもの。平田オリザは劇作家であるとともに演出家でもある。芝居の言葉…

みゆき画廊の版画小品展「21×21 Print show」がお買い得

東京銀座のみゆき画廊で、開廊48周年記念 版画小品展「21×21 Print show」が開かれている(1月25日まで)。タイトルの由来は、DM葉書によれば、 21×21cmの紙上に約65名の作家の版画表現をご覧いただけます。 2014年みゆき画廊は48周年を記念して賑やかに始…

養清堂画廊のながさわ たかひろ展がおもしろい

東京銀座の養清堂画廊でながさわ たかひろ展が開かれている(1月18日まで)。ながさわは1972年山形県生まれ、2000年に武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻版画コースを修了している。2010年にart data bankで初個展、その後養清堂画廊、ギャルリー東京…

『仲間とかかわる心の進化』を読む

平田聡『仲間とかかわる心の進化』(岩波科学ライブラリー)を読む。副題が「チンパンジーの社会的知性」となっており、チンパンジーを対象に、社会的知性の発達を研究した成果を報告している。「はじめに」から、 ……社会的知性とは、仲間との暮らし、仲間と…

木戸龍介展が興味深い

東京京橋のLIXILギャラリーで木戸龍介展が開かれている(1月28日まで)。木戸は1984年東京都出身、2009年に多摩美術大学彫刻学科を卒業し、2011年に東京芸術大学大学院彫刻専攻修士課程を修了している。ギャラリー1/3や東京ワンダーサイト本郷などで個展を…

シモバシラの霜柱が見られた

近くの公園でシモバシラの茎から霜柱がが発生して、撮影することができた。シモバシラはシソ科の植物で、寒い冬の朝にその茎から霜柱ができることがある。これについて、舘野正樹が東京大学出版会のPR誌『UP』に連載しているコラム「植物の生をみつめる」に…

丸谷才一『無地のネクタイ』から

丸谷才一『無地のネクタイ』(岩波書店)を読む。丸谷が亡くなって、もう新刊のエッセイが読めないものと思っていたら、昨年2月に岩波書店からこの本が出ていたことを忘れていた。岩波書店のPR誌『図書』に2003年からと2010年から「バオバブに書く」「無地…

李兼恒『韓半島からきた倭』を読む

李兼恒『韓半島からきた倭』(新泉社)を読む。もう24年も前に翻訳出版されたものだが、まだ古くなってはいない。著者は1919年生まれ、長く韓国の国民大学学長をしていた人。副題が「古代加耶族が建てた九州王朝」というもの。 李は『魏志倭人伝』の「倭」が…

東京国立近代美術館のジョセフ・クーデルカ展がすばらしい!

東京国立近代美術館でジョセフ・クーデルカ展が開かれている(1月13日まで)。この写真展がとてもすばらしい! 日本の写真家がみな霞んでしまうほどだ。こんなに優れた写真家を知らなかったことを恥じる。 展覧会のちらしから、 ジョセフ・クーデルカ(1938…

ブログの勧め

私はブログを書き始めてもうすぐ8年になる。この間、2,600日ほど書き続けている。テーマは主に読んだ本の感想と印象に残った展覧会のこと。個人的な日記などは公開しているブログではなく、パソコン内の日記ソフトで書いている。 ブログを書いてきて良かっ…

アートスペース羅針盤の中野めぐみ展−初音−を見る

東京京橋のアートスペース羅針盤で中野めぐみ展−初音−が始まった(1月11日まで)。中野めぐみは、1976年山口県生まれ。2002年に武蔵野美術大学造形学部日本画学科を卒業している。同年、銀座のギャラリー青羅で3人展、2008年に銀座のギャラリー21+葉で初…

山田宏一『NOUVELLE VAGUE 山田宏一写真集』を読む

山田宏一『NOUVELLE VAGUE 山田宏一写真集』(平凡社)を読む。2010年6月に山田宏一は水道橋駅近くのギャラリーメスタージャで写真展を開いた。その時のタイトルが"山田宏一写真展「NOUVELLE VAGUE(ヌーヴェル・ヴァーグ)」だった。映画評論家山田宏一が…

井上ひさし『にほん語観察ノート』を読んで

井上ひさし『にほん語観察ノート』(中公文庫)を読む。井上ひさしからは教えられることが多い。本書は井上ひさしが、マスコミで見かけた文章をネタに1項目3ページほどで、なかなか含蓄のあるコメントを付けているもの。いくつか拾ってみる。 最近コンビニ…

最近の気になった新聞記事から

最近の気になった新聞記事を備忘録代わりに記しておく。電子書籍に関する配信契約をAmazonなどと結んだ出版社KADOKAWAの角川歴彦会長の言葉が紹介されている(朝日新聞2013年11月12日夕刊)。 1年以上にわたったアマゾン、グーグル、アップルなどとの契約交…

デュシャンのトイレ〜いろいろなトイレ

東京の板橋区立美術館の男子トイレにちょっと変わったトイレ(小便器)がある。縦型のトイレのまん中に旧式のトイレが設置されている。そのトイレの上にプレートがあり、何やら説明が書かれている。 "使用する現代美術の作品" この牛波(niu-bo)氏の作品は…

2014年の初詣

初詣に行った。 初めに吾嬬神社。御祭神は弟橘媛(おとたちばなひめ)、日本武尊(やまとたける)の妃だ。弟橘姫を祭るので吾嬬神社(吾嬬=わが妻)。東京でももっとも古い神社のひとつだが、元旦の午前9時ころ、参拝客は誰もいなかった。 以前紹介した吾…