eitoeikoの相川勝展「あなたがここにいてほしい」が興味深い

 東京新宿神楽坂のギャラリーeitoeikoで相川勝展「あなたがここにいてほしい」が開かれている(2月8日まで)。相川は1978年ペルー生まれ、2004年に多摩美術大学メディア芸術学科を卒業。2010年には「六本木クロッシング2010」に参加している。
 今回の個展について、ギャラリーのHPに詳しく書かれている。展示は興味深いのだが、少々分かりづらいものなのでそれを引用する。

 インターネット回線による電話サービス、Skypeによって接続されたコンピュータがある。
 一台の前には被写体が座り、作家の手元にあるもう一台のコンピュータには、モニターに直結した作家手製のピンホールカメラが設置されている。作者の相川勝と彼等は住んでいる場所や時差、ネットワークの状態など大きく異なるが、FacebookSkypeなどでお互いの状況を共有している。
 相川はSkypeにより、彼等のプライベートで無防備な空間に侵入する(PCはたいていプライベートな空間にある)。そして彼らのインターネットとともに生きる生活を写し出す。こうして世界を結ぶデジタル回線によって得られた光をフィルムに感光する30秒間、被写体達は思い思いのポーズをとり、カメラの前で静止する。また、デジタルとアナログを同時に用いる手法は、古今の技術が交錯する場ともな っている。
 相川は震災後、この作品を少しずつ作り始めた。震災後、交通が分断され電話が不通となるなか、各地の被災地ともっともコミュニケ ーションが図れたのはFacebookを初めとしたSNSツールであった。ネットワーク上を流れていく膨大な情報のなかで、そこにあったコミュニケーションのはかなさ、かけがえのなさを切り取り痕跡として残している。
 このシステムを使った、もう1つの作品が「ポストカード」のプロジェクトである。相川勝は、世界各地の観光名所に設置された、live cameraを利用してポストカードを作製した。
 相川は、モニターにリアルタイムに映し出される世界各地の風景を眺め、よりポストカードにふさわしい瞬間を待ち、ピンホールカメラで撮影する。現地でしか撮ることができない、遠く離れた風景を撮影したこの作品を眺める鑑賞者も、作者と共にその窃視的な好奇心を満たすこととなる。
 相川勝は、同じ方法で撮影しながら、個人的でプライベートな関係を撮った写真と、Web上で誰もが見ることができるオープンな風景写真という、両極端の性質を持つ作品を同時に展示する。
 それは、ネットワークと写真の両方の特性と問題点を提起している。


 相川手作りの撮影装置、ノートパソコンにピンホールカメラを設置している




 (写真のキャプション)彼女は大学の同級生で連絡を取ったのは約10年ぶり。夫ともども学生である。周囲に新鮮な魚がないらしく、お寿司が食べたいと言っていた。いつか夫と南米に旅行に行きたいと言っていた。
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 震災時にネット上でようやくコミュニケーションが図られた経験と、同時にそれがはかない印象の情報でもあったこと、その体験を表現しようと、相川はカメラについて学ぶことから始めて、このコンピュータとピンホールカメラシステムを考案し、2年間かけて作品を制作したという。ピンホールカメラの性質から30秒間の露光時間の間、相手にじっとしていてもらって撮影している。そのため画像は微妙にぶれて鮮明な画像を結ばない。相手がパソコンに向かっている状況などもおぼろげながら映し出されている。
 いま私たちが手にしつつあるネットの世界に向き合う生活を、相川は不器用ながら表現してみせてくれた。不器用と書いたのは、この個展が一見しただけでは、とくに画期的なものには見えないことからだ。しかし、相川はネットという新しい世界へのわれわれのデビューについて手探りで考察し、提示してみせてくれている。興味深い個展だと言う所以だ。
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相川勝「あなたがここにいてほしい」
2014年1月11日(土)−2014年2月8日(土)
12:00−19:00(日月祝休廊 )
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eitoeiko
東京都新宿区矢来町32−2
電話03−6479−6923
http://eitoeiko.com
地下鉄東西線神楽坂駅で下車し、矢来口を出て右折、神楽坂通りを早稲田方向に200mほど進み、牛込天神町の交差点にある交番の手前を左折、100mほど進むと左手に矢来公園がある。公園の角の十字路を右折すると、すぐ左手にeitoeikoの看板がある。